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大人の総合学習「大型ハリケーン」
執筆者 畑江 嘉門

大人の総合学習「大型ハリケーン」

熱帯低気圧/台風  a tropical cyclone/a typhoon

熱帯海域に発生する低気圧(an area of low pressure)を熱帯低気圧といいます。熱帯低気圧は赤道付近の上昇気流がもとになって発生します。海水温が高いほど上昇気流が強まり、勢力を増します。また、上昇気流が激しいほど気圧は下がり、さらに上昇気流は加速されます。熱帯低気圧は、発生した場所によって呼び方が異なってきます。日本では、北西太平洋に発生し、域内の最大風速が17メートル以上の熱帯低気圧を「台風」と呼びます。

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ハリケーン/サイクロン  a hurricane/a cyclone

国際的には、域内の最大風速が33メートル以上で、東太平洋、大西洋に発生した熱帯低気圧をハリケーン、インド洋で発生したものをサイクロンと呼びます。域内の最大風速が17メートル以上、33メートル未満の熱帯低気圧をトロピカル・ストーム(Tropical Storm)、33メートル以上で北西太平洋にあるものタイフーンと呼んで区別します。

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カトリーナ  Katrina

米国のフロリダ、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマの各州などを2005年8月末に超大型ハリケーンが襲いました。避難者は100万人以上となり、死者・行方不明者の数は数千人を超えると見られています。被害は特にルイジアナ州ニューオーリンズ市が深刻。8月30日に市北部の堤防が決壊し、大量の湖水によって洪水を起こしました。ハリケーンの名前は、毎年発生順に、頭文字のスペルが「A」からアルファベット順に名付けられます。例えば今回の「Katrina」の頭文字は「K」。Aから始まるアルファベットでKは11番目。「カトリーナ」はつまりハリケーン11号だったということです。

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海水温

なぜ、ハリケーンは起こるのでしょう。台風やハリケーンが発達するには、海水温26〜27度が必要です。カトリーナが通過したメキシコ湾の水温は平年より1度高い30度もありました(気象庁海洋気象情報室データ)。たった1度でも、膨大な海水が蓄える熱量は大幅に増えます。大西洋の表面水温が例年より高く、05年の米国は猛暑の地域が多く、北米大陸周辺が熱い空気に覆われているため、ハリケーンが北上しても勢力が落ちなかったという指摘があります。

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高潮

高潮の発生もハリケーン被害を拡大させます。海面を押さえつけている気圧が1ヘクトパスカル下がると海面は1センチ上昇します。平均気圧は1013ヘクトパスカルで、ハリケーン「カトリーナ」の中心気圧は902ヘクトパスカルまで低下していましたので、平常時より約110センチも海面が上がっていたことになります。

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強風とカトリーナ

ハリケーン「カトリーナ」の最大瞬間風速は約80メートルで、この強風も被害を拡大させました。風の強さが2倍になると海面の上昇率は4倍になります。カトリーナの強風が海水を堤防に吹き寄せ、上昇した海水が、堤防を破って大半が海抜0メートル以下の低地に流れ込みました。

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高潮と津波

台風や低気圧の接近に伴う高波や高潮と津波はどう違うのでしょうか。高波や高潮は海面付近が風で吹き寄せられたり、低気圧に吸い上げられてうねっている状態です。数メートルの高さになる場合もありますが、盛り上がる波の幅は数メートルから数百メートルと狭い場合が多く、沿岸に押し寄せる水の量は限られています。これに対して津波は内陸の奥まで入り込んで被害を拡大させます。津波の波長が台風などによる高波などと比べてとてつもなく長く、エネルギーが大変大きいためです。

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津波の破壊力

高さが同じ波でも、津波と高波ではまったく別物といえます。津波ははるか沖合では数センチから数メートルの高さですが、海面が盛り上がっている範囲は大きなものでは数100キロに及びます。つまり、津波の巨大な水の塊が巨大な破壊力を生みます。高潮などとは波のもつエネルギーがまったく違うわけです。津波の特徴のひとつは、非常に速い速度で海を伝わることです。伝わり方のメカニズムは池に石を投げ込んだ際の波紋と同じですが、エネルギーのとてつもなく大きな津波は、遠くまで、速く伝わります。

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