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運輸交通と事故に関する数値と単位
著者 白鳥 敬

運輸交通と事故に関する数値と単位

ハインリッヒの法則

1:29:300。この数字は、いまや多くの方がご存知でしょう。このところ連続する交通関係の事故が報道されるたびにしばしば取り上げられてきた「ハインリッヒの法則(Heinrich's Theory)」です。一つの大事故に至るまでに、29の小さな事故があり、その背後に事故にならなかったヒヤリ・ハットの状態が300あるというものです。これはアメリカのハインリッヒ(H.W.Heinrich)が、保険業務のために労働災害がおこる確率を統計的に分析して編み出した法則で、1931年に「ハインリッヒのピラミッド理論」として発表され、1941年に著した『Industrial Accident Prevention, A Scientific Approach』で詳しく解説しています。

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バードの法則

1:10:30:600。この数字は1969年に、バード(F.E. Bird Jnr.)が、アメリカの保険会社約300社の170万件以上の事例を分析した結果です。1つの大けがの背後に、10の軽傷事故、20の怪我はしないが器物の損壊事故、600の事故寸前の出来事があるということです。やはり、戦前に編み出されたハインリヒの法則に近い数字が出ています。

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致命的生涯事故の背景

1:3:50:80:400。これは1974年、TyeとPearsonが、イギリスの製造業関連企業で発生したおよそ100万件の事故を分析した結果導き出した比率です。1つの致命的な傷害事故の前に、3つの小さな傷害事故があり、その前に50の救急処置が必要な事故があり、その前に、80の器物損壊事故があり、その前に400の事故には至らなかったが事故寸前の事故があるということを表しています。

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アメリカ太平洋空軍の事故報告数

60:1739。少し古い資料ですが、1973年に発表されたアメリカ空軍大学のレビュー「Mishap Analysis An improve Approach to Aiecraft Accident Prevention」(デイビット.L.ニコルズ大佐)によると、アメリカ太平洋空軍は、1970年に60件の重大事故と1739件の小事故の報告を受けたそうです。この数は、ちょうどハインリッヒの法則の1:29に対応しています。

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交通事故死亡者数

交通機関の事故といえば、身近でかつ代表的なものが交通事故でしょう。2004(平成16)年の交通事故による死者数は警察庁によると7358人。1996年に1万人を割り込んでから年々、減少しています。交通事故による死亡者数は、事故後24時間以内に死亡した者の数ですが、国際的には、事故後30日以内に死亡した者の数を交通事故死亡者数としています。日本でも、93年から30日以内死亡者数をカウントするようになりました。それによると、03年の24時間死亡者数7702人に対して、30日以内死亡者数は約1.15倍の8877人。人口10万人あたりの交通事故死亡者数は7.9人で世界第7位。1位はトルコの5.6人。2位はイギリスの6.1人。3位はノルウェーで同じく6.1人。

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全国交通量ランキング

10万7500台。これは平日の昼間12時間で、もっとも交通量が多い道路の交通量です。1分間に約150台という凄まじい交通量です。これは、どこだと思いますか。東京? 大阪? いえ、違います。国道8号線の新潟市神道寺付近です。ここが全国交通量ランキングの第1位です。2位は、横浜市旭区桐ケ作1492付近の国道16号で10万4590台。3位が大阪市中央区船場中央2丁目の阪神高速道路の高速大阪東大阪線の10万261台です(国土交通省「道路交通センサス、平成11年度」より)。

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都道府県別交通事故死亡者数

2004(平成16)年の交通事故死亡者数は全国で7358人。これを県別に見ると、1位の北海道が387人、2位は愛知県で368人、3位は千葉県の332人、4位は大阪府の313人。前項でみたように交通量の多い道路があるかどうかと交通事故死亡者数はとくに相関関係はないようですね。

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旅行速度

全国の道路の旅行速度の平均は時速35kmです。旅行速度とは、区間の総延長を走行に要した時間で割った平均速度のこと。50kmの区間を2時間で走れば、旅行速度は、時速25kmとなります。1999(平成11)年度の、平均旅行速度は時速35kmですが、道路別に見ると、高速道路では、時速80.4km、一般国道では時速36.7km、一般都道府県道では時速33.0km。高速道路は意外と速い気がしますが、一般道では、慢性的な渋滞があることがわかります。ゆっくり走れば交通事故が減っていいのですが、渋滞はかえってイライラが増しますから、それが事故原因に、ということもあるかもしれません。

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航空事故死亡者

先に述べたように、交通事故死亡者は国際的には事故後30日以内の死亡者をカウントしていますが、航空事故も同じです。ICAO(国際民間航空機関)の国際民間航空条約第13付属書には、航空事故による死亡者は事故後30日以内に死亡したものと定義されています。また重症の定義は、「負傷した日から7日以内に48時間を超える入院加療を必要とするもの」とされています。

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フライトレベル(FL)

飛行機の高度は気圧高度計という計器で表示します。2005年6月5日、長崎から羽田に向かっていた旅客機が外部の気圧を気圧高度計に導く配管の故障により、気圧高度計が示している高度(8800m)より約1600mも高い高度(1万400m)を飛び続けるという重大インシデント(事故直前の状況)が発生しました。パイロットは、故障している高度計で管制官から指示された高度に合わせたため、管制のレーダーには管制官が指示した高度が表示され、管制官も異常に気がつきませんでした。航空機の巡航高度は、航空法によって決められています。計器飛行方式で飛ぶ航空機は、000度から179度(磁方位)で飛ぶ場合は、FL290、FL330、FL370・・・、180度から359度で飛ぶ場合は、FL310、FL350、FL390・・・と2000フィートの上下間隔をあけて飛ぶことになっています。FLはフライトレベルの略で、290は2万9000フィート(約8800m)を表します。同機が実際に飛んでいた高度は、1万400m。フライトレベルにするとFL340。この高度は、有視界飛行方式で飛ぶ東行きの航空機が飛ぶ高度です。

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