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未病に備える東洋医学の話☆夏の巻
執筆者 久保田恵美

未病に備える東洋医学の話☆夏の巻

未病

健康ではないが、さりとて病気ともいえない状態。日本未病システム学会では、「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」を合わせて「未病」と定義している。もともとは中国の医学書『黄帝内経』で「病気に向かう状態」として登場し、日本では貝原益軒の『養生訓』に出てくる。加齢にともなう体の衰えや不調とうまく付き合うという考え方や予防医学、統合医療への関心の高まりから、注目されるようになった。メタボリック症候群も未病のひとつとみなされている。

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気虚

ききょ。気は「生命のエネルギー(目に見えないもの)」を、虚は「不足」を意味します。つまり、気虚とは「生命エネルギーの不足=全身機能・抵抗力・代謝の低下」を指し、具体的には「無気力、疲労・倦怠感、食欲不振、声が小さい」などがあげられます。

気には2種類あり、両親から授かったエネルギー「先天(せんてん)の気」と食事などから摂取したエネルギー「後天(こうてん)の気」があります。成人以降に気虚の症状がでた場合は後者の「後天の気」が不足している場合が多いといわれています。とくに夏場は汗をかいたり、湿気が多かったりと体に負担がかかるケースが多く、そこにストレスなどが加わると「気虚」の状態になって不調を訴える場合が少なくありません。

すぐにできる対処法としては、朝ご飯をしっかりと摂ること。豆腐、納豆などの良質なたんぱく質や、玄米、やまいも、じゃがいもといった栄養価の高いでんぷん質を摂ることをおすすめします。夜は辛い刺激物、油分の多いものは避けて胃腸にやさしいものを摂取し、十分な睡眠をとってください。

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体質改善

気虚(ききょ)の場合、栄養ドリンクを飲んでも元気になることがなかなかできません。理由は気虚の方は、胃腸の消化・吸収が弱っているため、栄養素を十分に吸収することができないためです。よって、気虚の場合、体の根本を変える「体質改善」が必要となってきます。

中国医学では気を補う漢方薬や、消化・吸収を促進する漢方薬などが処方され、体質を根っこから変えていく方法をとります。一般的な病院の薬や、市販の薬、栄養ドリンクなどでなかなか不調が改善しない方は、漢方薬局、漢方専門の病院などでご相談されることをおすすめします。ただし、漢方薬には即効性はないため、回復に個人差があります。数か月で回復を感じる場合もあれば、数年かかってやっと……という場合も。おすすめする理由は「未病を放っておいて辛いならば、ぜひ回復の“きっかけ”に出会ってください」という想いからです。

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芳香化湿

ほうこうかしつ。中国医学で「芳香化湿」とは「香りの食材で気を全身に巡らせ、余分な水分をとる」という働きを指します。薬局、病院では「芳香化湿薬」といって個人に合った漢方薬が処方されます。

夏の湿気による不調は「頭痛、頭が重い、体のだるさ、下痢、腹痛、食欲不振」など。主に、胃腸を弱めてしまうケースが多い季節です。食事に取り入れたい食材は“芳香性のある”もの。例えば、「青じそ、みょうが、セロリ、柑橘類、ごま、さくらんぼ、ジャスミン」など。香りがする食材を摂ることで、気が全身に巡ってリフレッシュ効果を発揮し、胃腸の働きも高めます。また、体に溜まった余分な湿気(水分)を取り除く作用があるため、だるさや重さといった症状をやわらげます。

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清熱利湿

せいねつりしつ。暑い夏場に、思わぬ下痢や腹痛を経験したことはありませんか。冷たいものを食べすぎて飲みすぎて下痢をする場合もありますが、ここでいう症状は、体に熱を溜め込んでしまった場合の下痢や腹痛を指します。具体例としては「過敏性腸症候群」がその一つ。様々なケースがあり、便秘型や便秘や下痢を繰り返す交替型など。共通していえることは便に熱をもっており、臭いがあるという点です。

中国医学ではこのような不調を改善する方法として「清熱利湿」があります。これは、「体内の余分な熱と湿気を取り除く」という働きです。身近な食材では「豆腐、セロリ、セリ、きゅうり、しじみ、はまぐり、トマト、ゴーヤ」など。夏に旬を迎える食材は、体を冷やす作用をもつ場合が多いため、旬のものを意識するとよいでしょう。ただし、冷え性の方は悪化の恐れがあるので、温かいスープにしたり、しょうがなどの薬味を添えたりして「体を冷やしすぎない」工夫が必要となります。

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安中和胃

あんちゅうわい。夏場は冷たいものの食べすぎ・飲みすぎで胃腸の調子を崩したり、暑さによる夏バテで食欲不振に陥ったりと何かと「胃腸」を痛めてしまう季節です。

中国医学では「胃の機能を安定させ、胃の働きを円滑にする」ことを「安中和胃」と呼びます。胃腸に関する不調は、生まれつき胃腸の弱い場合と、ストレスや食べ過ぎなどで胃腸を痛めてしまう場合の2種類あります。どちらも、大切なことは「胃を冷やさない」という点。クーラーなどによる冷えも大敵です。電車の中、オフィスの中で寒いと感じたときはもう体は冷えきっています。寒いと感じる前に上着を1枚着る、首にストールを巻くなど、ちょっとした対策で体を守ってあげてください。また、暑いからといって、冷たい飲み物を選ぶことは避けましょう。何事も慣れです。未病を改善し、元気な毎日を過ごすためにはちょっとした努力が必要。知人が冷たいドリンクを選んでも、自分は「ホットで」と無意識に言えるようになれば、体が改善に向かっている証拠です。食事を選ぶ際も、極力温かいものをチョイスしてください。油っこいものや辛さの強い刺激物を控えることも重要なポイントです。

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