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生き物たちから危険の感覚を学習する

生き物たちから危険の感覚を学習する

ハブ毒

日本では南西諸島に分布し、全長1〜2mほどの日本最大猛蛇「ハブ」が持つ毒のこと。ハブは一般的に平地から山地の森林内に生息していますが、村落や耕地の周辺に出没することも。夜行性なので、日中は石垣の間、ソテツの葉の奥、木の根元などに潜んでいます。敵を攻撃できる範囲は、全長の3分の1程度ですが、興奮すると、全長の3分の2にも達する跳躍力をもっています。ハブが出没する土地の人は、「ハブに咬まれる」とは言わずに「ハブに打たれる」と表現します。理由は、地上でも樹上でも活動するハブは、思わぬ方向から人を攻撃し、何が起きたかわからないほど瞬間的に咬みつくため。手足以外に毒を打たれた場合、命に関わることも。手足の場合でも、切断しなければならない例もあります。

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神経毒

地球全体1000万種の生き物のうち、猛毒の持ち主は非常に少ないと言われます。しかし、自分の身を自分で守るため、毒の怖さを知っておくことは大切です。生き物が毒をもつ理由は、主に「防御」のため。むやみに触わることをしなければ、予防することは可能です。神経毒は神経を麻痺させる最も危険な毒の一種。体に入ると、心臓や肺を自然に動かしている自律神経や、歩くときなどに働く運動神経が機能不全になります。体の様々な筋肉が麻痺し、長時間の人工呼吸をしても、最悪の場合は死に至ることも。この毒の持ち主には、ヒョウモンダコアンボイナガイスベスベマンジュウガニエラブウミヘビなどがいます。

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出血毒

体内で組織と血管を破壊していく毒の一種。血液中の赤血球破壊など血液の障害を起こさせます。リンパ液や血液が皮下に漏れ、次第にそのリンパ液や血液が全身に広がっていき、皮下出血や吐き気が起こり、二次的に麻痺が生じます。ハブやマムシが保持し、マムシに咬まれると腕が足の太ももくらいまで腫れることがあります。

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テトロドトキシン

神経毒に分類され、フグが保持する代表的な毒の名前。1964年に毒の構造が解明され、「テトロドトキシン」と命名されました。それは特殊な天然化合物で、人間における致死量は0.5〜2mg。フグの体内に、生まれながらにもつものではなく、海中にいる特定のバクテリアを食物とともに食べているうちに、腸内に入ったバクテリアが毒を作り、フグの各器官に蓄積されると言われています。毒の特徴は、情報を伝えようとする一つの神経で障害を起こし、心臓や呼吸を止めてしまうことです。

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血清(けっせい)  serum

血液(全血)を凝固させ血小板や凝固因子を除いたもので、透明な淡黄色の液体。中毒にかかった際、処置で使用します。毒を分解して、体内から毒を消す液体の薬です。毒の種類によって、日本にはない血清もあります。

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ハブクラゲ

波の少ない浅瀬に生息するため、夏の海水浴では出会いやすい生き物です。刺されると、激痛が生じ、ミミズ腫れに! 数時間後には水ぶくれに変化します。また、この毒はハブ毒の2倍の強さがあるため、最悪の場合は死に至ることもあります。応急処置としては、まず、体に付いたハブクラゲを取り除く前に、「酢水」をたっぷりかけます(酢は毒の発射をおさえる効果があります。 酢がない場合はビールなどアルコール類でも大丈夫)。次に、クラゲの触手(長い部分)を取り除き、刺された場所に酢水を十分にかけます。痛いからといって砂や水でこすると、毒が広がるだけです。シャツやタオルで患部を強く押さえ、その上から酢水をさらにかけ、病院へ向かいましょう。

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ヒョウモンダコ

全長12cm、頭の部分は3.5cmほどの小さめなタコ。日本では相模湾から八丈島以南の太平洋岸に分布し、浅瀬の珊瑚礁や岩礁に生息します。強烈な毒の持ち主で、興奮すると触手(長い部分)にある模様が「青」に輝き始めることが特徴です。刺されて毒を注入されると、全身麻痺が生じ、呼吸困難になり、死亡してしまう確率が高いです。応急処置として重要なのは、「マウス−トゥ−マウス法」により空気を肺に送り込むこと。少しでも早く人工呼吸装置のある病院へ運び込むことができるかどうかが、命を左右します。

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アンボイナガイ

紀伊半島以南に分布するイモガイ科の猛毒巻貝(5〜13cm)。名称は、インドネシアの「アンボン島」に由来します。殻が薄く、口が広く開いていることが特徴で、魚を食べます。浅瀬の岩礁に生息するので、身近に見かける貝です。しかし、刺されると、死亡に至る確率が高いため、注意が必要。イモガイ科の巻貝には多い少ないはありますが、すべて毒をもつので、何より触らないことが大切です。

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ミノカサゴ

熱帯にすむとてもきれいな魚ですが、背びれに毒をもつ棘があるため刺されると危険です。痛みは数時間続き、刺されたところは紫色に変色し、やがて赤く腫れて熱をもちます。壊疽(えそ:組織や細胞が死んでしまい、皮膚が紫色や黒色に変色してしまう状態)になることもあるので注意が必要。心臓が苦しくなったり、吐き気、関節痛などが起こり、死亡する場合もあります。

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オニオコゼ

全長20cmほどのユニークな顔をした魚。日本中部から南シナ海に分布し、内湾から深さ200mほどの海底に生息しています。砂に潜って、体をカモフラージュさせ、身を隠すことが得意です。一見、愛嬌のある姿をしていますが、背びれに毒腺をもつ棘があり、刺されると非常に危険です。しかし、味はとてもおいしいので、適切な処理をすれば食べても大丈夫! なので釣りあげた際は、すぐに背びれの棘を切るよう心掛けましょう。

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スベスベマンジュウガニ

5cmほどの小さな毒ガニで、岩の多い海岸で見られ、石の下や岩の割れ目などに生息しています。知らずに食べてしまう被害が最も多いカニです。甲らにある白い網目模様が特徴。食べるのは非常に危険で、1匹で大人2人が死亡する毒量を保持しています。また、食べてはいけないカニの仲間に、「ウモレオウギガニ」がいます。鹿児島・八丈島・小笠原諸島以南の、沖縄、太平洋、インド洋に広く分布し、珊瑚礁にすむやや大型の毒ガニ。体色は、緑っぽい青か、紫っぽい赤が特徴です。毒の成分は、麻痺性貝毒の「サキシトキシン」などで、毒の強さは「テトロドトキシン」と同じくらい強いものです。

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ホオジロザメ

体長約12mの大型のサメ。人間を襲う危険性があるサメの代表格です。普段、人間くらいの大きさの獲物を食べているので、人に偶然出会うと襲う傾向があります。海水浴ができる海岸近くまで侵入することが稀にあるため、夏の海辺では注意が必要です。他には「イタチザメ、オオメジロザメ、ヨゴレ」などの大型サメが「人喰いサメ」として有名。また、サメは世界中に383種生息し、日本では121種が確認されています。100%身を守る方法はありませんが、地元の漁師さんから、サメの出没情報をよく聞いておくことや、切り傷がある場合は、海に入らないことなどが最低限必要です。

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アカエイ

体長は約1mで、中部以南の日本全域、東シナ海に分布するエイの一種。浅海からやや深い海底にすみ、サメと同じ分類に入ります。1億数千万年前の時代、サメの中から海底での生活に適応した生き物が出現。それがエイの祖先であると考えられます。防御のため、尾の上部に毒をもつ棘があることが特徴。刺された場合は、痛みを軽くするために、掘り出すように棘を取り除き、毒を吸引し、よく洗いましょう。何より、すぐに病院へ向かうことが大切です。その昔、アカエイの棘を矢や槍の先に結びつけ、「猛毒の武器」として使った民族がいたといういわれもあります。

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エラブウミヘビ

全長1.5mほどのウミヘビの一種。日本では琉球列島に多いですが、本州・四国・九州などの大平洋側でも見られます。体には輪の模様が通常13〜16本あり、尾の部分は平らですが、胴の断面は円形に近いです。頭部は大きく、鼻孔は側面に開いているため、泳ぎは不得意。ハブ毒の約20倍もの猛毒をもちますが、性格はおだやか。沖縄では「エラブー」または「イラブー」と呼ばれ、薫製にして食用とされます。「エラブトキシン」という独特の毒をもつため、強く咬まれると、呼吸が停止し、即死状態となることも。ただし、むやみに触らなければ、攻撃してくることはほとんどありません。

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ガンガゼ

熱帯系の代表的なウニの仲間で、浅海の珊瑚礁や岩礁に生息します。殻径(5〜9cm)の5〜6倍もある細長い棘をもち、中は空洞で非常に折れやすいのが特徴。刺されると、体内に棘が折れこみ、とても抜けにくいです。棘に毒をもつため、激痛、腫れが生じ、ひどい場合には、手足の筋肉の麻痺や呼吸困難を起こすことも。痛みは棘をぬけば、数時間で消えますが、麻痺は半日以上残ることがあります。応急処置は、まず棘をすぐにぬき、きれいな水でよく洗います。あれば、重曹水、アンモニア水などをかけ、すぐに病院へ。何より、被害にあう前に触らないことが大切です。

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ワニガメ

2006年6月、東京・上野公園にある不忍池で発見されたことで有名になった生き物です。甲長66cm、体重100kgほどの大型なカメで、アメリカ合衆国南東部の、川や湖沼の深い水底に主に生息します。肉だけでなく、昆虫や水草なども食べる雑食性。昼間はあまり動かず口を開け、ミミズ状の舌を動かして獲物を誘う「待ち伏せ型の狩り」をします。ワニガメはこれまで日本国内で繁殖した例はありませんが、今回の発見により日本でも繁殖する可能性が出てきたと言えます。危険な点は、防御のため、強力なあごで咬みつくこと。普段は、動きは静かで攻撃性はありませんが、身の危険を感じると非常に速く攻撃してきます。咬みつくと、なかなか離しません。もし、咬まれた場合は、慌てず水の中にワニガメを静かに沈めましょう。沈めると、あごの力を抜き、口を開いてくれるのが一般的です。

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キイロスズメバチ

本州・四国・九州に分布し、体長は20〜25mmほどの大きなハチ。近年、都市部で住宅の風呂場の喚気口、換気扇の排気口などに巣を作ることが急増しています。防御のため、人を攻撃。夏の森では、最も事故が多いと思われるハチの一種です。性格が荒く、危険性が高いため、時には死に至ることもあります。まず大切なのは、大騒ぎしないことです。騒ぐと、ますます興奮し、動くものすべてを標的にします。地面に伏せて、静かにじっとしていることがよいでしょう。刺された場合、とくに複数刺された場合は、すみやかに病院に向かうことが大切。応急処置は、あれば、抗ヒスタミン剤の入ったステロイド軟膏を塗り、「患部を冷やす」ことです。

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ツツガムシ病

ダニの一種。ツツガムシが刺したことが原因の微熱だとしても、風邪の症状だと思い込み、風邪薬を飲む人は多いと言われます。風邪薬に抗生物質が入っていた当時は、気づかないうちに治ってしまうケースが多々ありました。しかし、近年、風邪薬から抗生物質が取り除かれるようになってからは、「ツツガムシ病」という病名で、全国的に発症例があります。河原や原野などで、草の上に腰を下ろしたときの被害が目立つため、野山に行く際は、事前に、防虫クリームをしっかり塗りましょう。靴や衣服にも塗り込んでおくと、さらに予防効果が高くなります。

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タランチュラ

脚を広げた全長は、15cmもある大きなクモ。ペットとして流通している種は毒性が低いと言われますが、直接手で触らないよう注意が必要です。世界的にはアメリカ南部からメキシコにかけて、またオーストラリアなどで被害が発生。日本には、ペットとして輸入されたもの以外に、旅行者が外国から所持したものや、輸入材などに潜んできたものもいると言われます。1959年から1973年までの間に、1700例を超す事故が発生しており、そのうち55人が死亡した例があります。死亡率にすると3%ほど。近年ではカンボジアにて、「タランチュラの唐揚げ」が大流行。毒のある牙を取り除き、油で揚げ、塩味などに仕上げたもの。1匹約2円で売られ、現地では高級なおやつだとか。

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サワガニ

サワガニは最大でも3cm程度の小さなカニ。山中の渓流や、小川など水がきれいなところに生息します。日本で唯一、淡水(塩分を含まない水)域のみで一生を過ごすカニです。河原の石の下などでよく見かけるかわいらしいカニですが、危険な点が! それは、「寄生虫」の存在です。触ったら、よく手を洗うことを心掛けましょう。また、カニはカニでも絶対に食べてはいけません。穏やかなカニなので、子供にとって親しみ深い生き物ですが、見えないところに菌は潜んでいるのです。

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