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日本語なのに理解できない! 料理用語
著者 久保田恵美

日本語なのに理解できない! 料理用語

潮汁(うしおじる)

海水のように塩味であることが名前の由来。かつおだしではなく、魚介からだしをとり、そのもち味を十分に生かした吸い物。仕上げに、酒、塩、好みでしょうゆなどを加え、あっさりと味をととのえる。用いる魚介は、主に鯛、鯛のあら、すずき、あさり、はまぐりなど。

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追い鰹(おいがつお)

かつおぶしでとった「かつおだし」に、さらに(追って)かつおぶしの旨味を加えるために行う手法のこと。かつおだしが煮立っているところに、ひとつかみ程度のかつおぶしを鍋に加え、しばらく煮た後、こす。また、煮物の場合、かつおぶしをキッチンペーパーやガーゼなどで包んだものを途中で加えるだけで「追い鰹」の効果がある。こす必要がなく、手軽なことがメリット。

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隠し包丁(かくしほうちょう)

器に盛りつける際に、裏面になる側(隠れる部分)に包丁で切り込みを入れること。火の通りをよくしたり、味をしみ込みやすくしたりするために行う下ごしらえ。「忍び包丁、隠し刃」ともいう。素材によるが、野菜や芋類の場合、厚みの1/3程度まで切り込みを入れる。隠し包丁をすると、食べるときに箸で切り分けやすく食べやすい。

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桂むき(かつらむき)

大根やうど、ニンジンなどを薄く長くむく手法のこと。大根に例をとると、6cmほどの輪切りにしたあと、丸みにそって包丁をゆっくり動かしながら、極力薄くむいていく。途中で切れることなく、かつ、紙のように薄く均一の厚みでむくことが重要なポイント。この手法は、料理人の腕の見せどころともいえる。名前の由来は、いくつかあるが「桂女(かつらめ)」説が有力。桂女とは、平安から室町時代、京都の町へ物を売りに来た女のこと。頭にかぶっていた白い布が、薄くむいた大根に見立てられたいわれである。また、他に「桂川(かつらがわ)」説もある。京都・嵐山の渡月橋(とげつきょう)を境に、上を大堰川(おおいがわ)、下を桂川という。その桂川の帯状になだらかに流れている姿が、大根などをむいたさまに似ていることも、由来のひとつ。

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観音開き(かんのんびらき)

鶏肉や魚の切り身などで、身が厚いものを均一に薄く切り開くこと。火の通りをよくしたいときや、中に他の素材をはさみたいときなどに用いる切り方。まず、素材の中央に縦に、厚みの半分程度包丁を入れる。次に、その切れ目から、左右外側に向かって刃を動かしながら、素材をそぐようにして切り開いていくことがポイント。「観音様」をおさめた堂の扉が左右に開くように、切り開くため、この名がついた。

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銀餡(ぎんあん)

透明感のあるとろりとした餡(あん)のこと。だし汁、酒、淡口(うすくち)しょうゆ、みりんを煮立たせ、水で溶いた片栗粉(または、くず粉)を加え、とろみをつける。調理した魚、鶏肉、豚肉、牛肉、野菜などを器に盛り、仕上げに銀餡をかける。料理に照りとだしの旨味が加わり、華やかな一品に。

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笹掻き(ささがき)

野菜を切る手法のひとつで、ゴボウやニンジンを鉛筆を削るように、細長くそぐこと。笹の葉のような形に掻く(削る)ことが名前の由来。包丁を寝かせて削れば、薄く、やや立てて削れば、厚めに切れる。笹掻いたゴボウは、切ったそばから酢水につけていくと、アクぬきになる。

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さしすせそ

味つけの際、調味料を加える基本の順序を示す言葉。「さ」は砂糖。「し」は塩。「す」は酢。「せ」はしょうゆ(せいゆ→しょうゆ)。「そ」は味噌(みその「そ」)。塩は素材を引き締める効果があるため、塩を先に入れた場合、砂糖の甘みが浸透しにくくなる。なので、砂糖→塩の順序は守ることが大切。酢、しょうゆ、味噌に関しては、香りが大切な調味料になるので、火にかけ過ぎないよう、後半に加える。あくまで「さしすせそ」は、基本の順序なので、料理によって例外はある。

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時雨煮(しぐれに)

魚、肉、貝類などにしょうがを加えて、しょうゆ、みりん、砂糖などでしっかりとした味に煮つめたもの。名前につく「時雨」とは、晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする雨のこと。この時期においしい食材として「はまぐり」と「しょうが」をしょうゆでからく煮たものを「時雨煮」と呼びはじめたことが名前の由来とか。他には、時雨が降るように、短時間でさっと煮あがるからという説もある。

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霜降りにする(しもふりにする)

魚、肉などを適当な大きさに切って、熱湯にくぐらせたり、熱湯をかけたりして表面を白くすること。表面を白い霧がかかった程度に仕上げるため、この名が生まれた。霜降りしたあとは、中まで火が通らないよう、すぐに氷水か冷水にとることがポイント。この手法は料理の下ごしたえとして使われ、素材の「ぬめり、臭み、余分な脂を取り除く・表面を固めて旨味を閉じこめる・身をしめる」などの効果がある。

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白髪ねぎ(しらがねぎ)

ごくごく細く切ったねぎのこと。「白髪」という言葉は、白髪になるまで長生きできるという意味から、おめでたい料理の名前につくことがある。白髪ねぎの場合は、ごく細く切った白いねぎを「白髪」に見立てたことが名前の由来とされている。ねぎの他に、大根やうどなども白髪にすることができる。ねぎを例にとると、白い部分を6cmほどに切り、縦に浅く刃を入れる。中心にある芯を取り除き、くるりと丸まった表部分を平らにのばす。左手でしっかり押さえながら、端から繊維にそって切っていく。すぐに冷水にさらすことで、パリッとした美しい仕上がりに。煮物などの天盛り(上部に飾る素材のこと)や薬味としてよく使われる。

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吸い口(すいくち)

汁物の味を引き立てるために用いる香りのある食材のこと。「口」という言葉が当てられている由来は不明。香りを使って、季節(旬)を表現する日本料理の大切なもてなし方である。春は木の芽、夏はみょうが、しそ、秋から冬にかけては柚子などがよく使われる。季節を問わないものは、ねぎやしょうが、ごま、七味とうがらしなど。

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千六本(せんろっぽん)

現在では約2mm(マッチ棒程度)に細く切ることをいうが、本来は「大根」を細く切ることを指した。その昔、中国の僧侶が、大根(中国語で「蘿蔔(ロウプ)」)の千切りのことを「繊蘿蔔(センロウプ)」と呼び、それが時を経て、「センロッポ→センロッポン」と発音に変化が生じ、「千六本」の漢字が当てられたという。

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大名卸し(だいみょうおろし)

魚の卸し方の名称。一般的に魚を卸すときは、背と腹に一度切れ目を入れてから、改めて刃を深く入れ、身を切り離す。しかし、この「大名卸し」は、頭のほうから刃を入れ、中骨にそって尾のほうへ包丁を引き、一気に身を切り離す手法である。この方法だと、骨に身がたくさん残る、つまり「ぜいたくなおろし方」という意味で、この名がついた。残った骨は十分おいしくいただけるので、あら煮や潮汁、骨焼き、素揚げなどにすることが多い。

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龍田揚げ(たつたあげ)

「竜田揚げ、立田揚げ」とも書く。魚や肉をしょうゆ、みりん、または砂糖などで下味をつけ、片栗粉をまぶし、油で揚げた料理のこと。奈良県にある紅葉の名所「龍田川」。在原業平(ありわらの なりひら)が詠んだ有名な歌「ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは」は、紅葉が川に散り、川面が紅色に染まる情景を詠んでいる。料理の名称は、揚げ物のしょうゆの色を龍田川の紅葉の色に重ねたことから生まれたとされる。

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立て塩(たてじお)

海水程度の塩水のこと。立て塩を作るときは、水1カップに対して、塩小さじ1/2〜1程度。用途によって、濃度は調整する。魚や貝を洗うときにも使われるが、料理の下ごしらえで「立て塩をする」という場合は、塩水に魚をつけて、塩分をほどよく浸透させることをいう。

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八方だし(はっぽうだし)

「四方八方(しほうはっぽう)」に使える万能なだしという意味から、この名がついた。八方とは、東西南北、北東、北西、南東、南西の8つの方角のこと。あらゆる方向に使える便利さが名前からよく伝わってくる。だし汁を煮立てて、しょうゆ、みりん、酒などで味をととのえたもので、だし汁:淡口(うすくち)しょうゆ:みりん=8:1:1の割合で合わせることが基本。ただし、調理法や作り手の好みによって、割合は様々である。煮物や汁物、そばつゆ、天だしなどによく使われ、「八方汁、八方地(はっぽうじ)」ともいう。

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真砂(まさご)

「真砂」の本来の意味は、「細かい砂」のこと。料理用語としては、できあがった料理が、ぼろぼろと「真砂」のように見える料理に名づけている。ごま、けしの実などをまぶしつけて、揚げたものを「真砂揚げ」、たらこや数の子などをほぐして素材と和えたものを「真砂和え」と呼ぶ。まぶしたり、和えたりする素材は、魚、肉、野菜など様々。

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奴(やっこ)

豆腐を約3cm角に切ったもの。徳川時代、武家の従者であった「奴(やっこ)」という者の紋(もん)が四角であったことが名前の由来。「冷ややっこ」「やっこ豆腐」などという名称で、よく使われる。

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幽庵焼き(ゆうあんやき)

しょうゆ、みりん、酒などを合わせたたれに、魚の切り身や鶏肉などを漬け込んでから焼いたもの。江戸時代、近江に住んでいた茶人・幽庵がこの料理法をはじめ、好評であったことから、この名がついたという。素焼きした素材に煮つめたたれを塗りながら焼く「照り焼き」とは違い、「幽庵焼き」は、あっさりとした味わいになるため、鱚(きす)や鱧(はも)などの白身魚に最適。

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