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9月は防災の季節
―― +ついでに“ちょっと関連のある”いま話題の〈ダム〉についての用語集
 

治水と水害の用語集

砂防

山地、海岸、崖地、河道等における土砂の流出・崩壊またそれによる被害を防止すること。護岸・ダム・植林等々の工事による。日本の河川は急勾配で水流が速く、また梅雨・台風など集中的な降雨のある気候であったため、洪水に見舞われやすく、古来より砂防は重要な公共事業分野であった。その内容は「上流から流された土砂が河道に堆積して川底を上げ、流水が氾濫しやすくなりまた沿岸からの排水が悪化すること」防ぐのが主であった。これが変わったのは昭和30年代以降の経済高度成長で、具体的には土石流対策、山崩れ・崖崩れ対策、ダム・鉄道等施設保護などが増えた。斜面地・崖下の宅地開発、経済活動の活性化のためである。昔は地盤が緩いようなところには、わざわざ住宅をつくって住んだりはしなかったのである。また治水が嵩じて、河を流れる土砂が減った結果、海岸が浸食されるのを防ぐのも、砂防の新しいジャンルとなった。

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砂防ダム

森林伐採、豪雨等によって荒廃した山肌から流出する土砂を塞き止めては、砂防に役立てるためのダム。河川上流の山間部につくられる。必要以上の土砂が流出し、あるいは土石流となって流れればそれまでの生態系・自然環境が破壊されかねない。そういう点では、砂防ダムは、環境を破壊しているとした批判の多い多目的ダムとは位置づけを異にする。問題は、塞き止めた土砂をどういう具合に流すかという管理の技術である。

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砂防会館

政治の中心地・平河町に位置する老舗格のコンベンションホール。「自治体の会合や公的機関の講習会、建築や医学関係のシンポジウムやセミナーなどの会場」とは同会館のPRだが、報道される情報では、むしろ自民党の派閥の事務所のあるところとしてつとに知られる。昨今の“構造改革”論調では、砂防(公共事業)=既得権益=抵抗勢力であるので、すこぶるイメージが悪い。が、“砂防”自体がずっと悪かったわけではない。伊勢湾台風以降、1960年代から台風被害が激減しているのは、“砂防”とそれを働きかけた自民党議員の尽力によるものだったのだから。時代がずれてしまったのだ。

砂防会館を運営しているのは社団法人全国治水砂防協会である。

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社団法人全国治水砂防協会

「災害のない安全で豊かな国土を造るために、大きな役割を持つ砂防事業が発展、推進するよう、種々の公益事業を実施して」いる(協会PR)。元々は、1929(昭和4)年の世界大恐慌期の農村危機対策として行われた農村振興のための大規模土木事業に端を発し、事業が終了した1935年以降も防災・治水の観点からさらに砂防事業を推進すべきという動きのなかから生まれた。当時・内務省の赤木正雄博士(後に文化勲章を受賞)によって、35年1月に任意団体として全国治水砂防協会が発足、40年4月2日社団法人化された。

現在の会長は綿貫民輔(衆院議員)、副会長に村岡兼造(同)、理事には、小沢 一郎・太田誠一・古賀誠・渡部恒三(同)等々というそうそうたる面々。

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国土交通省河川局

日本の河川行政の中心である。

http://www.mlit.go.jp/river/

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都市水害

1950年代末から高度成長期にかけての国土の都市化によって、地面がコンクリートやアスファルトで覆われる率が非常に高まり(不浸透域が増え)た。その結果、豪雨の場合の排水が悪くなり、同じ降雨量の場合でも河川の流量や速度が高まり、都市部での河川氾濫が急増した。これを都市水害という。急激な都市化を行った新興住宅地域は低地が多く、この被害をさらに大きくした。これに対応し1977(昭和52)年、河川審議会は、防災調節池・浸透性舗装などを用いた複合的な治水を提言した。

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山津波/土石流(boulder flow)

1995年版本誌掲載。以下、

地震の衝撃、または大雨でゆるんだ山腹から、主として谷ぞいに土砂、岩石などが、押し流される現象を山津波といい、そのとき流下したものを土石流という。関東大地震で170戸の人家と停車中の列車を海中に押し流した根府川山津波は有名。1966(昭和41)年富士山北麓の西湖沿岸根場村の大災害は、第三紀層の急な山地の山麓で谷すじに沿って流下した土石流で部落の大半の民家と耕地が被覆され、扇状地形を生じた。84年の長野県西部地震の際に起こった大災害は、ほとんど活動の記録がなかった御岳火山の突然の活動が原因で山腹の谷壁斜面が崩壊して土石流を出し、谷床の村落を埋没した。

最近は、山はだを削りとる宅地造成地域に、大雨が降るたびに山津波が発生しているがこれは人災である。建設省が土石流予警報システム装置を試作したのはすでに10年前で、雲仙普賢岳では水無川流域住民への避難勧告の発動にこのシステムが有効に働いているものと期待される。

土石流発生の危険が迫った雨量をマイコンが計算する仕組みである。この装置は雨量の限界量を測定するために山間部のいくつかの地点で時間降雨量や総雨量を自動的に計算するものだが、土石流発生の限界量をどの時点でどのくらいに抑えるか、過去の災害発生地の記録から適正に割り出すことが要求される。

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四万十川

高知県高岡郡東津野村の不入山(標高1336m)を源流とした、長さ196km、流域面積2270平方キロの河川。山間部を蛇行しながら流れ、長さの割に流域面積がせまいのが特徴。流域が狭いということは、そこでの利水・治水ニーズが低いことを意味しており、じっさい多目的ダム等々がない。ゆえに日本の川のなかでは飛び抜けて自然の姿が残っており、“清流”として名高い。いっぽう、その特徴により、他河川に比べ下流域では洪水被害の可能性が大きい。

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