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〈ブーム〉の反対語=〈××離れ〉〈脱××〉〈失われた××〉の用語集
―― 衰退は復活のはじまり
 

すべてはここから?“モノ離れ”

報道というは「××ブーム」が好きなのと同じように、「××離れ」が大好きだ。やたらと流行り廃りを語りたがる。流行りのほうは景気づけにもなるし、アナウンス効果もプラス側に作用することが多いからよいのだが、廃りがどうもよくない。

「××離れ」といっても、時代に取り残されて“もう帰ってこない”人気もあれば、周期的に客足が遠のいている場合もある。また、いままで過熱ていたものが“平熱にもどった”ときでも「××離れ」の扱いだ。コミック離れ・ゲーム離れ・IT離れといった最近のものとコメ離れ・活字離れなどは同等には語れないものだろうに。

「××離れ」といわれれば、アナウンス効果がマイナスに作用して客足がますます遠のきかねないし、いわれたほうも意気があがらない。

気をつけたいものだ。

モノ離れ

モノ離れという概念は、経済の第3次産業への重心移動にとどまらず、バブル期のブランド戦略、イメージ戦略、インターネット時代のヴァーチャル・リアリティへと展開していった。他の“離れ”と異なり、産業界がシフトに成功した例といってよかろう。

1984年本誌〈経済のソフト化・特集〉収録。以下、

総理府「家計調査」によると、1982年の実質消費支出の前年に比べた伸びは、食料費が1.3%、被服・履物費が0.5%、住居費が0.2%と、ほとんど横ばいか、微増である。これにくらべ、教育費は4.2%、教養娯楽費は4.3%、保険・医療費は2.4%の増である。このように、直接にモノが対象となる消費は伸び悩んでいるにもかかわらず、サービスの提供を受ける分野では、消費支出が着実に増加していることが「モノ離れ」と表現されている。

しかし、これは誤解を招きやすい表現であることに注意を要する。モノに対する支出も、品目によっては(ビデオなど)増大していて、必ずしも一本調子のモノ離れが見られるわけではないし、塾などの教育費支出の増大は、公教育の不健全さのために強制されているともいえるわけで、むしろ望ましくない現象と考えるべきであろう。

『提唱』がいうように、「『もの離れ』という言葉は、もう『もの』はいらなくなったのかとの誤解を招きやすい。それは、『もの』の面での充足のなかで『もの』への支出と比べ『サービス』支出のウエイトが高まったことを意味する言葉であろう」。

また、この言葉は、これまで鉄や石油や石油化学など素材産業の輸出入の担い手であった商社が、リースや金融や先端技術や情報産業(有線TVなど)へ進出し、活動分野のウエイトを変えつつあることにも使われる。

省資源・省エネルギー

モノ離れは省資源という、思わぬ効果を生んだ。

1991年版本誌収録、以下

第1次・第2次石油危機後、省エネルギーは諸外国に比べてわが国では大幅に進んだ。それはエネルギー価格が上昇したためであるが、産業部門での合理化努力、政府の助成策等の効果もあり、また産業構造において鉄鋼、化学、紙・パルプ、セメント等のエネルギー多消費産業のウェイトが小さくなったこともあって、省エネルギー型経済社会へ移行した結果でもある。軽薄短小、モノ離れにより省資源化も進んだ。しかし、最近の動きはそれに逆行する方向にあり、1990(平成2)年6月に出された新しい長期エネルギー需給見通しでは炭酸ガス排出規制もあって、社会システム、技術システムによる効率的エネルギー利用、サマータイム制の導入などが検討され、中東危機により省エネルギーを国民に訴える必要性がますます強まっている。

時間消費型消費
1991年版本誌収録。以下、

貿易摩擦解消のために内需拡大の必要が叫ばれているが、内需の大きな部分を占める家計消費支出がなかなか伸びないのが実情。最近のわが国の消費支出に見られるモノ離れ傾向がその一因をなしていることは明らかだが、本来ならモノ離れとともにサービス支出が拡大するはずのところが、それが必ずしも増えないところがむしろ問題といえる。経済企画庁ではこのほど、サービス支出の中には「カネ」だけでなく「ヒマ」がなければ支出されない、スポーツ、旅行、読書、けいこ事などを「時間消費型消費」ととらえ、そのための支出が全消費支出に占める比重を試算し、1985(昭和60)年に24.3%に達していることを明らかにした。これから考えると、全労働者が完全週休2日制に移行すると、この支出が1兆3000億円増える可能性があるという興味深い見通しがえられるという。

ヘルス・ケア産業
1991年版本誌収録。以下、

現在は物質的充足の時代といわれ、「物ばなれ」の傾向が著しい時代である。この波に乗っていくには物的製品の中に新しいニーズや変わりつつある価値を組み込むことが重要になろう。「物ばなれの時代」において、人々が最も関心を抱いている生命・健康に関して新しい視点から将来の発展可能性を模索している状態にある。栄養の過剰摂取、運動不足から文明病といわれる生命・健康への歪みが顕在化してきた。西暦2000年には65歳以上の老人が2133.8万人程度に達することからも、健康産業への支出は増大するものと考えられる。同産業の内容を概観するに、(1)生体開発分野として、レーザー診断・治療、生体代替治療、新薬品、漢方薬、(2)健康開発分野として電子血圧計、スポーツ飲料、乳酸菌食品、(3)食料分野として、ニューフード・プロセス、植物工場、(4)アスレチッククラブやスポーツクラブがある。この分野を支える技術には、エレクトロニクス、ニュー・マテリアル、ライフサイエンスなどがある。

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ブランド離れ

モノ離れののち、商品におけるブランド価値の比重が高まった。が、それに対する揺り戻しがブランド離れである。…とはいうもののノーブランドであることがある種のブランド価値をもつにいたる点(たとえば無印良品)からすれば「ブランド価値」の枠内である。

ノーブランド(no‐brand)
1991年版本誌収録。以下、

加工食品、日用雑貨品などの家庭用品を中心として、ブランド名をまったくつけず、白紙にその商品の一般名称(マヨネーズ、洗剤、ウイスキーなど)と容量および法律で定められた事項のみ記されている商品。カラー印刷のラベルや写真の類も全くなく、その分だけSB(ストア・ブランド)商品と比べ10〜35%程度安価である。ジェネリック・ブランド(generic brand)、ノーネーム(no name)、プレインラップ(plain wrap)などともよばれる。

ブランド離れをはじめた、わが国消費者にとっても、低価格志向の強い層を中心に、ノーブランド商品が受け入れられていく可能性は大きいとみられている。一部の大手スーパーやボックス・ストアでは、ノーブランド商品を主力とした品揃えで、消費者への浸透をはかっているところもあるが、品質における信頼性の面では、解決すべき問題も多い。

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