月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
若者たちはこう呼ばれて来た
執筆者 木村伝兵衛

若者たちはこう呼ばれて来た

青年

この「青年」という概念は、人の社会的・肉体的成長過程における一時期を指す。「青少年」は青年および少年のことである。江戸時代以前の日本の社会では「青年期」という時期は明確ではなく、元服し、前髪を剃り落とせば「一人前の大人」であり、青年とか若者という中間の世代は存在しなかったのである。

青年は1887〜88年にかけてメディアを通して広がった言葉であるとされる。

ページの先頭へ 戻る

若者組

青年は「青少年」「青年団」「青年会議所」というふうに使われて、公的な色合いがある。これに対して、「若者」とよばれる概念は、「青年」と違って、年齢や年代で指定できるものではなさそうなニュアンスがある。

江戸時代には村落ごとに一定の年齢に達した地域の青年を集め、「若者組」と呼ばれるような組織がつくられた。その役割は村落における祭礼行事や自警団的活動、そして土俗的な教育組織でもあったようだ。

ページの先頭へ 戻る

太陽族

サングラスにアロハシャツ、当時「無軌道」と言われた若者たちへの呼称。1955年に発表された石原慎太郎の小説『太陽の季節』に由来し、主に石原慎太郎や弟の裕次郎をまねたスタイル。髪は慎太郎カット。

ページの先頭へ 戻る

カミナリ族

1950年代終わりから60年代に跋扈する若者たち。静かに取り澄ました市民生活に恨みでもあるかのように轟音をたてて、二輪車を力いっぱい乗り回す連中。2人乗りや、宙返りを試みたり、若さと無軌道を示す、いわゆるアプレ族。彼らはしだいに集団化し暴力団の支配下に入る者も出た。1974年ごろからは暴走族とも呼ばれ、社会問題化した。

ページの先頭へ 戻る

みゆき族

1964年夏、東京、銀座みゆき通り周辺に集まった若者たちに付けられた名称。頭にハンカチを巻き、ロングスカート、腰から長いリボンを垂らし、色の濃いストッキングとローヒールを履き、大きな麻袋を携帯するというのが女性の特徴的ファッションだった。東京オリンピック直前のこの時代、新宿も渋谷も原宿もまだ流行の発信地にはなり得ず、東京の“NOW”は銀座にあったのだ。

ページの先頭へ 戻る

竹の子族

1979年夏に原宿の歩行者天国に出現した派手なファッションで踊る若者たちの呼称。彼らの着ているハーレム・スーツが「ブティック竹の子」のオリジナルだったことから、その名が冠された。

ページの先頭へ 戻る

シラケ世代

連合赤軍事件を契機に学生運動が衰えると、一つの時代の終わった無力感と、学生運動への失望を背景に、「シラケ」という言葉が流行。「無気力・無関心・無責任」の三無主義(後に「無感動・無作法」を加えて五無主義ともいわれた)を中心とする風潮が蔓延した。何をしても言ってもシラケて、冷めており、政治的な議論には無関心になり、個人主義に走る傾向が強くなった。

ページの先頭へ 戻る

アンノン族

1970年から71年にかけて創刊された雑誌「an・an」( アンアン) や「non・no」(ノンノ)は、若い女性向けの雑誌として、ファッションやグルメ、旅行などをグラビアで展開。雑誌の世界に新しい読者層を作り上げた。これらの雑誌を小脇に抱えて旅する女の子たちが「アンノン族」と呼ばれた。雑誌が新しい生活スタイルを提案し、カルチャーを作り始めたのだった。

ページの先頭へ 戻る

ヤング

TBSテレビの系列で月曜から土曜まで毎朝放送された「ヤング720」が始まったのは1966年だった。ラジオでは67年に放送開始されたいわゆる深夜放送「オールナイトニッポン」は、サブタイトルが「ビバヤング」だった。そして69年に隣りの局が同じ時間帯にぶつけたプログラムは「セイ!ヤング」。

マンガ雑誌では青年漫画雑誌として「ヤングジャンプ」が創刊されたのは79年である。「ヤングマガジン」はその翌年。このように60年代後半から80年代にかけて、若者はかなり長い間「ヤング」と呼ばれていた。だが、これは若い世代の呼び名というよりも「若い」を意味する形容詞が「いまどきの若いやつ」の代名詞にされたに過ぎない。

ページの先頭へ 戻る

指示待ち世代

1981年の用語。言われたことはテキパキこなすが、言われるまでは何にもしない。「指示待ち」は、この年の新入社員の傾向を指す表現として多くの共感を集めた。

この世代の父親たちは、会社人間であることが多く、妻は子どもに関わりを求めざるを得ない。その結果、過保護、過干渉になる傾向が強い。子どもが何か行動を起こす前に「あれをしなさい、これをしなさい。これはこうやるのよ、あれはそうすればいいのよ」と、きっかけ作りから解決法まで全てを指示してしまう。与えられたことをこなしてさえいれば自動的にステップアップして行ける。そんな世代に、当時の旧世代はイライラしたのだった。

ページの先頭へ 戻る

クリスタル族

学生作家・田中康夫の小説『なんとなく、クリスタル』がこの年ベストセラーとなった。この小説が描いたテーマとのかかわりではなく、もっと表面的な特長に注目は集まった。小説の中に有名ブティック、ファッション・ブランド、ミュージシャンの名などが註釈付きで盛られており、要はこういうカタログ文化を好む若者たちのことを指して「クリスタル族」、バブル時代の若者を指す呼称となった。

ページの先頭へ 戻る

新人類

1986年の新語。高度経済成長の時代に生まれ、物質的な面で不自由が少なく、テレビの発展と共に成長してきた世代を指す。モノよりも情報を重視し、どの分野にも好奇心を示すが深くコミットはせず、つねに移動しつづける。好きなものには熱中するが嫌いなものには見向きもせず、自分の好き嫌いがはっきりし、個性的で感性面に優れた特性を有している、と分析された。

ページの先頭へ 戻る

おたく

1989年のある事件をきっかけに一般に広まった用語。日本中に大きな衝撃をあたえた連続少女誘拐殺人事件の容疑者の自宅の様子が映像として公開され、その、マンガ、アニメ、ビデオ、フィギュアなどであふれた部屋にたくさんの日本人は驚かされた。彼らは「おたく」と呼ばれたが、多くの若い世代にも多かれ少なかれ似たような特長が見出された。

ページの先頭へ 戻る

オヤジギャル

1990年の新語。オヤジのような、行動様式と生活スタイルをもった20代後半の女性が注目を集め始めた。ゴルフをやり、赤ちょうちんで一杯ひっかけ、亭主などは面倒だということで、結婚を見送っている者も少なくない。中尊寺ゆつこのマンガ「スイートスポット」の女性キャラクターが元祖。ちなみに、80年代後半には「おじんギャル」なる新語も登場したが、それは定着に至らなかった。

ページの先頭へ 戻る

チーマー

1991年の新語。流行の中心は東京・原宿から渋谷に移動。渋谷のセンター街にただあてもなく集まる若者たち。幾つかのチームに分かれ、ビルの前や路上に座りながら雑談を交わす。チーマー(チームの構成メンバー)同士の仲間意識、連帯意識が強い一方で、パンピー(一般ピープル)やリーマン(サラリーマン)への差別意識が時として事件や犯罪の形になって表れることもあった。

ページの先頭へ 戻る

コギャル

1993年の新語。色気を前面に出すボディコン・ギャルに対して、少女性を残しながら健康的にクラブ遊びなどを楽しむティーン・エイジャーの女の子たちを指した。

ページの先頭へ 戻る

引きこもり

精神医学系の用語として「」が現代用語として登場したのは1994年前後。「人間関係の持ち方が未成熟で、引きこもらないと安心できないタイプ。不登校の子などに認められるのはたしかだが、もう少し一般的に卒業後も定職につかずに家の中にいる若者なども『引きこもり』に属する。」と記載された(現代用語の基礎知識1995年版)。

ページの先頭へ 戻る

ニート

2004年の用語。Not in Education, Employment or Training、その頭文字がNEET。仕事にも就かず、教育や職業訓練も受けない。フリーターとして働くのでもなく、かといって学校などに通うのでもなく、完全に無業となっている若者がニートとよばれる。これがヨーロッパなどでは大きな社会問題となりつつあり、日本でもその存在が注目されるようになっている。

ページの先頭へ 戻る

アキバ系

東京・秋葉原が、かつての家電の街から、アニメ、フィギュア、鉄道模型、ミリタリーグッズなどの専門店が並ぶ、オタクのメッカになりつつあった。この秋葉原に象徴される文化、ならびにそこに集う人々を「アキバ系」と呼び始めたのが2004年ごろ。「萌え」という感覚をキーワードとする人々とかなりの割合で重なる。

ページの先頭へ 戻る

ゆとり世代

2002年度(高等学校は2003年度)の学習指導要領による教育(ゆとり教育)を受けた世代。狭義では、ゆとり教育を受けた世代のうち、一定の共通した特徴をもつとされる1987年から1996年生まれの世代。

ページの先頭へ 戻る

ロスジェネ

2007年の用語。ロストジェネレーション。バブル崩壊後の就職氷河期を経験した「さまよえる世代」と呼ばれる、当時25〜35歳の若者を指した。

ページの先頭へ 戻る

さとり世代

車やブランド品、海外旅行に興味がない、お金を稼ぐ意欲が低い、地元志向、恋愛に淡白、過程より結果を重視、ネットを主な情報源とし物知り。90年代半ば〜2000年代初頭に生まれた世代はこんな特色を持つとされる。彼らを「さとり世代」と名付けた原田曜平の著書『さとり世代』の副題は「盗んだバイクで走り出さない若者たち」。尾崎豊の歌った若者と対極にあることを意味する。

一方、マーケティングライターの牛窪恵は、「モノを欲しがらない」「闘争心に欠ける」「力を出し惜しみする」と言われる彼らが、実は消費することは嫌いではなく、周囲との同調性を重視し、効率主義に徹しているだけで、「私たち大人よりずっと賢い消費者であり生活者」だと分析した。

ページの先頭へ 戻る

自動ブレーキ型新入社員

2014年春入社の新人たちに付けられたネーミング。就職活動は手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了してしまう。何事も安全運転の傾向がある。人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足との声も。

ページの先頭へ 戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS