月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
相次ぐ企業不祥事と謝罪で特集
――謝るってなんだ/信頼ってなんだ/怒るってなんだ/被害ってなんだ
 

責任とお詫びの用語集

責任(responsibility 英;Verantwortlichkeit 独;responsabilite' 仏)

語義は「なにかに応答すること」。これを具体的にする際には〈誰が〉〈何に対して〉〈何の前において〉〈いかなる形態の応答をする〉かをはっきりさせることになる。

〈何の前において〉には、<1>神のまえ(宗教的責任)、<2>社会のまえ(社会的責任)、<3>法のまえ(法的責任)、<4>良心のまえ(道徳的責任)、<5>自己のまえ(自己責任)がある。日本においては国民間に共通認識のある「神」がいないので<1>は省略。<2>はテレビや新聞等が媒介者(=メディア)をかってでることがある(「社会の前=マスコミ各企業の前」という位置づけ)。<3>は民事と刑事の2つがある。刑事責任の問われる具合が軽いと「社会的責任(社会的制裁)」が“穴を埋めたり”するが必ずしもほめられたことではない。<4><5>は各人の問題である。

〈いかなる形態の応答をする〉は、<1>口頭・文書等で説明、<2>金品授受で示す、<3>金品授受以外の行為・態度で示す、<4>時間経過で示す等がある。責任が全うされたかどうかは、法的責任の場合、民事の場合は損害浬補(てんぽ)、刑事の場合は刑罰によるので明確になりやすいが、社会的責任の場合は「応答された側の納得」なのが応答する側にとっては難しい。

企業不祥事の場合、「責任をとる」ということとは別に「信頼を回復する」(2つは範囲が異なる)をしなければ立ち行かないのが厄介なところである。

ページの先頭へ 戻る

アカウンタビリティ(accountability)

一般に説明責任、説明義務と訳される。経営学では「職務上必要な権限、結果についての責任と共に求められる義務の一つで、仕事の経過を報告、説明すること」とされている。欧米が日本やアジアを批判する際につかわれる「透明性の欠如」という意味のキーワードとして、また政府・行政などの国民に対する政策成否の説明責任や、経営者の株主に対する財務状況説明責任について用いられている。特に一九九九年六月の株主総会では外国人株主が増えていることや変革と再建へ向かう第一歩として、株主に対して経営側の説明責任を徹底的に果たすことが求められた。アカウンタビリティという言葉は、聖書の世界では、神に対して申し開きするだけではなく、そのために生ずる結果についても責任を負う、という贖罪の意味が含まれるという。

ページの先頭へ 戻る

反省

みずからの行いをかえりみること。自分の過去の行為について考察し、一定の評価を与えること。自己責任をまっとうする行為、あるいは道徳的責任をまっとうする行為。ことの性質上、「反省が足りない」と他者が責めるのは間違っている。「一般的な《反省》の程度にくらべ十分な《反省》とはいえないようにみえる」と論評はできるにしても

ページの先頭へ 戻る

引責辞任

責任をとって辞任すること。この場合の責任とは、民法・商法にもとづく法的責任ではない(そういう場合は解任)。社会的責任であるが、その「社会」のさすものが株主・従業員であるか、消費者等の国民(マスコミを媒介とする)であるかは解釈のわかれるところ。

ただし引責辞任という行為は、責任機能の主要なものである「損失填補」「原状回復」には、全く効果をもたない。

ページの先頭へ 戻る

信頼回復

信頼とは「信じて頼ること」であるが、不祥事を起こした企業にとって、《信頼》が《回復された》かどうかは、《売り上げ》が《回復する》ということでしかはかれない。また《信頼が回復した状態》とは《売り上げが回復した状態》である。

不買自主回収という状態から《信頼回復》に戻してゆくには、<1>商品が不信を払拭するほど魅力的であること、<2>十分に時間が経つこと、<3>事件の全容が明らかになること(メディアなどはこれを第一とする)などであろう。偽装牛肉事件の場合、不買の根拠である不信の内容が、製品の安全性についての不安ではなく、納税者としての怒りという感情であるので、<3>は即効性があるというより当初は(あるいはずうっと)逆効果であろうが。「お詫び会見」「謝罪会見」も同様。

 ちなみに現在、多くの人が、森永のチョコレートを買い控えるということはありえない。

ページの先頭へ 戻る

企業倫理/経営倫理(corporate ethics / managing ethics)

企業の営利活動やその他の経営活動において経営者や社員が、一個人、一市民としても遵守すべき道徳規範のこと。各社が経営理念など企業活動の基本的な考え方に基づき成員の行動基準、ガイドラインとして具体的に定めたルールのことを倫理綱領(code of conduct / code of ethics / business conduct code)という。

企業倫理と組織内に浸透させる仕組みを企業倫理プログラムという。日本でもグローバル化する環境の下で、倫理綱領を制定し、倫理担当役員をおく企業も多くなっているが、経営理念の徹底が最優先という段階にとどまっており、具体的な行動規範を冊子にまとめ、社員の行動へ浸透・定着させるところまでいっていない。日本の産業界には「どのような倫理法令遵守の仕組みをつくればよいか」についてのコンセンサスがない。そのため99年5月、麗澤大学が中心になって「倫理法令遵守マネジメントシステム規格(ECS2000)」を公表、2000年に改訂版と手引きを出した。

ここ1、2年ジェー・シー・オー(JCO)の臨界事故、雪印乳業の集団食中毒事件、三菱自動車のリコール隠しなどの不祥事が続出し、企業倫理プログラムが社内で十分に機能していないことを示している。企業行動についてさまざまな国際基準・規格が制定され、アメリカを中心に各国で企業の不法行為やルール違反を規制する法律が制定され、企業行動に対する監視が厳しくなっている。

ページの先頭へ 戻る

「結果的に、隠蔽したととられても仕方がない」

意思に基づかない隠蔽というものはありえず、結果が《隠蔽》と同じであるがプロセスが異なるものは「不注意」と「失念」である。

ページの先頭へ 戻る

「結果的に具体的な事実を把握しないままあのようなことを言ったのは早計だった」との謝罪

合理的な理由がない限りは、前言の内容を撤回できないとするのが、現代社会の基本的なルールで、そこには言い訳の余地はない。

ページの先頭へ 戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS