2010年を彩った「ニュースな人名」

◆劉暁波

リュウ シャオボー。2010年のノーベル平和賞を受賞した中国の民主活動家。「中国の基本的人権確立のため、長期にわたる非暴力の闘いを継続した」ことが受賞理由。

1955年12月28日生まれ。1989年コロンビア大学客員研究者として米国滞在中だった劉氏は、民主化運動の高まりを受け急遽帰国。6月4日に起こった「六四天安門事件」では、他の知識人3人とハンストによる抗議活動を展開し「四君子」と呼ばれた。反革命罪で投獄され91年に釈放された後も、中国内で人権活動や民主化運動を継続し、2度にわたる投獄と強制労働を受けた不屈の精神の持ち主。2008年には、中国共産党の一党独裁体制の廃止などを求めた「零八憲章」を起草して再び拘束され、国家政権転覆扇動罪で11年の懲役刑を受けている最中での受賞となった。

面会した妻から受賞を知らされた彼は、「この受賞は天安門事件で犠牲になった人々の魂に贈られたものだ」と語り、涙を流したとされる。

◆水嶋ヒロ

みずしま・ひろ。映画やCMで大人気のイケメン俳優だったが、2010年9月20日をもって所属事務所「研音」を退社。表向きは「執筆活動に専念するため」と発表されたが、2009年に人気シンガーソングライターの絢香と極秘入籍したことで事務所と決裂。事実上の解雇につながったとみられている。10月末、本名の齋藤智裕（さいとうともひろ）名義で執筆した処女小説がポプラ社小説大賞を受賞。注目を浴びるさなかの12月、受賞作『KAGEROU』が発売となった。

1984年、東京都生まれ。幼少から小学校卒業までをスイスのチューリッヒで過ごした帰国子女で英語が堪能。ルックスのよさに加えて、高校3年時には全国高等学校サッカー選手権大会で準決勝まで進んだスポーツマン。慶應義塾大学卒。2006年の『仮面ライダー・カブト』で主人公のカブト/天道総司役を演じて人気を集め、映画『GSワンダーランド』『BECK』などへの出演でファン層を広げた。

◆村上隆

むらかみ・たかし。マンガやアニメなどの「オタク文化」を下敷きにした作品で知られる現代美術家。

2010年9月14日からフランス・パリのベルサイユ宮殿で作品展が開かれたが、その“前衛”ぶりにフランスの保守系団体などが「宮殿を冒涜するもの」だと反対運動を展開。これに対し開催前に会見した村上は「僕のミッションは、歴史の新しい部分と古い部分をどうやってマリッジ（結婚）させるかだ」と意気込みを語った。ベルサイユ宮殿では2008年以来、毎年現代美術家の作品展を開催しており、今年は初の東洋人として村上が選ばれた。「鏡の間」の回廊や庭園に、彫刻を中心に22作品が約3カ月間展示される。

1962年生まれ。東京都板橋区出身。高校卒業後にアニメーターを志したものの挫折し、2浪の後に東京芸術大学美術学部日本画科に進む。大学院修士課程の修了制作が次席だったことで再び日本画家への道を断念し、現代美術家としてデビューした。

◆さかなクン

ハコフグのかぶり物で「ギョギョ〜」と甲高い声で叫ぶことで有名なタレント魚類学者。京都大・中坊徹次教授の依頼を受け、絶滅したサケ科の淡水魚・クニマスのイラストを描くための参考資料として取り寄せた魚の中から、クニマスそのものを70年ぶりに発見。環境省によるとレッドリストで絶滅種に指定された魚が再発見されたのは初めてのケースという。

1975年8月6日生まれ。子供の頃からのさかな好きで、東京水産大学をめざすも叶わず、日本動植物専門学校（現在は廃校）に進学。テレビ東京の「ＴＶチャンピオン・魚通選手権」で５連覇という快挙を成し遂げ、「さかなクン」と命名されブレイクした。明るい天然キャラに加え、テレビでは分かりやすく魚や料理法を解説することで人気。東京海洋大学客員准教授。新鮮な水産物がそろう千葉・館山に住み、料理の腕も磨いている。本名・宮澤正之（みやざわ まさゆき）。ああ見えても妻帯者。

◆セバスティアン・ピニェラ

チリ大統領。世界中の注目を集めたサンホセ鉱山の落盤事故は、2010年10月14日に33名の作業員全員が特殊カプセルによって無事引き上げられ、「奇跡の生還」として報道された。ピニェラ大統領は事故発生時から現場をたびたび訪れ、閉じこめられている作業員や家族を励まし続けた。メディアを意識したその姿に、「救出作業を政治利用している」と作業員の家族からも批判の声があがっていたが、支持率は事故前に比べ大幅に上昇。鉱山業界に対し、安全管理の不備などを厳しく指摘する姿勢も評価されている。

チリでは故ピノチェト大統領による軍政終了後、左派政権が続いたが、2010年3月に誕生したピニェラ政権は20年ぶりの右派政権。当初は危うい政権運営に先行きが不暗視されていたが、今回のピンチを見事チャンスに変えたようだ。1949年12月1日生まれ。米経済誌フォーブスで世界701番目の資産家にランクされるなど、チリ有数の大富豪でもある。

◆ジルマ・ルセフ

ブラジル初の女性大統領。支持率8割という驚異的な人気を維持していたルラ政権下で、鉱業エネルギー相、官房長官を歴任し、妥協を排した実務的な仕事ぶりから「鉄の女」と呼ばれる。任期満了を迎えたルラ大統領の後押しを得て、2010年10月31日の決選投票では得票率56％で新大統領に当選。「惨めさを根絶し、すべての人に平等な機会を与えたい」と抱負を語った。

大学時代は軍政に反対して左翼ゲリラの抵抗活動に加わり、投獄経験もある経済学者。成長著しいブラジルは2014年にサッカー・ワールドカップ、16年に夏季五輪の自国開催を控えている。有力新興国（BRICs）として経済成長と福祉の拡充を両立させた前政権からの国民の期待をどこまで実現できるのか、その手腕が注目される。就任式は2011年1月1日。

◆武良布枝

むら・ぬのえ。『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる漫画家・水木しげる氏の妻で、NKH連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の原作者。ドラマの大ヒットで、昭和の時代を「懐かしく呼び戻してくれた」ことが評価され、2010ユーキャン新語・流行語大賞に「ゲゲゲの」が選ばれた。受賞式では「夢の中を漂うような気持ちです」。

1932年島根県生まれ。1961年に水木氏と見合し5日後には結婚。東京での赤貧生活の中、「彼についていくしかないし、いくべきだ」と自然に思えたという。水木氏の努力と才能を隣で見つめ続けてきた暮らしを、自伝『ゲゲゲの女房 人生は…終わりよければ、すべてよし!!』に記し、2008年に出版。同年代を中心に、昭和と夫唱婦随の夫婦愛がノスタルジーと共感を呼んだ。

◆松下奈緒

まつした・なお。NHKの連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』でヒロインを務め大ブレイクした女優。演技だけでなく、ピアニスト、作曲家、歌手、モデルとしても活躍する多才な女性である。2010年3月29日の初回視聴率は14％台と歴代ワースト記録でスタートするも、徐々に上向き最終回は番組最高の23.6％を記録。NHKの歴史に残る大ヒット番組となった。この勢いを受け、2010年NHK紅白歌合戦では紅組の司会に大抜擢。まさに2010年の顔ともいえる活躍ぶりである。

1985年2月8日生まれ。兵庫県川西市出身。3歳からクラシックピアノを習い、東京音楽大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻を卒業。紅白の司会が決まり、「音楽が大好きなので、楽しむということだけに関しては自信がある。たくさんのアーティストの力を借りつつ素敵な一夜にしたい」と意気込みを語った。

◆向井理

むかい・おさむ。2010年９月25日が最終回となるＮＨＫ朝の連続ドラマ「ゲゲゲの女房」でファン層を広げた若手俳優。「水木しげるという“巨人”をどう砕いて、のみ込んで、出してやろうという思いだった。自由にやらせていただいて、結果的にたくさんの人に見ていただいて、本当に自分は幸せだなと思う」とコメント。大ヒットした映画「ハナミズキ」や「ＢＥＣＫ」にも出演しているほか、ＮＨＫ大河ドラマ「江」への出演も決まっている有望株。

1982年生まれ。神奈川県横浜市出身。身長182cm。子どもの頃は獣医になりたいと思っていたが、大学進学の段階で「遺伝子は自分で新たな可能性を追求できる」と明治大学農学部生命科学科に進学。

◆植村花菜

うえむら・はな。2010年、今年いちばん“泣ける曲”として話題になった『トイレの神様』でＮＨＫ紅白歌合戦に初出場するシンガーソングライター。幼い頃、一緒に暮らした祖母から「トイレをキレイにしていたら、べっぴんさんになれる」と教えられ、苦手なトイレ掃除に率先して取り組んだ思い出と、大人になってからの祖母との別れを９分５２秒に込めた長い楽曲が多くの世代に感動を呼んだ。著書『トイレの神様』や同名の絵本も発売されるなど、大ヒット効果が多方面に広がっている。

1983年1月4日兵庫県生まれ。関西を中心に路上やライブハウスなどでインディーズ活動を展開し、02年「服部良一記念音楽祭 ザ・ストリートミュージシャン・グランプリ」でグランプリを獲得。05年に「大切な人」でメジャーデビュー。

◆岡田幸文

おかだ・よしふみ。プロ野球日本シリーズで5年ぶり4回目の優勝を果たした千葉ロッテ。第7戦延長12回に勝ち越しの3塁打を放ち優勝に貢献した左打ち外野手が岡田である。第1戦で右太ももを肉離れした大松に代わり先発出場。入団2年目、6月に初めて1軍登録されたばかりで一気に名を上げた。日大中退後、足利ガスの契約社員として働きながら社会人野球の全足利クラブに所属。引退後は足利ガスで正社員雇用の予定だったが、「2年間やらせてくれ」と猛反対の夫人を説得し、2008年のドラフトでロッテから育成選手として指名され入団。2009年3月に1軍の出場資格を持つ支配下選手に登録された苦労人。家族は「今は120パーセント応援しています」という足利市役所職員の妻と2女。1984年7月6日、栃木生まれ。

◆村上佳菜子

むらかみ・かなこ。フィギュアスケート界においてオリンピック、世界選手権と並ぶ三大大会の1つ「グランプリファイナル」。2010年11月、米国・ポートランドで行われたその第4戦で、合計164・93点を出し初優勝したのが16歳の村上である。これにより上位6人で世界一を決定するGPファイナル（12月9日開幕、中国・北京）への進出が決定した。シニアデビューのシーズンでのファイナル進出は金妍児や安藤美姫、浅田真央に並ぶ快挙。幼少期から一緒にリンクで過ごした4つ上の浅田を慕っており「マオちゃんにちょっと追いついたかな」と喜んだ。

1994年、愛知県生まれ。5歳でスケートを始め、伊藤みどりや浅田真央を育てた山田満知子コーチの元で練習を重ねてきた。08年度はジュニアGPファイナルで4位、09年度は世界ジュニア選手権と、ジュニアGPファイナルで優勝と浅田以来の2冠に輝く。女子選手には高難度の2連続3回転ジャンプが武器。愛知・中京大中京高1年。158センチ、43キロ。

◆梅崎健理

うめざき・けんり。登録名“うめけん”で知られるツイッターの達人で、まだ17歳の高校生。2010年『ユーキャン新語・流行語大賞』では、早くから「〜なう」という言葉を発信し、日本に普及させた功労者として表彰された。彼がツイッターでつぶやき始めたのは2009年12月末。その数日前からツイッターを始めたソフトバンクの孫正義社長とフォロワー（読者）同士の関係となったことが彼の人生を変える。孫氏との交流をきっかけに起業を志し、福岡の県立高校から東京の通信制高校に転校。昨年12月には中高生ら４人の社員を擁する「株式会社ディグナ」を設立した。1993年6月10日生まれ。生まれた時から周囲にパソコンやネットワークの環境が当たり前に存在した「デジタルネイティブ世代」の代表として、若者の才能を活かした事業を展開していきたいという。

◆荒川ちか

あらかわ・ちか。ロシア・ウラジオストクで開催されたウラジオストク国際映画祭の開幕招待作品「ヤクザガール」（セルゲイ・ボドロフ監督）に主演した小学校5年生の女優。ヤクザガールは、暴力団組長の孫娘が抗争を避けるためにイタリア行きの飛行機に搭乗したがロシアに不時着し、ロシア人青年らさまざまな人と触れ合うコメディー。ロシア全土の約２５０の映画館で上映されている。せりふのほとんどがロシア語。昨年、東京で行われたオーディションで選ばれ、ロシア語を特訓。「海外に行ったのは初めてだったけど、ロシア語を覚えて使うのが面白かった」とコメント。

1999年神奈川県生まれ。6歳でデビューし、ドラマ「臨場」「歌のおにいさん」のなどドラマやＣＭに出演してきたが、映画は初主演。囲碁が趣味。

◆新城幸也

あらしろ・ゆきや。サイクルロードレース選手。2010年、自転車競技の最高峰「ツール・ド・フランス」で日本人として初めて2年連続の完走を果たし、「ジロ・デ・イタリア」ではステージ3位となり日本人初の入賞。さらに最も果敢な走りをした選手に贈られる「逃げ敢闘賞」(プレミオ・デッラ・フーガ)も獲得し、サイクルロードレースの本場ヨーロッパで急速に知名度を上げている。11月に東京と大阪で開催される自転車見本市「サイクルモードインターナショナル2010」では、イメージキャラクターとしてテレビＣＭにも登場した。

1984年9月22日、沖縄県石垣市生まれ。高校卒業後に単身でフランスへ渡り、2008年にプロツアー選手となった。特技は習字。171cm、65kg。

◆三浦皇成

みうら・こうせい。競馬騎手。5歳の時に騎手の格好をしてポニーに乗った経験から騎手を目指すようになり、2005年4月にJRA競馬学校に入学。08年3月1日にデビューした。その年に91勝を挙げる活躍で、武豊が持っていた「新人年間最多勝記録」を21年ぶりに更新し、2010年9月に現役では56人目となるJRA通算200勝を達成した。デビューから2年6カ月25日での200勝は、武豊の2年0カ月4日に次いで史上2番目のスピード記録。

身長162センチ、体重46キロ。1989年12月19日、東京都生まれ。

2008年に13歳年上のタレント、ほしのあきが名付け親となった競走馬「ハシッテホシーノ」のデビュー戦に騎乗したことで彼女との交際に発展。結婚も近いかとも噂されるが、本人は「GI初制覇を果たすまでは結婚しない」と決めているという。