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地震に関する単位と数値のお話
著者 白鳥 敬

地震に関する単位と数値

震度/マグニチュード(M)

まずは、復習です。震度のマグニチュードの違いは?

震度は、地震の揺れの大きさを表すもので、計測震度計によって測ります。震度は、気象庁震度階級によって、0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10段階に分けられています。5と6が弱と強に分けられたのは、1996(平成8)年10月からです。

マグニチュード(記号はM)は、地震のエネルギーの大きさを示すもの。値が1大きくなると、エネルギーの大きさは、約30倍になります。マグニチュードが大きくても、震源から離れるに従って震度は小さくなります。

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観測史上最大の震度

日本の観測史上最大の震度である「震度7」が観測されたのは、1995(平成7)年1月17日の阪神淡路大震災についで、新潟県中越地震が2度目になります。震度は、96年4月以前は、気象庁や測候所の担当者が揺れの様子を見、体感で決めていましたが、同年4月以降は、地震計(計測震度計)によって測定されています。

気象庁震度階級に、揺れの目安が書いてあり、以前は、この目安に基づいて震度を決めていましたが、現在は、逆に、震度いくつはこれくらいの揺れ、というふうに読むことができます。ちなみに、震度7は「揺れに翻弄され自分の意志で動けない。ほとんどの家具は移動し飛ぶものもある。[以下略]」となっています。

新潟県中越地震は、まさに、この通りの状況だったようです。

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気象庁マグニチュード(M)/モーメントマグニチュード(Mw)

マグニチュードは地震のエネルギーの大きさを示す単位ですが、実は、何種類ものマグニチュードがあります。最初にマグニチュードという数値を決めたのは、アメリカの地震学者C.F.リヒターで、1935年のことです。その後、より正確にマグニチュードを出すため、「表面波マグニチュード」、「実体波マグニチュード」などがつくられました。日本で使われているのは、「気象庁マグニチュード」で、表面波マグニチュードに修正を加えたもの。地震の揺れの大きさと震央までの距離を、決められた方程式にあてはめて算出しています。

最近は、大きな地震のエネルギーを正確に表すことができる「モーメントマグニチュード」も用いられるようになってきました。これは、震源となった断層の、面積・動いた距離・岩盤の性質などのデータを使って算出します。特にM8.5以上の大地震のマグニチュードをより正確に表すことができます。

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ガル(Gal)

ガルという単位は、このたびの新潟県中越地震の報道で初めて目にした人も多いのではないでしょうか。ガル(Gal)は、加速度の単位で、ガリレオ・ガリレイにちなんで名づけられた単位です。SI(国際単位系)にはない単位ですが、地球物理学の分野で使われています。1GalはSI単位で表すと、1cm/s2となります。数字はそのままですから換算はとくに必要なしです。

今度の地震では、1500Galを上回る加速度を記録しました。加速度とは、1秒ごとにどれだけ速度が上がっていくかということで、地球上の重力加速度(重力の大きさ)は、980cm/s2(980Gal)ですから、今度の地震では、重力を超える力が地表の物件に加わったということになります。実際、震源のごく近くでは、墓石やピアノなどが、数メートルもふっ飛ばされています。

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カイン(kine)

新潟中越地震の報道では、「カイン」という単位が、ちょっと登場しました。こちらも、なじみのない単位ですね。

これは、地震の揺れの速さを表す単位で、1kine=1cm/sです。カインもSIにはない単位で、しかも、cm/sと置き換えても同じなので、cm/sを使えばいいと思うのですが、地震科学の「業界」では、しばしば使われる単位のようです。

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重力加速度

ガルのところで重力加速度の話をしました。重力加速度は、地球の地表の上では重力と同じです。その値は、980cm/s2。読み方は、「きゅうひゃくはちじゅう・せんちめーとる・毎秒・毎秒」。1秒あたり980cm毎秒の速度で速くなっていくという意味です。

月へ行くと、月の重力は地球の6分の1なので、地球の6分の1の加速度で落下します。だから、物体は地球上よりゆっくり落下します。

地球上でも、重力加速度の値は、各地でわずかずつ異なっています。地球の中心からの距離、地質の密度、自転による遠心力などによって違ってくるのです。

たとえば、日本の最北端稚内では980.6426cm/s2、東京羽田では979.75962cm/s2、那覇では979.09592cm/s2となっています。なお国際度量衡総会の定義で決められた標準の値は、980.665cm/s2です。

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地震波周期

地震の揺れは、地震計で測ります。昔は、記録紙にインクで波形を直接記録していましたが、現在は、加速度センサーを使って電子的に記録しています。1995(平成7)年の神戸の地震と2004年10月の新潟の地震の地震波を比較してみると、神戸の地震は、1秒から2秒くらいの周期の揺れでした。それに対して新潟の地震は、0.3秒くらいの周期の速く揺れる波でした。

この揺れの周期と建築物が持つ固有の周期が合致すると建物は激しく揺れます。神戸のように1秒から2秒の周期の揺れでは、木造家屋が激しく揺れ、新潟のような0.3秒くらいの周期では、墓石くらいの大きさのものが激しく揺れるそうです。実際、神戸では、木造家屋の被害が大きかったのです。

高層建築は6秒くらいの周期が危ないといいます。大都市でおこるゆっくりとした揺れを伴う地震には要注意ですね。

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活断層/隠れ活断層

新潟県中越地震は、小千谷市付近の地下の活断層が動いたことが原因でした。神戸の地震と同じく、典型的な内陸型の地震であったわけです。大きな被害を出した神戸の大地震以来、日本中の活断層の情報がまとめられ、そのうち98個の活断層が、地震をおこすかもしれない活断層として注意が促されています。

ここでいう活断層には定義があって、「200万年前から現在までの間に活動を繰り返してきた活断層で、今後も活動する可能性が高い断層」のことです。

しかし、実際は、地表になんの痕跡も見当たらない「隠れ活断層」が存在している可能性も充分あるところが怖いところです。

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地震観測点

日本は世界的にみても非常に地震の多い国です。何年も前から、東海地震が予測されるなど、もともと地震に対する備えに力を注いでいたのですが、神戸の地震以来、地震観測網が非常に充実しています。現在、次のような地震観測点があります。

気象庁が約150、防災科学技術研究所のHi-net(高感度地震観測網)、同KiK-net(基盤強震観測網が698)、同K-net(全国強震観測網)が1034、大学の観測点が約250、これに全国の自治体の地震計を加えると全国で3000カ所以上の観測点を持っています。さらに、国土地理院のGPSを使った「電子基準点」が全国に1224点あって地殻のわずかな動きをリアルタイムで観測しています。海洋研究開発機構も観測点を持っています。

これら全部合わせると、実に全国4000カ所以上もの地震観測点があるのです。

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余震確率

新潟中越地震では、本震の後、気象庁から「余震確率」が発表されました。この余震情報は、1998(平成10)年から行われているもので、神戸の阪神淡路大震災の後、整備されたものです。

確率は、複雑な方程式と過去のデータから求めているのですが、出てきた「余震確率○○%という数字をどのように判断すればいいかは迷うところです。10%未満になればかなり確率は低くなると見ていいようですが、いまひとつはっきりわかりません。

この点は、気象庁も検討課題としているようです。降水確50%と言われれば傘を持ってでかけようかな、と思う人もいるでしょうが、余震確率10%と言われても、判断できないのは、被害の大きな地震は、降水のように頻繁にはおこらないからでしょう。

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