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お金があることとステイタスの現代史用語集
 

御殿と成金

近現代にかけて“御殿”がかなり建ちましたが、今日にいたっての明暗はさまざまです。

ホタテ御殿

昭和40年代以降のホタテ養殖成功により、青森・北海道の海岸各地にホタテ御殿が建つようになって今日にいたる。ニシン御殿と異なるのは、十分な生産管理によって安定的な産業となっている点、日本人の食生活がホタテを求めている点である。

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ニシン御殿

豊漁不漁が、魚の回遊と漁場がうまくあうかどうかにかかってくる往時のニシン漁は、投機性が高く、つまり“あたれば”大きい。明治・大正時代の松前、小樽は、これがうまくあたり、大漁によって一大景気をなし、財をなした親方によっていくつもニシン御殿が建てられた。しかし無計画な乱獲によりニシンは激減、昭和33年あたりには漁は終了。基盤を失ったニシン御殿は、現在では観光スポットでしかない。

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ハッカ御殿

第2次大戦前の北海道は“当たれば大きい”地で、ニシン御殿とともにハッカ御殿が建った。北見地方では明治30年頃からハッカが栽培されはじめ、昭和10年代前半には世界のハッカ生産の70%を占めた。戦後に広まった、原油から合成されるロー・コストのハッカにおされて市場を失い、現在では生産量はわずか。

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マグロ御殿

現在、マグロ御殿建っているのは、日本ではなくオーストラリア南部の漁港ポートリンカーン。回転ずしブームの続く日本向けの畜養マグロ輸出が絶好調で、当地の養殖業者を潤わしている。畜養マグロは、近海で捕獲した若いミナミマグロをいけすで太らせ“全体をトロにした”ものだが、最近の日本人は味覚が変化しているので、こうした脂っぽい魚をありがたがる。ミナミマグロは捕獲量が厳しく制限されているが、養殖場で“増やされた部分”は制限量の枠外なので、これも商売上にうまく寄与している。

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石炭成金

日本にある数少ない鉱物資源は石炭であったので、第2次大戦敗戦後、輸出入のままならない時期にこれが国家的に重視された(傾斜生産とよばれた)のは道理。その政策により、荒廃し飢えた日本の国土にあって、賃金や福利厚生の面で相対的に充実することになった炭鉱には、海外からの引揚者や職にありつけない労働者などが集中、北九州地方に石炭景気がおこり、成金も登場した。炭鉱成金が登場したのは第1次大戦期につぎ2度目のことである。おりからの朝鮮特需もこれにうまく作用した。炭坑節もこのあたりで流行。石炭は、黒いダイヤとよばれた。

朝鮮戦争で炭価が下落、おいうちをかけるように60年代には、エネルギー革命がおこって石炭の時代は終了。

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成金豆

伊豆地方で、きぬさやえんどう豆のこと。収穫時期の正月あたりに高値がつき、一財をなしたひとがいるという伝より。

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成金

大量の成金が最初に登場したのは、第1次世界大戦の軍需景気。日本は直接の戦場とならなかった国のなかで、いちおうの工業生産力をもつ数少ない国のひとつだったので、世界から発注が集まった。鉄成金、船成金、雑穀成金、豆成金…、終戦によってかなりが没落した。

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ヤミ成金

第2次大戦後、占領下の統制経済におけるヤミ市場で利ざやを大いに稼いだもの。

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土地成金

一環して地価の上がり続ける(かに思われた)土地の売買差益、賃料によって潤った者。第2次大戦後の農地改革によって、小作を自作農化すべく分配された土地も、どれだけかは最終的に、自作農ではなくて成金を生んだわけだ。とくに拡大する都市圏近郊にまとまった広さの農地を手に入れていた者は幸運だった。

とくに高度成長下、田中角栄内閣による日本列島改造計画では、地価が現実的な利用価値以上にひきあげられ、ますます土地成金を潤わせた。昭和46年の長者番付(高額所得番付)では、土地成金が上位を占めたが、これは土地税制の改定にともない“かけこみ譲渡”が集中したもの。

1980年代後半からのバブル期にも地価は高騰し、同様の土地成金がたくさん現れた。

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印税成金

印税は、文章・絵画・音楽等の著作物に対して、使用者である出版者から支払われる報酬のうち、契約に基づく一定単価を基礎にその出版物の発行部数あるいは実売部数に応じて支払われるもの。著作権使用料の代表的な一形態。

出版物の増産は通常、単純な再生産であるから、出版物が売れ続けることは、著作者側からみれば労せずして(否、初回の著作作業における労苦のみで)、あとは「寝ていても」この収入を得ることができる。また著作は知的労働の成果であるから、印税の単価(印税率)も原価主義ではなく契約内容次第により、つまり著作者と出版者との力関係によって左右される。

そういうわけで“印税生活”という神話がうまれ長らく続いた。昭和初期の円本ブーム以来である。とはいえ出版点数過剰のこんにちでは、長期にわたり大量に売れる著作物は生まれにくい。印税成金の主役は音楽著作権者に移ったといえよう。

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