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インド洋大津波をめぐる数値のお話
著者 白鳥 敬

インド洋大津波をめぐる数値

地震のエネルギー

2004年12月26日、インドネシアスマトラ島沖で大地震がおこり、その地震が史上希に見る大津波を引き起こして、インド洋沿岸諸国で約30万人という犠牲者を出しました。この地震の規模はモーメントマグニチュード9.0でした。

logE=4.8+1.5Mという公式で地震が持つエネルギー(単位:ジュール、記号:J)を求めることができます。Mは、モーメントマグニチュード(記号Mw)です。

この公式を使って、スマトラ沖地震のエネルギーを計算すると、約199京5262兆ジュール。1996年の神戸の地震は、モーメントマグニチュード6.9で、1412兆5375ジュールですから、スマトラ沖地震は、神戸の地震の約1412倍もの巨大なエネルギーを持っていたことがわかります。

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歴代の大地震

津波による大きな被害をもたらしたスマトラ沖地震ですが、20世紀以降これまでにおこった地震を調べてみると、もっと大きな地震がおこっています。最も大きな地震は、1960年5月22日の「チリ地震」でモーメントマグニチュード9.5、2番が64年3月27日の「アラスカ地震」でモーメントマグニチュード9.2、3番が57年3月9日の「アリューシャン諸島地震」で、モーメントマグニチュード9.1、4番が、52年11月4日の「カムチャッカ地震」でモーメントマグニチュード9.0でした。

今回のスマトラ沖地震のモーメントマグニチュード9.0ですから、4位タイということになります。

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歴代の地震犠牲者数

インド洋大津波の被害者数は、まだ正確な数字はわかりませんが、2005年1月26日の時点で、死者行方不明者が約29万7000人と報道されています。30万人を超える可能性があります。

20世紀以降、地震と津波による死亡者・行方不明者数がいちばん多いのは、1923年9月1日の「関東大震災」で約14万3000人。2番が、1908年12月28日の「メッシーナ地震(イタリア)」で約8万2000人、3番が70年5月31日の「ペルビアン地震(ペルー)」で約6万7000人、4番が35年5月30日の「クエッタ地震(パキスタン)」の約6万人です。以上は、「理科年表」がソースです。なお、地震による死者と津波による死者は区別されていませんし、資料によっては異なる数字になっています。

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歴代の大津波

インド洋大津波では、スマトラ島北端のバンダアチェというところで、津波の高さが34.9mにまで達していたそうです。(読売新聞2005年1月28日付け)まだまだこれからも調査が続けられますから、この数値は更新されるかもしれません。

これまでどれくらいの大きさの津波が日本を襲ったことがあるのかを調べてみると、1896年6月15日の「明治三陸沖地震津波」では最大38.2m、同じ場所で1933年3月3日におこった「三陸地震津波」では28.7mだったそうです。また、まだ記憶に新しい1993年7月12日の「平成5年北海道南西沖地震」では奥尻島の西岸で29mの津波が観測されています。 

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巨大震源域

アメリカ地質調査所(USGS)のでデータによると、スマトラ沖地震の本震と余震をあわせた震源域は、幅約300km、長さ約1300kmという宏大な範囲で面積にすると39万m2。この大きさは、日本列島の本州の大きさに匹敵します。

これだけの範囲で、海底の地盤が動いたのですから、津波が大きかったのも直感的にも納得できますね。

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津波の速度

インド洋を走った津波の速さは、時速700kmくらいでした。これは、地震が発生した時刻と各国の海岸に津波が到達した時刻から簡単に計算で求めることができます。

津波の速さは、水深の深さに関係があります。深いほど津波の速さは速くなります。津波の速さ(v)は次の式で求めることができます。gは重力加速度(9.8m/s2)、dは深さです。

v(m/s)=√g x d(m)

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津波の限界速度

インド洋の平均水深は、3897m。これを前項の式に当てはめて計算すると、195.4m/sとなります。これを時速に換算すると、703.44km/hになります。

この式で、水深を1万mにして計算すると、津波の速さは音速に近くなります。ただ、1万m以上の水深があるのは、マリアナ海溝などごく一部だけですから、津波の速さが音速を超えることはないでしょう。

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自転速度の上昇

アメリカ・NASAのゴダード宇宙センターのベンジャミン・フォン・チャオ博士と同ジェット推進研究所のリチャード・グロス博士は、2004年1月20日、スマトラ沖巨大地震によって地球の自転の速さが2.68マイクロ秒速くなったと発表しました。マイクロ秒は、1秒の100万分の1。

地震が地球の形に与えた効果を計算した結果、地球の扁平さが100億分の1ほど減少していることがわかったのです。その結果、自転速度がわずかに速くなっているのだそうです。

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極点の移動

ベンジャミン・フォン・チャオ博士とリチャード・グロス博士(ともにNASA)は、極の運動の変化を計算で調べたところ、平均北極点の位置が、グアム島がある東経145度の方向に約1インチ(約2.5cm)移動していたそうです。北極点の移動も自転時間の変化も、極めて微量で人間の生活にはまったく影響を与えるものではありませんが、地球の形や動きさえも変えるマグニチュード9という巨大地震の恐ろしさを思い知らされます。

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地震振動の周期

スマトラ沖大地震によって、地球がぶるぶるっと震えたようです。国立天文台水沢緯度観測所が超硬感度重力計を使って、岩手県江刺市とオーストラリア・キャンベラのストロムロ山の二か所で観測してデータを解析した結果、振動の周期は20分。地震から16日後の1月11日でも、まだ約0.03mmの大きさで揺れが続いているのだそうです。

もちろん、人間が感じることができる揺れではありませんが、地球って意外と脆いんだな、と思いました。

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