月刊基礎知識
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裏にまわっている人、いた人の特集
―― 田中耕一さんノーベル賞受賞記念
 

黒子だった“はず”の官僚

松尾克俊

外務省元要人外国訪問支援室長。1964年入省。2001年1月、詐欺罪で起訴。93年から99年の在任中、46回の首相外遊を担当、9億8800万円にのぼる官房機密費を受領していたとされる。このうち約7億円が詐取金容疑。競走馬、ゴルフ会員権、高級マンション、女性への現金など約6億円の浪費を機密費で賄っていたとされる。松尾は省内の実力者として「ノンキャリアの星」と呼ばれる存在だった。

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小林祐武(ひろむ)

外務省元経済局課長補佐。1975年入省。松尾克俊の後輩ノンキャリア。2001年7月、九州沖縄サミットにからんだハイヤー代詐欺事件で逮捕。サミット時に幹部などが使うハイヤー代をハイヤー会社に水増し請求させ、約1200万円分をだまし取っていた。同サミットで準備事務局が支払ったハイヤー代の総額は約3億4500万円に上るという。

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浅川明男

外務省元欧州局西欧1課課長補佐。1963年入省。2001年9月、詐欺罪で逮捕。1995年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)にからんで会場費を計約4300万円水増しして外務省に請求。ホテル側からも逮捕者が出た。松尾克俊同様、省内に実力をふるったロジスティックス(後方支援)専門のノンキャリアで、「表の松尾、裏の浅川」と称されていた。

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佐藤優

元外務省国際情報局主任分析官。ノンキャリア。1960年生。同志社大学大学院修了。「特ダネ外交官」と呼ばれるほどの調査力を誇る外交官で、1991年のソ連クーデターの際、ゴルバチョフの軟禁場所をいち早く突き止めた。。鈴木宗男の片腕と目され、ロシアの怪僧になぞらえ、「ラスプーチン佐藤」とも呼ばれた。2002年5月、背任容疑で逮捕。

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野上義二

1942年生。東京大学卒。元外務省事務次官。もちろんキャリア官僚。OECD日本代表部、在米大使館経済参事官、在香港総領事、経済局長などを経て、1999年外務審議官。2001年デンバー総領事の機密費流用疑惑にからんだ歴代四次官の更迭で事務次官に就任。2002年、NGOへの鈴木宗男の圧力疑惑をめぐり、田中真紀子外相とともに更迭される。

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阿南惟茂

在中国大使。2002年5月、中国遼寧省瀋陽の日本総領事館に亡命しようとした北朝鮮住民5人が中国の武装警察当局に拘束された。この直前、北京の日本大使館での会議で、不審者が許可なく大使館に侵入するような場合は「とにかく追い出せ」と阿南が指示を出していたとして問題になった。7月に厳重訓戒処分。太平洋戦争終戦時の鈴木貫太郎内閣の陸相・阿南惟幾陸軍大将の子息。

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岡崎清

元瀋陽総領事。総領事館への駆け込み事件当時は大連の飛行機墜落事故の処理で現場を離れていたが、「緊急事態に備えて警備態勢を充分取っていなかった」として、7月に懲戒減給処分・帰国命令を受け、更迭。ちなみに、総領事館は世界の主要都市で日本企業の進出が多い場所などに設置。外国に住む日本人のために婚姻・出産など証明手続きの窓口となる。

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田中均

外務省アジア大洋州局長。京都大学法学部卒。1969年入省。日商岩井の会長を務めていた田中正一氏は父親。日朝首脳会談の立役者といわれ、「外務省一の切れ者」などの評もある。続く拉致問題では、被害者の安否リストを伏せていたことについて陳謝。クールなエリート官僚のイメージが強いが、2002年9月末には、拉致事件をめぐる答弁中、涙を流し10秒以上絶句する場面も。

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斎木昭隆

外務省アジア大洋州局参事官。1976年入省。2002年9月下旬、拉致事件に関する政府調査団の団長として平壌入り。生存者5人と対面し、本人確認や帰国の意思確認を行う。また、拉致問題の実務者レベル協議では北朝鮮側の担当者に激しく詰め寄る一幕もあったという。田中真紀子外相時には人事課長を勤めていたが、真紀子の恣意的な人事に強行に抵抗した。

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中山恭子

内閣官房参与。東京大学文学部卒。大学では川口外相の2年先輩に当たる。外務省を経て、旧大蔵省入省(1966年)。女性初の税関支署長、地方財務局長などを経て、1999年から2002年まで駐ウズベキスタン大使。9月末、参与に任ぜられ、北朝鮮拉致被害者との連絡役となる。被害者の家族から「もう一人のお母さん」と慕われるなど、絶大な信頼を得、落ち着いた物腰で国民の間でも人気者に。

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キャリア組/ノン・キャリア組

キャリア組とは、旧高等文官試験(高文)―事務系、選考―技術系、あるいは国家公務員試験のうちのI種(かつての上級甲)に合格し、本省に採用された者をさす。彼らは幹部候補者として昇進ルートが敷かれ、それ以外のノン・キャリア組から区別される。ノン・キャリアが本省の課長以上に登用される途は狭かったが、実力あるノン・キャリアを幹部に登用する途を拡大して士気を高揚し、他方でキャリア組の安易な昇進を是正する必要があるとされ、1999(平成11)年から弾力的運用が始まった。通常60歳の定年まで勤務するノン・キャリアに対し、キャリアは50歳前後から天下りする慣行があるため、幹部職員の定年延長が行われることになった。外務省ではキャリアが国際会議の実質(サブスタンス)を担当するのに対し、ノン・キャリアは兵站(ロジスティックス)を担当するため、「ロジ担」とも称される。

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