月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
「自民党爆勝!」に納得できない貴方へ
執筆者 土屋彰久

「自民党爆勝!」に納得できない貴方へ

小選挙区制

名ばかりの「政治改革」の一環として、表向き掲げた目的とは全く逆に作用する小選挙区制が、並立型の比例代表制と合わせて採用されたのは、1996年の衆院選からです。小選挙区制というのは、定員1名の選挙区のことで、当然ながら当選者は一名のみで、他の候補者に投じられた票は、全て議席に反映されない死票となります。さらに、小選挙区制は、一回の投票で一位にさえなればよいという単純小選挙区制を基本として、一位の候補が過半数を制しない場合には決選投票が行われる複数回投票式小選挙区制、また、死票を減らすために第二希望、あるいは第三希望まで書ける連記式小選挙区制などのバリエーションがあります。

ページの先頭へ 戻る

日本型並立制

日本では、小選挙区と比例区に重複立候補が可能な、特異な小選挙区比例代表並立制を採っています。これは、現職議員の保身を目的とした制度で、大政党の所属議員の場合、選挙区で負けても、そこそこ善戦していれば比例区の復活当選で救われるというもので、結果として、そしてもちろん狙い通りの効果として、本来は一名しか当選できないはずの小選挙区を、大政党にとってのみ実質的に定数2名の疑似中選挙区に変える効果をもたらしています。これは当初、中選挙区制からの移行に抵抗する保守勢力内の反対派を安心させるための制度という色彩が強くありましたが、こうした「便利な使い方」が定着するに従い、一か八かの小選挙区制ならではの過酷さを緩和してくれるこの制度は、保身に汲々とする現職議員の皆さんの絶大な支持を集めるに至っています。蛍は水の甘さに敏感かもしれませんが、議員の皆さんはお湯のぬるさに敏感です。今回の自民党爆勝を陰で支えたのも、保身第一、寄らば大樹で自民党に残った、「隠れ守旧派」のぬるま湯系議員の皆さんです。でも、彼らを責めるのは間違いです。だって、保身こそ、日本人の第一の行動原理(保身回路)なんですから。

ページの先頭へ 戻る

保身回路

キカイダーを知らない人は、この項目は飛ばしてください。それでもいいという人のために、一応、説明もしましょう。古の特撮ヒーローの一人、「人造人間キカイダー」は、ロボットでありながら、イイ人になるように設計され、良心回路というのが組み込まれたのですが、これが不完全なために、悪役の親玉に怪しい笛を吹かれると、良心回路がおかしくなって、ワルイ人になりそうになってしまい、ブラウン管の前の子ども達をハラハラさせます。一方、日本人は、生まれながら持っている集団農耕型民族の遺伝的特質に輪をかけるように、保身の心を育む教育が、それそれは丁寧に行われるために、一人前になる頃には、誰もが高性能の保身回路を脳みその中に組み込まれるに至ります。あとは、個別のコミュニケーションでも、マス・コミュニケーションでも、相手の保身回路を巧妙に刺激することで、好きなように心理操作をすることが可能になります。「ほれほれ、郵政民営化に賛成しないと、お前は負け組だぞ。」「ヒィィー!やめてぇー!!負け組はいやー!!!」ムンクの『叫び』あたりは、保身回路を直撃された人の心象風景を、最も的確に表現できている気がします。でも、勝ち組のいいなりになれば、負け組を抜け出せると思いこんでるところが、正味バカですよね。

ページの先頭へ 戻る

死票

せーっかく投票したのに、まーったく議席配分に影響を与えられない、すなわち、ないも同じの票を死票と言います。日本の場合、わざわざ死票を多くするために、過半数を必要としない単純小選挙区制を採っているために、当選者が過半数の投票を得ることは少なく、多くの選挙区において、過半数が死票となります。なぜ、このような制度設計がなされたかというと、今回のような爆勝選挙ですら得票率が50%に満たない自民党(今回は、小選挙区で、47.8%、比例では38.2%)にとって、野党票が対立候補の下に糾合されてしまう決選投票制度は、一方的に不利な制度であるためです。

一方で、本来は死票をなくすことが重要な目的の一つで、死票はほとんど出ないはずの比例代表ですら、日本は選挙区を可能な限り小さくすることによって、実質的に中選挙区に近づけ、死票の発生を図っています。この比例区の細分化による間接攻撃のターゲットとされているのが、かつての勢力に比べて何分の一かに議席を減らした社民党、及び共産党です。両左翼小政党は、細分化&ドント式という、比例代表制という条件の下で可能な限りで、おそらくは最も小政党に過酷な制度の壁により、全国一区であれば獲得できるはずの議席まで、自民党と民主党の落選議員救済用議席に持って行かれています。

ページの先頭へ 戻る

ドント式

比例代表制の議席配分の方法で、最も大政党に有利とされる配分方式です。ただ、有利と言っても、所詮は最後の一議席がどこに行くか程度の話なので、全国一区では、大したメリットはありません。そこで、このドント式のうまみを最大限に引き出すために、「最後の一議席」を少しでも増やすべく、比例代表にも選挙区を設けて細分化を図ったわけです。日本の選挙制度を見ていると、ほんと、「一見、中立な制度を、いかに不公平に運用できるか」の技能オリンピックを見ている気がします。もちろん、優勝者に限らず、優秀者には金(かね)メダルが大量にプレゼントされます。「勝ち組」ってのは、こーゆー人達のことを言うんですよ。

ページの先頭へ 戻る

スイング・ボーター

広い意味では、いわゆる浮動層と重なりますが、狭い意味では、二大政党制の下で、いずれの政党の固定的支持層でもないが、投票には行く層となります。二大政党制の下では、いずれの政党もある程度の固定的支持基盤を持ち、その上にスイング・ボーターの票を上積みして政権の獲得を図るという構図になります。固定的支持層は、支持政党の政策に不満がある場合、反対党に投票するよりも棄権することが多く、その場合、マイナス1の効果を支持政党の与えるにすぎませんが、スイング・ボーターは、前回投票した党に不満があれば、今度は反対党に入れることが多いので、前回の党にしてみれば、マイナス2の効果を発生させることになります。そのために、イデオロギー的、あるいは利権的など、様々な紐帯の希薄なスイング・ボーターが増えると、獲得議席の変動幅が大きくなり、小選挙区制の特徴に加速される形で、議席の増減において劇的な変化が起きやすくなります。民主党の場合、社民党の支持層から離れて難民化した革新不満層を追い込む、あるいは、自民党の利権配分から漏れた、都市保守層を中心とした保守不満層を囲い込む形で、一時的、ないし暫定的な支持基盤として大量のスイング・ボーターを抱え込むことで、党勢の拡大を図ってきました。しかし、そもそも「しがらみのなさ」を強調する政党としての民主党の性格上、スイング・ボーターを固定的支持層に転換しうるだけの紐帯を持ち得なかったために、風向き次第でいつでも自民党に乗り換えるという可能性はどこまでも残り、今回の選挙ではそれが現実のものとなったわけです。でも、社共の周辺的支持層をはぎ取って、スイング・ボーターの左の端にくっつけるという、「民主党プロジェクト」本来の目的は果たせたわけですから、スポンサーからはお褒めの言葉を頂いてもいいですよね。

ページの先頭へ 戻る

スイング現象

有権者全体の5%程度が動いただけでも、議席が前回の倍以上になったり、はたまた数分の一にまでなったりと、二大政党の間で議席の配分が、実際の得票率の比率以上に大きく動く現象をスイング現象と言います。スイング現象は、小選挙区制に特有の現象ですが、その中でも単純小選挙区制において、最も強く現れます。それは、単純小選挙区制が過半数に満たない比較一位で当選が可能で、さらに一発勝負のために有権者が再考の機会を与えられず、時々の政治的な風向きによって選挙結果が左右されやすいためです。今までは、民主党に有利なスイング状態が、強弱はありながらも続くことで、実力以上に自民党と民主党の差を縮めていたために、表面化することはありませんでしたが、今回、強烈なスイングを自民党側に見せたために、自民党は小選挙区での得票率がギリギリ過半数に届かない程度であったにもかかわらず、底上げ効果を失った民主党との差を広げ、70%を超える議席率となりました。このスイング現象は、当然ながら、小選挙区制の制度的要因により影響力が倍加するスイング・ボーターの割合が大きければ大きいほど発生しやすく、また、スイングの振幅も大きくなります。そして、この現象をうまく誘導して活用できれば、合法的、かつ「民主的」に、独裁体制の確立が可能です。政治学、その中でも政治制度論の専門家として言わせてもらいますと、この通り、小選挙区制と民主制は原理的に相容れるものではありません。ですから、通常はいずれか一方が残り、もう一方は形骸化するか廃止されることになります。日本の場合、最初から民主制が形骸化していたために、その実態に合わせて、小選挙区制が導入されたというのが実情です。

ページの先頭へ 戻る

地滑り的勝利

今までも、小規模なものは見られましたが、今回の自民党の勝利は、本格的な「地滑り的勝利」と言ってよいでしょう。この用語、そもそもはアメリカ、それも大統領選でよく使われる表現であるランドスライド(landslide)を直訳したもので、小選挙区制的な勝者総取り方式による(ごく一部の州は、例外的に別の方式を採っている)アメリカの大統領選挙でよく発生する一方的な勝利を表現したものです。ランドスライドは、通常は極端なスイングの結果として現れますが、同時に固定的支持層の離反を伴っていることもよくあります。今回の選挙について言うと、民主党は元々、固定的支持基盤は軟弱で、無風状態の得票力バランスでは、せいぜい民主150:自民250:公明30ぐらいですから、風が吹けば、50程度は軽く自民党に飛んでいっておかしくないのに対して、支持基盤の強固な自民党は、風が吹いても、飛ばされるのはやはり50程度という状況でして、地力の差が150対250のところで、50の振り子が振れるわけですから、自民党への風が吹いた時の方が、数字としては派手な出方をすることになり、いかにも地滑り的な勝利のように見えたということです。でも、こうした地力の差も考えずに、がっちりタッグを組んだ地力指数280の自公連合に対して、同じ野党の社共とは足を引っ張り合いながら(社民党とは、一部で連携もしていますが)、地力指数150で一人立ち向かおうというのですから、計算力、判断力のいずれか、もしくはその両方が正常とは思えませんよね。もし、どちらも正常だというなら、真の目的は別の所にあるということです。自民党が爆勝した今回の選挙でさえ、得票率では野党が与党を上回っているんです。誰にでもできる、簡単な足し算引き算です。このことをお忘れなきよう。

ページの先頭へ 戻る

絶対安定多数

よく、選挙での勝利の目安として、過半数、安定多数、絶対安定多数なんてランク付けがされます。過半数は、誰にでもわかりますね。ちなみに、一人多いだけで、議長を出す野党と同数になるような場合でも、法案裁決において可否同数の場合、議長の決するところとなるので、過半数を制しているという状況に根本的な変化は生じません。同じことを、各常任委員会においても当てはめたのが、全常任委員会において委員長を出しても、半数割れとなる委員会が出ないというのが安定多数で、さらにどの委員会でも、過半数まで取れるというのが、その上の絶対安定多数となっています。

ページの先頭へ 戻る

加重多数

理論上は、絶対安定多数の上のランクとしてありましたが、現実味が薄いもので、言及されることがなかったのが、憲法上の加重多数要件である「全議員の3分の2」という、幻の隠しキャラです。今回は、小選挙区インチキ、公明タッグ、小泉マジックと裏技を駆使して、小泉自民党は東京ではなんと、予定の候補者より比例区での得票が多くなるという「ムダ勝ち」のオマケまでつく爆勝ぶりで、とうとう、自公の連立与党はこの加重多数という隠しキャラまでクリアしてしまったんですね。厳密にいうと、憲法上は「全議員の3分の2」と、「出席議員の3分の2」に分かれていますが、実質的には同じと言ってよいでしょう。さて、この加重多数を確保すると何ができるのかというと、まず、憲法改正の発議ができます。考えてみれば、憲法改正は自民党の党是ですよね。ただ、自民党単独では届きませんし、憲法改正には参議院での同様の発議も必要となるので、まだまだ象徴的な意味しかありません。それよりも実質的なメリットは、参議院で法案が否決された場合に、衆議院で加重多数により再可決されれば、それで成立するという「オーバーライド」の方にあります。つまり、極端な話、参議院の意向などまったく勘定に入れず、好きなように法律が作れるというわけです。

ページの先頭へ 戻る

オーバーライド  override

日本では、行われた例がなく、専門用語すら当てられていないので、研究者はアメリカから借りてきた「オーバーライド(乗り越える)」を使うことが多いです。もちろん、日本語で表現することは可能で、「加重多数による再可決」なんて表現になります。アメリカの場合、議会を通過した法案に対して、大統領が拒否権を持っており、その拒否権の行使を乗り越えて法案を成立させるためには、上下院、それぞれで3分の2の加重多数による再可決が必要となっています。これが、オーバーライドという手続きです。経済のグローバリズムの次は政治のグローバリズムと言うことで、ランドスライド(地滑り的勝利)に引き続いて、オーバーライドも輸入されることになりますかね。

ページの先頭へ 戻る

無投票層

意外と知られていないことなんですが、日本で最大の勢力を誇るのが無党派層ならぬ無投票層です。今回は、自民党の爆勝で、自民党支持が最大勢力ギリギリのところまで行きましたが、小選挙区と比例区の票を公明党とバーターした結果、比例区の得票率は30%台にとどまり、トータルではやはり、無投票層が最大勢力となりました。ちなみに、無投票は投票行動の一種で、議席配分に対しては機械的加算効果を持っています。これは、選挙結果の議席配分通りに投票したのに等しいことを意味し、今回の場合、自民党には約60%、一方で共産党にも約2%、といった感じで投票したということになります。なぜこうなるかというと、日本というか、どこの国でも、投票率に合わせて定員を減らすというシステムを採用していないために、投票に行った人々の投票結果で、投票に行かなかった人の分まで議席配分が決まるためです。だから、自民党政権に不満が有って投票に行かなくても、それだけで自民党に0.6票も入れたことになってしまうんですね。いずれにせよ、無投票は絶対的な現状肯定の一票として扱われるので、現状に不満のある人が投票に行かないのは、心情とは矛盾した行動となります。

ページの先頭へ 戻る

無党派層

毎度毎度、主役としてもてはやされる無党派層ですが、その中身は時代によって変化してきています。元々の無党派層のルーツは、社会党と共産党の対立に嫌気が差して、いずれの支持層からも離脱した革新不満層にあります。その後、社会党の退潮につれて難民化した旧社会党支持層が流れ込むことで、革新不満層を中心とした無党派層の規模拡大が進みました。マドンナブームや連合ブームなど、社会党が一時的に息を吹き返したのは、この層が戻ってきたためでした。しかし、自社さ政権、自衛隊容認に象徴される社会党の右旋回で、この層は再び離反した上に、それまでの支持層まで大量に離反し、一部は共産党の暫定的支持層に加わり、残りは新規難民として無党派層に流入し、社会党は党勢の大幅な後退と分裂を余儀なくされるに至りました。また、バブルの崩壊以後、泥船と化した日本経済の中で、勝ち組連合を形成していた保守勢力の中でさえ、椅子取りゲームが激しくなり、そこからはじき出された、都市保守層を中心とする人々が、今度は保守不満層として大挙して無党派層に流れ込むに至ります。この間、そもそも人口比において少数派であった革新勢力は、「一億総中流化(幻想ですが)」やバブル景気を経て減少する一方、バブル崩壊で叩き起こされながらも、中流の白昼夢にすがる貧困保守層が着実に増えて行ったために、むしろ保守不満層が無党派層において多数派となる逆転現象が発生し、定着するに至りました。こうしてできあがった保守色の強い無党派層が、二大保守政党の自民党と民主党の間を行ったり来たりすることで、革新小政党を蚊帳の外に置いた、両党間でのスイング現象をもたらしているわけです。

ページの先頭へ 戻る

空中戦

固定支持層のように、後援会組織や圧力団体などを通じたリアルな利権でつながった人々ではなく、直接的な利権上の結びつきを持たない無党派層の影響力が増加してくると、この層を狙った独自の選挙戦略が有効となってきます。その典型が、パフォーマンスやメディア露出、さらにはメディアによるチョウチン報道などよるイメージ戦略で、こうした戦略に特化した選挙戦が空中戦と呼ばれます。今回は、「刺客」、「くの一」の登場など、空中戦の割合が特に高く、メディアによる連日の小泉「構造改革」の好意的解説でもわかるように、制空権をがっちりキープした小泉自民党が、目論み通り、自民党と公明との旧来の組織票の上に、無党派層の票を巧妙に上乗せして爆勝するに至りました。民主党も、元々、無党派層頼みの政党ですから、制空権を奪われてはいても空中戦に応じる他はなく、毎日のベタベタな新聞の寸行広告などヨレヨレの反撃に終始した結果、失笑ものの爆敗を演ずる結果となりました。今後も、利権サークルの縮小によって、無党派層は拡大こそすれ、縮小することはないでしょうから、選挙戦略の中心も空中戦に移って行くものと思われます。民主党がこの戦争を制する機会があるとすれば、一足先にその上の宇宙戦争を仕掛けて先制した場合でしょう。

ページの先頭へ 戻る

宇宙戦争

一般的な政治分析上の用語として公認されいるわけではありませんので、私の勝手な造語ということで理解してください。宇宙戦争というのは、通常の選挙戦(空中戦)の「大気圏外」からのベリー・ベリー・サプラ〜イズな攻撃の意味で言っています。今回の選挙で言えば、民主党がイラクのゲリラに頼み込んで、投票日の2、3日前くらいに、サマワの自衛隊を全滅させてもらえば、民主党の方が300議席も夢じゃなかったでしょうね。不謹慎なー、と言われるかもしれませんが、実際、スペインの選挙では、同時多発列車爆破テロがそのような効果をもたらしましたし、イスラエルでは、とっくの昔から選挙戦略の一環としてテロが活用されています。ブッシュ大統領だって、個人的には同時多発テロでボロ儲けしています。実は、世界では国によっては、もう宇宙戦争の時代に突入しているんです。でも、今までの経験から言って、民主党って、基本的にトンマでマヌケでノロマですから、おそらく宇宙戦争も自民党に先を越されるんでしょうね。

ページの先頭へ 戻る

ドブ板選挙

空中戦に対して、地道に支持を集めて歩く地上戦の典型が、いわゆるドブ板選挙です。ドブ板とは、都会の路地裏のドブ板のことで、「ドブ板を踏む」とは、そのような所までくまなく回って有権者と会い、直接、支持を訴えて歩く選挙運動のスタイルを表した表現です。ちなみに、ドブ板選挙の基本は握手ですが、これは表向きでして、本当のドブ板選挙では、握手の手に札が握り込まれています。日本では、買収はもちろん、戸別訪問も禁止されているので、実質的な「買収のための戸別訪問」をするにも、それなりの体裁を整えなければならないわけです。その意味では、ドブ板には「ドブ板まで=敷居はまたがない」という逆説的な意味合いもあります。もちろん、後援会を訪ねるという名目であれば、敷居など関係ないんですけどね。ちなみに、おなじみ「怪文書」などの紙爆弾が飛び交う中傷合戦も、空中戦ではなく、ドブ板選挙のダークサイドの話です。紙爆弾は、基本的に地上発射型なので、迫撃砲、あるいは空中戦への対抗で発射されれば高射砲ということになりますね。今回の選挙で言えば、「くの一」の一人、佐藤ゆかり候補(現、議員:比例区)への「不倫メール500通報道」あたりが、この高射砲攻撃の典型になると言ってよいでしょう。この高射砲攻撃、なかなかの戦果を挙げたのか、対立候補の野田聖子候補(現、議員:小選挙区)、逆風にもめげず辛うじて勝利を収め、議席を死守することができました。

ページの先頭へ 戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS