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上手にトラブルをたのしむ旅行用語
執筆者 松田朝子

上手にトラブルをたのしむ旅行用語

KB  Kick Back

キックバックの略。値段の安さに魅了されて格安パッケージツアーに参加すると、必ずと言っていいほど免税店とか、現地の特産品の店に連れて行かれる。これは、これらのお店が、自分のところに送客をしたガイドや旅行会社に、売り上げの一部を支払っているからで、この支払われたお金をKB、キックバックと言う。なかには給料よりこのKBの方が多いと言う現地ガイドも。現地に着くなり免税店に「監禁」されて、「これでお前はいくらKB貰っているんだ?」などとガイドに毒づく中年男性、「こんなところで買い物するなんて言ってないでしょう〜?」と、ブチ切れて新婚の夫をオロオロさせているハネムーナーが後を絶たないが、買い物を巡るトラブルを避けたい人は、安いツアーに飛びつかないようにしたい。

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FIT  Foreign Independent Travel

海外個人手配旅行。パッケージツアーと違って、航空券、ホテル、送迎、観光などの手配をすべて自分でする旅行のこと。インターネットの普及により、これも近年増加傾向だ。ただ、情報の収集などもすべて自分でしなければならないので、綿密な下調べをする必要がある。現地に着いてから、日本人のツアーのあとを付いて歩いて行くようでは、まだFITは辞めておいたほうが懸命だ。また、初めての土地に同行者を伴っていく場合は、お互いの試行錯誤が笑い飛ばせるようでないと、トラブルが絶えなくなってしまう。

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ロスバケ  Lost baggage

ロストバゲージ。空港でチェックインする際、航空会社へ預けたスーツケースなどの荷物が、到着後ターンテーブルから出て来なくて、「紛失扱い」となること。チェックイン時にもらったバゲージの半券をなくしてしまうと、航空会社に届け出てもなかなか見つからなくなるので気をつけたい。ロスバケはどんな航空会社でも起こりうることなので、たとえば自分の荷物は出てきたのに、同行者の荷物が出てこない、なんていう場合、「アンタのロスバケのせいで、貴重な時間が台無し」などと相手を責めないように。また、前の旅行の時のバゲージタグをつけたままにしておくと、ロスバケに遭いやすいので気をつけよう。

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インセンティブ  incentive

インセンティブ・ツアーのこと。業績を上げた優秀な営業マンを表彰したり、企業が消費者に向けて実施するキャンペーン旅行など、インセンティブのニーズは多様化して、近年増えつつある。だが、飛行機の中から宴会状態であったり、ホテルの廊下で大声を上げていたりとマナー面では修学旅行以下の場合も。時期によってはインセンティブの団体が海外の観光地に殺到しているときもあり、そんなときこそ集団の行動に気をつけたい。

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カラスフライト

修学旅行生が大勢乗り合わせているフライトのこと。あるいはビジネス客ばかり乗り合わせたフライトもそう呼ばれる。制服やスーツがみんな黒っぽいため、遠目にはカラスのように見えるからだ。修学旅行生の大群はちょっとした脅威でもあるが、そんなカラスたちを引率している先生はみんなピリピリ、イライラしている。大群の移動するところに響き渡る、「静かに!」も、もはや日本語でないかのように効き目を失っている状態だ。先生たちは機内持ち込み禁止の爆弾を心の内に抱えて、一触即発状態にちがいない。

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オーバーブッキング

航空会社は、キャンセル分などを考慮して、その飛行機の座席数以上に予約を受けているが、運悪く(?)予約を受けたすべての人がチェックインしてしまうと、過剰予約、すなわちオーバーブッキングとなってしまう。これは人の移動の多いゴールデンウィーク、お盆休みなどにありがち。混んでいそうな時期に予約を入れたならば、早めに空港に向かうことが大事である。もし、自分がオーバーブッキングに遭ってしまったら、一番大事なことは感情的にならないこと。どうしても翌日の会議に出席しなければならないとか、帰国後すぐ出社しないといけない、などと言っても通用しないので、ピーク時に旅行をする人はオーバーブッキングを想定したプランを練っておく。「こうなるから俺はこの時期に旅行したくなかったんだ!」などと同行者に八つ当たりするのは、もってのほかである。

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PAX/パックス

旅行をするお客様(passengers)のことを指す。旅行会社のことを指すAGT(エージェントの略)とともに、国際的にも旅行業界で使われている用語。ただしこれらはあくまでも業務処理上での言葉である。そして、R-PAXといえば、旅行中何かと問題を起こす旅乱な客のことを意味する。Rとは、remarksの略で、すなわち要注意人物ということ。もちろん、面と向かって使われることはないが、「旅の恥はかき捨て」とばかり傍若無人に振舞うと、陰でそんなレッテルを貼られてしまうので、気をつけよう。

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旅乱  RYORAN

普段はおとなしいのに、お酒を飲んだ途端に凶暴になる人を「酒乱」というが、日常ではいい人なのに旅に出た途端、同行者を困らせる人を「旅乱」(りょらん)という。旅先で、同行した配偶者、友人、恋人などの言動に「あれれ、こんな人だとは思わなかったぞ」と、感じた経験はないだろうか。見知らぬ土地に出掛けると、不安感から自己防衛本能が働き、普段よりエゴが出やすくなる。それを前面に押し出してしまう「旅先の困ったちゃん」が「旅乱」なのである。

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MCT  Minimum connecting time

航空機を乗り継ぐ場合、空港において最低でもこれだけはかかる、という時間のこと。出入国の手続きがあったり、荷物をピックアップして再度預けるというときは、「やれやれ、やっと地上に降りた」などとゆったり寛いで、MCTのことを忘れてしまったり、反対に旅の緊張のあまり、「MCTは2時間半しかないのよ! もう、何やっているのよっ! 早く乗り継ぎゲートに急いで!」と、同行者をいたずらに急かせてしまっては、早くもあなたには旅乱の汚名が。乗り継ぎのある場合、空港によっても異なるMCTの情報を事前にキャッチすることは、快適な旅とスムーズな人間関係の要でもある。

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イノップ/INOP  inoperation

主に航空関係、CA(キャビンアテンダント、客室乗務員のこと)で使われている用語。inoperation、つまり故障と言う意味の略。航空機には内線電話のあるあたりに、この「INOP」と書かれた警告灯があり、これはトイレのタンクが満杯で使えないというサインである。転じて、「使えない人」のこと。旅先で「イノップ」な人といったら、そのトイレにすら一人で行けない、同行者にとってはお荷物な存在であろう。

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オンスケ  on schedule

スケジュール通り、ということ。待ち合わせをしている者同士の会話。

「明日の集合時間は9時で変更はないですね?」「はい、すべてオンスケでお願いします」。

ところが旅行はいつもオンスケとは限らない。天候の急変や予期せぬアクシデントで、その都度に臨機応変の姿勢が求められる。そんなことは頭で分かっていても、実際に飛行機の離発着がオンスケに運ばなかったりすると、途端に感情むき出しとなって、「責任者を呼べ!」なんてカウンターを叩きながら怒鳴っている人も。オンスケにとらわれるあまり、楽しくあるべき旅でこんな醜態を晒さぬように。

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インボラ  Involuntary

意図しない、不本意な、という言葉の略。これは飛行機の搭乗の際、インボランタリーアップグレード(Involuntary Upgrade)、つまり追加料金を払わずに本来のクラスよりも上のクラスの席に案内されることを意味する。インボラアップとも言う。航空会社はチェックインの際、当初の予想よりも実際の乗客が多く、座席が不足しそうになると、乗客リストの中からその航空会社の上級会員、あるいは服装がきちんとしている人を選んでインボラアップグレードをさせる。エコノミーからビジネスクラス、あるいはビジネスからファーストクラスに無料で格上げをするので、航空会社にとっては不本意なことなのである。「外国に行くのに綺麗な格好をするなんて、金持ちだと思われて狙われちゃう」と、あえてラフな服装で旅行に出かける人には、まずインボラは狙えない。

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夜這い便

日本を夜に出発して現地に到着するのが次の日の早朝、あるいは帰国便が深夜に現地を発って日本着が早朝という、人が寝ている時間に離発着するフライトを指す。ギリギリまで仕事をして出発し、帰国するなりそのまま出社をすれば有休を使わずに近場の海外に行ける、というメリットもあるが、本当の夜這いをしたみたいに出発時、帰国時に「黄色い太陽」を感じるハメに。また体力のない人は旅行中に体調を崩したりして、同行者にも迷惑をかけることになりかねない。夜這いにはスタミナが肝心だ。

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レッド・アイ  Red eye

夜這い便と似ているが、これはアメリカの西海岸と東海岸の間を航行する夜行フライトのこと。アメリカ大陸の両端にある都市間の移動には、飛行機で約6時間。さらに、二つの都市の間には3時間の時差が。なのでこっそり夜這いをかけたつもりで、夜10時に西海岸を出発しても、東海岸に着くのはすでに日が昇ってしまった朝の7時。

自分の中ではまだ終わっていないはずの夜が、時差によって強制終了されてしまったため、夜這いをするにも眠るにも中途半端。それがレッド・アイ、「睡眠不足の赤い目」なのだ。充分な夜が欲しい恋人同士には、旅先のトラブルに繋がりそうでもある。

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お見合いシート

離発着時にCAたちが座る席、ジャンプシートと向きあう形になる座席のこと。でも、この席をリクエストするのに、「お見合いシートを!」と言ったら、下心が見え見えだ。「ジャンプシート前の席を・・・」と言えばいいのだが、これでも下心は読まれてしまう。なので、「エグジットロー」と言うのが無難だろう。エグジットローとは、ドアの横にある席のことだ。この席は旅客機にもよるが、たいがいはジャンプシート前にある。ただこの席に座る乗客には、非常の際の避難誘導の協力を求められる。また外国の航空会社でこの席をリクエストしようとすると、英語の語学力を問われる。また英語が理解できても、外国人に話しかけられると、うつむいてしまったり、自分に問われた英語なのに、同行者に変わって答えてもらおうとする旅乱な人も不適とされている。この座席をリクエストするのに適性テストを行う航空会社もあり、お見合いを成功させるハードルはそう低くないようだ。

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ノーショウ  No Show

フライトを予約している客が、その便の出発する空港に来ないことを言うが、こんな場合にも使われる。旅先で喧嘩をしたカップルが、事前予約を入れてあるのにもかかわらず、レストランの席に現れない。困った添乗員の独り言、

「うわ、あのカップル、ディナーの席をノーショウするつもりなのか……」。

出席表明をした人が当日、連絡もなく現れない場合、後日その費用を取られることもあるが、これは「ノーショウ・フィー」と呼ばれる。

反対にフライトの予約を入れていないのに、空席を当て込んで出発当日の空港にやってくることを「ゴーショウ」(Go Show)という。ローカルなレストランで一人、遅い夕食をとっていた添乗員の前の席に、いきなり一人の女性が。「彼とはもう一緒に居たくないの。この席、空いていたらゴーショウしてもいいかしら?」

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