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国連がとめられなかったアメリカの覇権
―― 大国とは…の特集
 

拒否権の発動

拒否権(1954)

本誌1954年版収録。以下、

ラテン語のVeto「余は禁ずる」からきており、元来は国内法上立法府を通過した議案に対して、君主、大統領などの執行府が同意を拒否しその効力発生を防止する権能を意味する。最近有名になったのは国連の安全保障理事会における5大国の拒否権である。これは右の国内法の場合と少し意味がちがう。即ち安全保障理事会は常任理事国たる5大国と他の6国とによって構成され、一切の重要なことには必ず米英ソ仏華一致の賛成投票が含まれていなくてはならない。その中の1国でも反対すると他にいかに7国以上の賛成があっても、何の決定も成立しない。この構能が拒否権である。国連成立以来今日までに、拒否権の行使されること56回、そのうち2回を除いていずれもソ連が行使している。朝鮮動乱では、ソ連の欠席により、安全保障理事会で2、3の有力な決定が成立したが、ソ連の理事会復帰後はふたゝび行詰り、主な活動は総会に移っている。

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拒否権(1987)

本誌1987年版収録。以下、

ラテン語のveto「余は禁ずる」からきており、元来は国内法上、立法府を通過した議案に対して君主、大統領などの執行府が同意を拒否しその効力発生を防止する機能を意味する。有名になったのは、国連の安全保障理事会における5大国の拒否権によってである。これは、上記の国内法の場合といくらか意味がちがう。すなわち、安全保障理事会は常任理事国たる5大国と他の10カ国とにより構成され、一切の実質事項の決定には必ずアメリカ、イギリス、ソ連、フランス、中国の5カ国の一致の賛成投票が含まれていなくてはならない。このように決議に有効な9票の賛成票が獲得されていて、ある大国の反対がなかったなら、決議が成立しえたであろうという場合にこの大国の反対を拒否権の行使という。国連の慣行上、この大国が複数の国である場合にはそれぞれが拒否権を使ったものとみなしている。ただし、棄権や欠席は拒否権行使とはみなされない。この表決方式はヤルタ会談で決まったので、ヤルタ方式とも呼ばれる。かつてはソ連によって頻繁に行使されたこの制度も、最近では、対南アフリカおよび対イスラエルの非難決議、グレナダからの外国軍撤退決議等に対するアメリカの拒否権のように、他の4大国による行使が目立つようになった。

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安保理中東討議(1976年1月)

本誌1978年版収録。以下、

安保理中東討議は、1967年11月の和平決議をはじめ、アラブ・イスラエル戦争収拾に主要な役割を演じてきているが、76年1月12日からの討議で、PLO代表に国連加盟国と同じ資格で参加することを認める画期的進展がみられた。会議では、非同盟6力国が、パレスチナ人の国家樹立権、難民の帰還権、イスラエルの全占領地からの撤退という強い主張を、イスラエルの存在と平和的存在の権利の保障とバランスをとりながら謳った決議案を提出して注目された。決議案は賛成9をえながら、アメリカの拒否権で流産させられたが、全占領地からの撤退とパレスチナ人の権利にたいする国際世論を高めるのに貢献した。

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アフガニスタン・ソ連撤退決議

本誌1987年版収録。以下、

1980年1月15日、アフガニスタンへのソ連の軍事介入間題審理のため開催された国連緊急特別総会が採択した決議。同総会はアフガン問題を先に取上げた安保理事会で、ソ連撤退要請決議がソ連の拒否権行使により葬られたあとをうけて招集されたもので、非同盟17力国提出の決議案を賛成104、反対18(ソ連圏諸国)、棄権18(インドなど)で採択した。決議は安保理で葬られた決議の線に沿ったもので、<1>アフガンヘの軍事介入を極めて遺憾とし、<2>同国の非同盟国家としての主権、独立の尊重と内政不干渉、<3>外国軍隊の即時無条件完全撤退要求、が骨子となっている。ソ連を名指しで非難しなかったとはいえ、決議案が予想以上の大差で採択され、非同盟諸国を賛成側に回したことは、ソ連外交の失敗といえるが、ソ連軍の撤退は現在のところ実現していない。

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アフリカ安保理

本誌1973年版収録。以下、

1971年12月に国連総会は安保理事会に対し、アフリカ諸国のいずれかの首都で理事会を開催するよう勧告するアフリカ41力国共同提案を可決したが、それにもとづきエチオピアのアジスアベバで72年1月28日から2月5日にかけて開かれた安保理事会をアフリカ安保理または移動安保理という。<1>ナミビアの民族自決のため事務総長に、アルゼンチン、ソマリア、ユーゴと協力して、南アを含む当事者と協議し、7月までに安保理に報告を求める。<2>ナミビア問題で南アを非難し、南アが決議に従わないときは安保理が措置を決定する。<3>南アのアパルトヘイト政策を非難する。<4>ポルトガルのアフリカ植民地に対する弾圧を非難し、全加盟国に武器供給停止をよびかける。以上の4決議案は可決されたが、最も重要視されたローデシア問題に関する決議案は、イギリスの拒否権の行使によって否決された。

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