現代用語の基礎知識2024

131996授賞語

年間大賞

自分で自分をほめたい

有森 裕子 さん(マラソンランナー)

アトランタ・オリンピック女子マラソンで三位に入賞し、バルセロナに続いて連続メダル獲得という快挙を成し遂げた有森のレース後の言葉。バルセロナ以後のスランプ、故障を乗り越えた有森の努力はスポーツマスコミによって広く知られていた。そのため「自分を誉めてあげたい」のセリフは素直に国民の間に受け入れられ、この年一番の流行語となった。

年間大賞

友愛/排除の論理

鳩山 由紀夫 さん(民主党代表)

新しい政治と政党のスタイルを言葉の上からも斬り込んでいった鳩山は、数々の新語を生み出した。なかでも「友愛」は中曽根元首相に「ソフトクリームのようだ」とからかわれても「夏にはおいしい」と切り返し、政治理念を守り通した。一方、安易な寄り集まりを排除した「排除の論理」は、感情的な批判に屈することなく貫き通す冷厳さを見せ、株を上げた。

年間大賞

メークドラマ

長嶋 茂雄 さん(巨人軍監督)

“英語の達人”長嶋監督の造語。数々の長嶋語録の中でも、もっともポピュラーで“感動的”なセリフとなった。7月6日、首位カープとのゲーム差は11.5と開き、優勝は絶望かと思われた。ところが翌日からは、あれよあれよの快進撃。7月16日には「メークドラマ」宣言を発し、ついには奇跡の大逆転優勝を飾った。まさに、“ドラマ”を“作った”長嶋巨人の戦いぶりであった。

トップテン

援助交際

黒沼 克史 さん(ルポライター)

ブランドの洋服や小遣い銭欲しさに、普通の家庭の女の子が売春をしている。そんなコギャルの実態をルポした黒沼の記事は、大人たちに大きなショックを与えた。しかも、売春を「援助交際」と称し、彼女たちに何の罪の意識も無いことは二重のショックであった。“売春”という実態を、言葉のマジックで「援助交際」と言い繕う忌まわしい流行語である。

トップテン

ルーズソックス

鴇田 章 さん(ブロンドール社長)

俗に言う“だらしなファッション”、ソックスのゴムを抜いただけで、アッという間に女子高生の足元ファッションに大ブームを巻き起こした「ルーズソックス」。猫も杓子も、女子高校生の多くが、この「ヅルヅルだぶだぶ靴下」を履く圧倒的な流行となった。女子高校生の太い足を隠したいという深層心理、これを見事に突いたメーカーの勝利とも言われる。

トップテン

チョベリバ/チョベリグ

該当者なし

世を席巻している女子高校生言葉の最新バージョン。社会の出来事や人物の評価、好き嫌いの表現語として「サイコー」「サイテー」に替えて使われる。英語のベリィ・バッドやベリィ・グッドの上に「超」を冠したもの。

トップテン

閉塞感(打開)

中村 清子 さん、比嘉 憲司 さん

冷戦構造崩壊後の“世界の変化”のカヤの外に置かれているのが沖縄である。戦後50年以上経った1996年になっても、戦後日本の矛盾が沖縄に集約されている。この沖縄の「閉塞感」を、郷土への思いと基地の悩みを、沖縄県民大会で訴えた高校生の仲村、比嘉の両君。訴えは、日本国中で「沖縄の閉塞感」理解の熱い渦を巻き起こした。

トップテン

アムラー

正統「アムラー」を自認する皆さん

スーパーアイドル安室奈美恵のファッションが大流行し、これをまねたギャルを「アムラー」と呼んだ。超ミニスカート、底の厚いブーツ、肩まで垂らす長い髪の三点セットが取りあえずの「アムラー」条件だそうで、街には“安室奈美恵もどき”が溢れた。

トップテン

「ガンと闘うな」(がんもどき理論)

近藤 誠 さん(慶應義塾大学医学部講師)

医学界のみならず一般社会にも大きな衝撃を与えた、近藤の“新理論”「がんもどき理論」。癌には転移しない“もどき”癌もあり、何が何でも手術や苛酷な治療をする必要はないとの論である。つまりは「ガンと闘うな」との主張で、医学界の常識を根底から否定するものであった。残念なことに医学界からの本格的な反論は無く、論争とはならなかった。

トップテン

不作為責任

川田 龍平 さん(東京HIV訴訟原告)

薬害エイズ問題で、組織ぐるみの責任逃れに終始した厚生省。悪意(作為)は無かったと主張する厚生官僚、御用学者、製薬会社を、徹底的に追い詰めたHIV訴訟団。ついに、行政の「不作為」は犯罪行為であることを認めさせた。さらに、薬害エイズ初期での重大な「不作為」と、それを立証する「ファイル」の発見を遅らせた卑劣な官僚主義的「不作為」を明らかにした。