現代用語の基礎知識2024

51988授賞語

新語部門・金賞

ペレストロイカ

ソロビエフ・ニコラエビッチ さん(駐日ソビエト連邦大使)

ソビエト共産党のゴルバチョフ書記長が打ち上げたソ連の改革政策(ペレストロイカ)は、世界中から好感をもって迎えられ、その成否は注目を集めた。日本においても、一日として新聞に「ペレストロイカ」の文字が無い日はなかったほど。国内改革にも「行政のペレストロイカ」というように使われ、外来語としては異例の定着ぶりであった。

新語部門・銀賞

ハナモク

〔株〕松屋

週休2日制が定着し、金曜日の夜を「花金」と呼び始めたのは数年前のことだったのに、早くも木曜日が遊ぶには最適な日と大騒ぎ。金曜日の夜からは海外旅行やスキーなど小旅行に出かけようというわけで、レジャー大国の実現と浮かれた。日本経済が絶好調の中、初任給の急上昇など、リッチな若者が増えたことが背景にあった。松屋はこんな時代の空気を感じとり、木曜日休日を変更した。

新語部門・銅賞

トマト銀行

吉田 憲治 さん(山陽相互銀行 社長)

アメリカやECから批判され、ようやく銀行業務の規制が緩和された。法律改正に伴い、相互銀行などが“銀行”として統一され、いっせいに社名変更をすることになった。新社名として世間の度肝を抜いたのが「トマト銀行」。堅いイメージの銀行に、トマトを冠する発想の柔軟さが話題となった。

新語部門・表現賞

遠赤(効果)

遠赤外線国際研究会

健康ブームに乗ったマスコミの報道をきっかけに、この年にわかに「遠赤」がもてはやされた。遠赤とは遠赤外線のことで、生鮮品の鮮度維持や健康管理に著しい効果があるとされる。商品化も容易なため、さまざまな新製品が開発、研究された。市場規模10兆円という数字が一人歩きをし、メーカーからメディアまで、さまざまな場面でもてはやされた。

新語部門・表現賞

カイワレ族

村崎 芙蓉子 さん

プラスチックケースの中のウレタンの苗床に植えられ、土ではなく水で生きるカイワレ。完全な管理のもとに育てられるカイワレ野菜は、中学生、高校生の姿そのものだ、という指摘は社会に大きな反響を巻き起こした。親の立場からの村崎の発信に、メディアはこぞって管理社会の中でしか生きることが許されない中・高校生を「カイワレ族」と呼んだ。

流行語部門・金賞

今宵はここまでに(いたしとうござりまする)

若尾 文子 さん(女優)

この年、大ウケした流行語。会社の会議、学生のサークル、宴会、はては教室でも、時間の終了を婉曲に告げる時に好んで使われた。発信元はNHK大河ドラマ「武田信玄」。番組の最後に、若尾文子が語るモノローグの締めのセリフであった。

流行語部門・銀賞

ドライ戦争

樋口 廣太郎 さん(朝日麦酒〔株〕社長)

この年の夏、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などあらゆる媒体に「ドライ」の文字が踊った。ビールメーカーによる「ドライビール」の宣伝だが、マスコミはこれを「ドライ戦争」と書き立てた。この“戦争”の勝者はアサヒビールで、驚異的な売り上げ増を記録した。ビールを変えるビールとの予想どおり、日本人の嗜好を変えた大戦争であった。

流行語部門・銅賞

シーマ(現象)

久米 豊 さん(日産自動車〔株〕社長)

日産が新発売した高級車「シーマ」は、爆発的な人気を博した。注文から半年待ちは当たり前、走っていれば街行く若者が振り返るというような情景であった。日本経済の好況、円高から外車ブームが続く中、日本人の高級品志向に応えたのがシーマであった。高級品志向の商品が数多く発売されたこの年、日本人の意識の変化を物語る言葉として「シーマ(現象)」の語が多く使われた。

流行語部門・大衆賞

アグネス論争

アグネス・チャン さん

子供を連れて仕事場に行くアグネス・チャンに対し、作家・林真理子が批判。これにアグネスが反論し、双方の応援団を混じえての大論争に発展した。正確に言えば「アグネス子連れ論争」と言うべきもので、大きな国民的関心を得た。女性の自立という問題を含みながらも、イベント的要素がふんだんにある、“時代”を感じさせる論争であった。

流行語部門・大衆賞

5時から(男)

高田 純次 さん(タレント)

栄養剤「グロンサン」のコマシャルから生まれた。疲れ切ってダラダラとしていた男(高田)が、5時の終業時間が来ると、グロンサンを飲んで大元気、疲れを知らず遊び回るというストーリーで、サラリーマンには人気となった。管理社会への抵抗という解説もあったが、身近に必ずいる“仕事よりも遊び男(女)”が彷彿され、彼らを「5時から男」と揶揄した。

流行語部門・大衆賞

しょうゆ顔・ソース顔

東山 紀之 さん、錦織 一清 さん

若い女性の間で、男性の顔を分類する遊びが大流行した。「マヨネーズ顔」「ケチャップ顔」「みそ顔」などなど。そんな中で、もっともポピュラーで市民権を得たのが「しょうゆ顔」「ソース顔」の分類。切れ長の一重まぶたの和風の顔立ちが「しょうゆ顔」、彫りが深いモデル顔が「ソース顔」で、それぞれの代表として“少年隊”の東山と錦織が選ばれた。

特別賞部門・特別功労賞

一村一品/ヒューマン・ブランド

平松 守彦 さん(大分県知事)

大分県が独自の地域活性化事業「一村一品」運動を始めて10年。当初は“企画倒れ”“単なる思い付き”など揶揄されたが、この年には全国自治体の70%までが同様の事業を起こすまでになった。さらに、生産者の顔が見える「ヒューマンブランド」作戦を展開するなど、ユニークな活動は高い評価を得た。

特別賞部門・人語一体傑作賞

ユンケルンバ ガンバルンバ

森田 一義 さん(タレント)

栄養剤「ユンケル黄帝液」のテレビCMで森田(タモリ)が発するセリフ。言葉自体を取り上げると、さほどおもしろくはないのだが、タモリの個性と表現能力が加わると独特の味がある。言葉と人間が合わさって一つの世界を築いている。

特別賞部門・報道傑作賞

ふつうは“汚職”と申します

山本 泰夫 さん(産経新聞)、藤田 実 さん(産経新聞)

この年、戦後最大の疑獄事件と言われるリクルート事件が起きた。未公開株で資金提供を受けた政・官界のお偉方は、口裏を合わせたように「自分は知らない」「秘書が」「妻が」「息子が」「弟が」と責任を転嫁した。そんなとき、ズバッと問題の核心をえぐったのが産経新聞のこの見出し。薄汚いいいわけが吹っ飛ぶほどの切れ味で、庶民から絶賛された。