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再び三たび流行する病気と健康の用語集
 

伝染病〜菌やウイルスとの長いお付き合い

香港カゼ

本誌1969年版収録。以下、

1968年7月香港で流行したインフルエンザ。カゼの病源体は80〜100ミリリクロンのウイルスで、大別してA、B、Cの3種類に分かれ、A型はさらにA0、A1、A2と細分されている。このうち57年に大流行を起こした「アシア・カゼ」はA2型で、死者5700人を数えた。香港カゼのウイルスは、国立予防衛生研究所の発表によると「A3型」であり、日本人の10人に1人がわずかに免疫があるだけといわれ、10年ぶりのインフルエンザ騒ぎとなった。

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インフルエンザ・ウイルス

本誌1977年版収録。以下、

第1次大戦の末期に全世界に流行をみた当時はスベインかぜといわれていたが、この20年来の研究で、インフルエンザにはA、A'、B型等タイプの異なるものがあることがわかった。昭和50年の末から51年の春までに日本に多数の患者を出したインフルエンザは、41年に大流行した香港型A'の変種であることがわかり、A東京75型と命名された。インフルエンザ・ワクチンの効果は、各型に適合したものでないと不十分である。

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インフルエンザ新型ウイルスAX

本誌1998年版収録。以下、

インフルエンザ・ウイルスには、構成する物質の一つであるたん白質の性質の違いから、A型、B型、C型の3種類があるが、世界的に流行するのはほとんどがA型。このA型ウイルスが突然変異を繰り返したものがAX型で、感染力が強く多数の死者を出す恐れがある。A型は15種に分かれるが、人類が経験したのはH1(スペインかぜ・1918年)、H2(アジアかぜ・57年)、H3(香港かぜ・68年)の3種だけ。AXは人類未体験だ。厚生省は1997(平成9)年2月、このAXによる新種のインフルエンザが数年以内に地球規模で大流行する恐れがあるとして、ワクチンの増産など本格的な対策を開始する方針を決めた。アメリカでは全国民が接種できるような生産供給体制ができつつあるという。なお、わが国で94−95年に大流行したのはA香港型。96−97年も同じタイプ。94年、学校での集団予防接種が廃止されたため、その接種率は世界の文明国に比べて極端に低下している。

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3混ワクチン

本誌1964年版収録。以下、

ビールス、バクテリアによる病気を予防するにはワクチン接種が最も効果的である。ワクチンとは、病原体またはその毒素を殺菌または弱毒化した物質で、体内にはいると人体はそれに抵抗する免疫体を生産するので、その後、本物の病原体が感染・侵入しても発病しないか、発生しても軽くて治る。乳幼児期は、特に病原体に対する抵抗力、つまり免疫がとぼしいので、できるだけ多種類のワクチンを接種するのが望ましい。しかしその1つ1つを接種することはわずらわしいだけでなく、精神的にも大きな負担となるので、いちどになん種類も接種できるワクチンが工夫されてきた。現在あるワクチンによっては、精製または弱毒化がまだ完全といえぬものもあり、各種ワクチンを混合すると副作用が高まる恐れもある。ジフテリア、百日ゼキ、破傷風のワクチンはその心配も少ないし、とくに破傷風の恐怖から幼児を守るため、昭和39年から厚生省では3混ワクチンを採用する方針である。

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新3種混合ワクチン(風しん、麻しん、おたふくかぜ)

本誌1989年版収録。以下、

予防接種法では、百日咳、ジフテリア、ポリオ、麻しん、風しんの5つワクチンの定期接種が義務づけられている。このうち百日咳とジフテリアは、任意接種の破傷風と組み合わせて、3種混合ワクチンとして普及している。1989年度からの新3種混合ワクチンは、麻しん、おたふくかぜ、風しんの3種混合である。風しんは女子中学生だけが対象で、接種率もこの5年間70%台と振わない。しかし妊娠には風しんはとても危険が伴う。麻しんも肺炎や脳炎の合併症を引き起こすし、おたふくかぜも、成人になってかかると、こう丸炎など重い後遺症を引き起こす恐れがある。そこで今回、全幼児を対象に接種を行うことになった。接種は1回で従来の麻しんと同じく1歳以上6歳になるまで、なるべく3歳ごろまでにすることになった。安全性の面でも問題は出ていない。

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MMR(混合ワクチン)

本誌1990年版収録。以下、

1989(平成1)年4月から、一般乳幼児向けの予防接種で使われるようになった、新しい組み合わせの混合ワクチン。それまで単独で行われていた麻しん(はしか)に、おたふくかぜ、風しんを加えた、新しい混合ワクチンに切り替えられた。乳幼児向けの在来の3種混合は、百日ぜき・ジフテリア・破傷風の3つ。

→MMRワクチンの障害者救済認定

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スプレー式新型ワクチン(インフルエンザ)

本誌1989年版収録。以下、

現行のインフルエンザワクチンは注射しても発病するケースが多くて不人気であった。88年6月に発表されたワクチンは、今までのインフルエンザワクチンにごく微量のCTBを加えたものである。CTBは腸の粘膜に作用して細胞同士のすき間を広げる成分である。マウスの鼻に新ワクチンを注入すると鼻から気管支にかけて気道に入り、CTBが広げた気道粘膜の細胞間にワクチンがしみ込むために有効性が強くなる。この新型ワクチンを注入したマウスの鼻にインフルエンザ・ウイルスを注入しても、どれもインフルエンザの病状を示さなかったと言う。このワクチンは有効年限が従来のワクチンの2〜3カ月に対して数年も維持されるという。「鼻に噴霧するスプレー式の接触方法を数年後をメドに実用化をめざしたい」と国立衛生研究所と北里研究所のグループは自信のほどを示している。

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性病予防法

本誌1954年版収録。以下、

性病が国民の健康な心身を侵し、その子孫にまで害を及ぼすことを防止するため、その徹底的な治療及び予防を図り、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的として昭和23年に制定された法律。その第11条によると、都道府県知事は、正当な理由により売いん常習の疑の著しい者に対して当該吏員に強制検診をさせることができるが、しばしば人権蹂躙の疑があって問題となった。

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AIDS(エイズ)  acquired immuno deficiency syndrome

本誌1984収録の解説より。以下、

後天性免疫不全症候群。1978年以降アメリカで、とくに男子同性愛者の間に多く発生し、注目を浴びている新しい病気。83年5月9日までにアトランタの国立防疫センタ−(CDC)に報告されたアメリカの本患者数は、1410名で、白人57.4%、黒人21.6%、ハイチ人5.6%である。アメリカ以外では、フランス、オランダ、デンマーク、ベルギー、イギリスなど16カ国で患者が合計103名発生したという報告がある。わが国では83年7月初め、本症に似た患者が帝京大学病院で死亡した。ただしこの患者は血友病患者で、同性愛者ではなかった。本症の症状は、体重の急激な減少、高熱、ひどい下痢、寝汗、疲労感で、それに肺炎の症状がつけ加わる。すなわち、はげしい咳、喀痰、呼吸困難である。この肺炎はニューモシスティス・カリニという原虫(真菌ともいう)で起こり、カリニ肺炎といわれるものである。またカポジ肉腫が合併することがある。これは赤道アフリカやハイチで老年者に見られる皮膚ガンでリンパ腺がはれる。AIDSの死亡率は高く、79年までに発病した者は全員死亡し、以後の死亡率は71〜86%である。患者は男子同性愛者が多く、全患者の71.2%を占め、つぎに麻薬常習者が16.9%を占める。しかし最近血友病患者や5歳以下の乳児にも本症があることがわかった。これはAIDSの病源体で汚染された血液を輸血したためと考えられる。病源体は血液中に存在していて、血液を介して感染を起こし、免疫系を破壊して正常な生体防御を不能にし、重い症状を起こすと考えられている。病源体としてはウイルスが考えられ、今日までにサイトメガロウイルス(CMV) 、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、成人T型白血病ウイルス(HTL)に容疑がかけられている。なお患者のなかにザイールの住民やザイールからの移民がいることから、この病気の病源体はもともと中央アフリカのザイールにおり、これがハイチに渡り、ハイチがアメリカの男子同性愛者のお気に入りのリゾート地であるため、アメリカの同性愛者を通じて、世界にばらまかれたと推定されている。アメリカでは、本症の患者の家のごみを清掃車が収集するのを拒否したり、囚人が同性愛者の隔離を要求したり、葬儀屋が本症で死亡した人のとむらいを拒否したりして、人権問題が起こっている。日本でもこの病気の日本における実態を調査するため、厚生省は83年6月13日帝京大学医学部長・安部英を班長とする「AIDSの実態把握に関する研究班」を発足させた。

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エイズ問題

本誌1989年版収録。以下、

1987(昭和62)年1月に、日本最初の女性エイズ患者が死亡。それをきっかけにマスコミを始めとする<a href="エイズパニック症候群(AlPS)

">エイズ・パニック</a>が起こり、厚生省は後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)案を国会に提出した。しかし、血友病患者団体等の強い反対で審議は中断、88年に入って政府側は血友病患者を法案規制の対象から外すという方向で新たに実質審議にはいる見通しである。また多数の女性と性的関係を持っていた売春業者の感染者が報告されるなどで、法案成立への動きに拍車がかかった。血友病患者を始め、法律関係者、医師、同性愛者の団体等は、管理と規制の強いこの法案ができれば、差別を助長し感染者を潜在化させるとして反対運動を行っている。また女性団体も、風俗産業で働く女性たちをハイ・リスクグループと決めつけ、売る側だけに管理を強化していくやり方に、強い反発を示している。

→エイズショック

→松本パニック

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肺結核  pulmoary tuberculosis

本誌2003年版収録。以下、★★★現行版収録と同一

2000(平成12)年の新規患者数は約3万9000人(死者2650人)。1950年代と比較すれば総数は少ないが、依然、国内最大の感染症であることに変りはない。また、近年では、複数の治療薬に耐性があるために治療が難しく、死亡率も高い多剤耐性結核や、学校、医療機関、老人施設などでの集団感染の増加など、新たな問題も発生している。98年には結核の集団感染(20人以上が感染した場合)が41件発生し、3年間で4倍に急増(94、95年はそれぞれ11件だったのが、96年には21件、97年には29件と増えた)。若い人の結核に対する免疫力が落ちていて、いったん患者が発生すると、周囲に感染しやすくなっているためとみられる。99年に入っても、東京・多摩地区の中学校で40人が結核感染。帝京大病院で、医師から37人の結核感染の疑いといった集団感染が続いた。当時の厚生省は、結核患者数が再び増加傾向に転じたことに危機感を示す「結核緊急事態宣言」を発表し、医療関係団体に結核対策の強化を求めた。特定疾患について、同省がこうした「宣言」を出すのはきわめて異例だ。

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