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未病に備える東洋医学の話☆秋の巻
執筆者 久保田恵美

未病に備える東洋医学の話☆秋の巻

営養  Nutrition

営養(えいよう)とは「生物が生命を維持し、生きていくために必要な物質を体外から摂取し、体を成長させること。また、摂取する成分や物質のこと」を指します。現在、「えいよう」といえば「栄養」という漢字をあてるのが一般的でしょう。これは1918年栄養学の創始者である佐伯矩(さえきただす)医学博士が、「栄養」という文字で統一するように提言したことが始まりといいます。

また、営養には「体を滋養(じよう)する」という意味を含みます。

中医営養学

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中医営養学

中医営養学(ちゅういえいようがく)とは「中国医学の理論に従い、食物を用いて疾病の予防や回復、健康維持や促進、老化防止などにつなげる学問」のことです。西洋医学における「栄養学(=ビタミン、たんぱく質といった栄養成分を基本に考える学問)」との違いは、「食物を摂取したあとの消化吸収の働き、作用」までを考慮している点です。

中医営養学は、医食同源(いしょくどうげん)の理念と重なる考え方であり、「食べる」ことを「医療」の手段として考える学問になります。

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薬膳

薬膳(やくぜん)とは「中医営養学の理論に基づいて食材を選び、調理された料理」のことです。健康回復、疾病予防などの作用がありつつも、普通の食事として“おいしい”ことが基本となります。西洋医学における「栄養学」との違いは、食べる人の“性別、生活環境、体質、年齢、その日の体調”など個人の細かい情報をもとに、その人に合った調理をすることです。例えば、“便秘予防の薬膳”とひと言でいっても、体に熱を溜めている人と、冷えて仕方ない人とでは摂取する料理が異なります。熱をとる(冷やす)食材と熱を与える食材、水分をとり除く食材と水分を与える食材といったように正反対の作用をもつ食材を組み合わせながら、個人に合った料理を提供することが薬膳の大きな特徴です。

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陰虚

陰虚(いんきょ)とは「体内のうるおい不足の状態」を指します。主な症状としては、口やのどが渇く、冷たいものをほしがる、手足の裏のほてり、寝汗をかく、眠りが浅い、夢をよくみる、腰が痛い、耳鳴りがする、空咳がでる、便秘ぎみなど。気候変化による不調や過労などから、誰でもが起きるうる症状の一つです。具体的な原因として、体内の栄養不足・脱水症状、自律神経の興奮、代謝の過剰などがあげられます。簡単に説明をすると、「体がとても疲れていて、栄養や水分が全身に行き渡っていない状態」といえるでしょう。こういった症状のときは、激しい運動をして多量に汗をかくことは逆効果なので、適度な運動を心がけてください。体にうるおいを与える(=滋陰潤燥)食事を摂り、睡眠を十分にとることが何より大切です。

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滋陰潤燥

滋陰潤燥(じいんじゅんそう)とは「体にうるおいを与える働き」のことを指します。夏の間、大量に汗をかくことで、体はどうしても疲れてしまいます。その疲れた体で秋を迎えるため、秋はとくに養生(ようじょう)すべき季節といえるでしょう。

滋陰潤燥の作用がある食材は「落花生、ごま、さつまいも、山芋、かぼちゃ、大根、白菜、白きくらげ、ほうれん草、れんこん、牛乳、卵、豆乳、豆腐、はちみつ、豚肉、鴨肉」など。果物では「なし、柿、りんご、ぶどう」などが効果的です。ただし、これらの果物はどれも体を冷やす作用があるため、食べ過ぎには注意。ベストな食べ方は「温める」ことです。

なしやりんごの場合は「コンポート」にすることがおすすめ。鍋に水とはちみつ(または氷砂糖)を入れて煮立ててシロップを作ります。そこに皮をむいたなしやりんごを入れて10分ほど煮ます。火を止めて冷めるまでフタをしておけばできあがり。食べるときは再度ほんのり温めると、体にやさしいデザートになります。

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温肺定喘

温肺定喘(おんぱいていぜん)とは「肺の働きを高め、ぜんそくなどの咳を鎮める働き」のことを指します。秋は空気が乾燥する季節。のどの不快感や痛み、空咳から本格的なぜんそくまで、のどの不調が起こりやすい季節でもあります。「空気の乾燥=のどの不調」と結びつけている方は多いかと思いますが、中国医学ではさらに奥が深く、秋には「肺」の不調がかかわっているという考え方が基本にあります。つまり、「肺を治せば、のどの不調や咳は止まる」という理論。温肺定喘という言葉はその理論を反映した言葉になります。

温肺定喘の作用が高い食材は「くるみ」と「松の実」です。どちらも薬効は高く、入手しやすい食材。料理の定番としては「お粥」があります。くるみ、松の実ともに、すりつぶしたものを白米のお粥に加えるだけ。咳を止める作用のほか、腎機能(生殖機能)を高める作用や美肌効果、便秘改善・予防にも最適な食材です。

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