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食をめぐる2010年のトレンド
執筆者 久保田恵美

食をめぐる2010年のトレンド

食べるラー油

従来のラー油とは異なり、「おかずとして食べることのできるラー油仕立ての食品」のこと。油や唐辛子の他に、旨味のある食材を数種類仕込むことで、マイルドな辛さと奥深い旨味を表現。しょうゆと混合してドレッシングにもなる。人気の火付け役は2009年5月、京都のホテルオークラ内の中華料理店・桃季で発売した「食べる辣油」だといわれる。ネット通販などで大ヒット。2010年3月には東京のホテルオークラでも発売。

特徴は、一般的なラー油とは全く違う食材。エシャロット・干しにんにく・干しエビ・唐辛子などといった旨味のもととなる食材を使うことで、辛さが先に主張せず、凝縮した旨味を楽しむことができる。「ご飯のお供としてやみつきになる」「家にいながら、手軽に絶品を味わえる」という評判からして、まさに外食を控える社会現象にマッチした商品であるといえる。

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ラー油ブーム

食べるラー油、メーカーによって具材は異なるが、その土地や店ならではの具材が使われたオリジナル品も続々登場。京都では湯葉、ちりめんじゃこ、実山椒を使った「ちりめんラー油」が注目を浴びている。

沖縄では2000年に発売された「石垣島ラー油」が有名。具材は島唐辛子、石垣の塩、ウコン、黒砂糖、黒豆など体によいとされる食材ばかり。昨今では入手困難になるほどの人気調味料だ。

石ラー

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石ラー

「石垣島ラー油」の略。中国・西安出身で、石垣島で中華料理店を開いた辺銀(ぺんぎん)夫婦が作っているラー油。日本のラー油の場合は激辛調味料というイメージが強いが、この石ラーはまろやかな味が特徴となっている。一般的なラー油と違って、ラー油に沈殿した石垣島唐辛子、島胡椒、ウコン、ニンニク、白ゴマ、黒豆、山椒、黒砂糖、植物油などの沈殿した材料をすくって使う。販売している店が少ないことから「幻のラー油」ともいわれる。

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半熟系

半熟系食品がヒットしている。たとえば、2010年に入って人気上昇の新食感カステラが「半熟カステラ」。絶妙な火加減によって外側がしっとり、ふわふわとした口当たりに、中はとろりとした半熟状に仕上げていること。食感の変化を楽しむと同時に、濃厚な卵の風味が口中に広がる。誰もが知っていて親しみやすい「卵」のやさしい風味が、幅広い層から人気を集めている理由の一つといえる。

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半熟カステラ

話題の新食感カステラ、その由来は、ポルトガルの伝統菓子「パオン・デ・ロー」。卵、小麦粉、砂糖を混ぜて焼くシンプルなお菓子で、本場ではクリスマスやイースターの際に、食べる習慣があるそうだ。日本のポルトガル料理専門店では本場の味を味わうことも可能。近年ではポルトガルカフェとうたったカフェでも出会える食べ物になってきた。また、卵、小麦粉、砂糖といったプレーンタイプだけでなく、抹茶大納言味(抹茶生地に大納言あずき入り)や、和三盆と塩を効かせたタイプなど新商品が続々と発売され、注目度は高まるばかりだ。

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マート族

「もっと普段の生活を楽しく、おしゃれに!」「お金をかけずに食やファッションを楽しみたい!」といった理念をもち、毎日を敏感に過ごしている30から40代主婦層。

マート族の特徴は、雑誌で取りあげている生活スタイルを実践し、さらに自分自身で発見した新たな情報を外に発信していくという行動派であること。また、発信した情報が火付け役となってヒット商品を生み出すほど、世の中に影響力がある点も特徴の一つだ。代表的なヒット商品は「家庭用パン焼き器」「シリコンカップ(お弁当グッズ)」など。

主に、女性生活情報誌「Mart」の愛読者で、マート族の名称の由来はここから。この雑誌の誌面内容は、キッチン家電、調理器具、食器、雑貨といった家まわりの商品が主。限られた食材でおいしいものを見栄えよく盛りつけ、器にもこだわる。ただし、その器は100円ショップにあるものでもOK。堅実ながらもセンスのよいものを選んで生活に取り込んでいくスタイルが毎月盛り込まれている。マート族は下町や郊外に住んでいる傾向がある点から「お金を極力かけずに“センスのよい暮らし”を作り出す職人のような主婦たち」といえるだろう。

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キャラ弁

キャラ弁とは、「キャラクター弁当」の略語。普通のお弁当では「地味で子どもが喜んでくれない」などといった理由から、世のお母さんたちが子どもの好きな動物や、TVキャラクター(アンパンマン、ドラえもんなど)をまねて作ったことがきっかけといわれている。お弁当の歴史をたどると、「タコウインナー」が一番古いキャラになるであろう。キャラ弁とはいいがたいですが、昔の子どもならば、それだけでうれしかったものだ。平成の子どもたちはそれだけでは満足せず、2000年ごろから本格的なキャラ弁のレシピ本が発売になり、03年ごろに一般人サイトでの巧みなキャラクター弁当が注目。キャラ弁のレシピ本は好調。近年では「マイピンセット」を持つお母さんがいるほど、キャラクターを作り込むためのグッズが多様化している。ピンセットは先が非常に細く、極小さいものを自由自在に扱うための必須アイテム。小さな黒ゴマをミニトマトにつけて目にしたり、小さく切ったのりをつけてまゆ毛にしたりと、食材に手際よく表情をつけることができる。

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離島キッチン

町おこしを目的とし、島根県の離島がはじめた「移動アンテナショップ」が「離島キッチン」と呼ばれている。

島根県沖合約60キロ、隠岐諸島にある海士(あま)町観光協会に採用された20歳から40歳代のIターンの人たちが店主となり、2009年秋から営業開始。

営業スタイルは移動屋台(移動販売車)で東京都心を走り、地元名物を販売している。

販売メニューは隠岐諸島の名物・スルメイカのしょうゆ漬け丼、さざえカレーの2品でスタート。

しかし、売れ行きが伸びない理由から、離島をもつ町村と掛け合って奄美大島の鶏飯、大分県保戸島のマグロ漬け丼などを増やし、計5品で勝負する(2010年4月時点)。

島根県に続き、各地の離島から都心へ広まる食材が続々と登場。小笠原諸島・父島の「薬膳島辣油」は父島産の唐辛子やアロエをふんだんに使った刺激的な辛さが特徴。香川県・小豆島の「オリーブサイダー」は、小豆島産のオリーブを使った炭酸ジュースで讃岐うどんに次ぐ人気だ。

沖縄の「ウコン」や「海ぶどう」は全国区に成長しつつある。

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フードマイレージ・キャンペーン

有機・無農薬野菜の宅配などを行うNGO「大地を守る会」が考案し、2005年11月1日から12月31日までの期間、飲食店や食材店と協力して行った活動。キャンペーンの目的は「食材運送のCO2(二酸化炭素)排出量の調査結果をもとに、できるだけ近隣で採れた食材を選ぶことで輸送時のCO2量削減をはかる」という点にある。

実施方法は、宅配で届ける食材に対し、CO2排出量(単位:poco)を表示して購入者に伝える。また、協力店において、提供食材や料理にCO2排出量を表示した。

フードマイレージ・キャンペーンは、「CO2削減について食材購入者にわかりやすく、楽しく生活に根づかせるユニークな取り組みである」と評価され、環境省の2005年度「地域共同実施排出抑制対策推進モデル事業」に選ばれている。

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poco(ポコ)

「食材が生産地から運ばれる際にでるCO2(二酸化炭素)の排出量」を示す単位がpoco(ポコ)。CO2・100g=1pocoと示す。フードマイレージ(食材輸送距離)の単位は「tkm(トンキロメートル)」と表し、一般消費者にはわかりにくい。そこで、有機・無農薬野菜の宅配などを行うNGO「大地を守る会」によって作られた指標が「poco」という単位だ。

pocoの数値の意味は、「CO2排出量」という表現のほか、温暖化対策の視点からいうと「削減CO2量」ともいえる。pocoが食材に示してある場合、数値が低いほうを購入することで、CO2削減につなげることができるのだ。例えば、国産小麦の食パン1斤は、0.2pocoに対し、輸入小麦の食パン1斤は、1poco。国産アスパラガス1本は、0.04pocoに対し、輸入アスパラガス1本は5.34poco。

pocoは食材だけでなく、温暖化防止の指標として日常生活にも応用することが可能。例えば、テレビ1時間は0.1poco、冷房1時間は0.3poco、風呂の水を洗濯に再利用は0.1poco、炊飯器の保温は0.4poco。日常の個々の努力が積み重なれば、CO2排出量を削減できることがわかる。

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食品アウトレット

賞味期限が迫った大手食品メーカーの在庫商品を安値で仕入れ、定価の半額程度で販売する、それが食品アウトレット。2010年4月、イオンを筆頭にイトーヨーカ堂が打ち出した集客アップを目的とした販売策だ。不況が続いて購買意欲が低迷している昨今、「安く買える」というお得感から消費者の注目度は非常に高い。また、在庫を一掃したいという大手食品メーカーの思いと、集客率を上げて業績回復をしたいというイオンやイトーヨーカ堂の思いが一致し、時代に合った販促戦略となった。

さらに、「食品アウトレット」という言葉は通信販売の中でも普及し、業務用食材から一般的な食材までネットを通じて購入することができる。

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東京納豆

その名のとおり「国産大豆を使い、東京で作られた納豆」のこと。東京納豆で使う大豆は、大粒で黒い筋が入った“黒目”という種類の豆が主流。特徴は粘りが強く、もっちりとした食感。豆の味が濃く、甘味を感じられるため、タレがついていない点も大きな特徴だ。

1970年ごろまでには都内に100軒以上の納豆店があったが、1980年代ごろから小粒の白目大豆で作った“水戸納豆”の人気や、安価な外国産大豆が主流になり、東京納豆の生産は減っていったという。ほか、黒目の人気が落ちた理由に「黒い部分がゴミのようにみえる」という声が増えた点があげられ、見た目を重視する時代の流れに押しつぶされる形となった。

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高橋商店

時代とともに納豆店の廃業は続き、2010年3月時点で都内の納豆店は10軒ほど。そのうちの1軒「高橋商店」(新宿区)のみが、黒目大豆を使い続けてきた。しかし、この1軒も10年3月末をもって廃業が決定。「高橋商店さんが1947年創業以来守り続けてきた製法や味を残すべきだ」と墨田区・太平納豆(株)の岡崎誠一社長が立ちあがった。試作を重ね、高橋商店の太鼓判がでた納豆は「高橋商店継承」という文字がパッケージに印字され、新たな「東京納豆」として10年4月1日に発売再開を遂げている。

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弁当の日

弁当の日とは、年に何回といった形で日程を決め、親の手を借りずに“子ども自身”が弁当を作る日。2010年5月時点では、39都道府県の小学校から大学まで、計585校がこの「弁当の日」に取り組んでいる。この言葉は、01年香川県綾川町立滝宮小学校の竹下和男校長(当時)がはじめて提唱し、03年「地域に根ざした食育コンクール」で最優秀賞を受賞。

「弁当の日」を設けたきっかけは、親子が一緒に過ごす時間が減っているという現実を打破するための策だったという。除々に実施校が増加するなか、その成果は子どもたちの変化からわかるようだ。「調理技術が身につく、親子の会話が増える、給食の食べ残しが減る、食べ物や生産者への感謝の気持ちが生まれる」など、当初のねらい通りの成果をだしている。竹下さんは「生産者への感謝の気持ちがわくと、農業の現状にも関心がわく。そして、極力安心・安全な食材を買おうという意識になれば、おのずと食料自給率は上がる」と提唱している。

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ホットアイスクリーム

温かいアイスクリーム。2009年12月に埼玉県「しあわせ牧場 新三郷店」(経営は株式会社東京レストランツ)で販売開始された。スチームで温められたソフトクリームをカップに入れて提供。喉ごしはアイスというより、トロッとなめらかでプリンやムースに近いという。味の種類は牛乳、アールグレー、チョコなど。2010年4月に東京「チョコラテリア・サンヒネス 渋谷店」を同社がオープンさせ、ホットアイスクリームがじわじわと若者層の人気を集めている。

また、このアイスクリームは温かいという新感覚だけが売りではない。使っている牛乳の“安心・安全”さも大きな特徴。同社所有の「しあわせ牧場」(岩手県)では、東京ドーム1個の広さに対して5頭から6頭ほどで自然放牧を行い、牛にストレスを与えない環境作りを徹底している。

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