ジャック・ロゲ会長 (Jacques Rogge)◆IOC会長選ジャック・ロゲは2001年、サマランチのあとを受けてIOC会長に就任した。ベルギー出身。1968年メキシコ五輪から3大会連続ヨット選手として出場、職業は整形外科医。91年にIOC委員に就任、98年から理事。選挙では、大会のスリム化とIOCの組織改革を訴えた。会長としての強権も否定している。 ◆フアン・アントニオ・サマランチ・トレリョ (Juan Antonio SAMARANCH Torello)1920年スペイン・バルセロナ生まれ。金融機関の会長をはじめ、幾つかの銀行の役員を歴任、不動産業も手がけた実業家。ソ連、モンゴル大使も務めた。54年スペイン・オリンピック委員。67〜70年同会長。66年IOC入りし、74〜78年副会長、80年より21年にわたってIOC会長。金満体質、老害などさまざまの批判を呼んだ。退任直後、過労で入院。ロゲ氏就任後も「院政」のうわさがささやかれている。ソルトレイクにも足を運んだ。 ◆自浄努力2002年2月2日、ソルトレイクで行われたIOC理事会で、IOC委員をはじめとする五輪関係者、団体に対する、癒着防止を目的とした利益供与の申告制度が定められた。ロゲ会長の発案で、IOC委員が、特定のスポーツメーカーの顧問弁護士を務め報酬を得ている場合などが申告の対象。申告内容漏れなどは倫理委員会が調査を行う。 ◆不正採点2002年ソルトレイク五輪、2月11日のフィギュアスケートペア自由において、フランスの審判に採点の不正があったとして、自由とトータルの順位点を削除、1位のロシア組に加え、2位だったカナダ組にも金メダルを贈ることが決定、波紋を呼んだ。ロゲ体制初の五輪でダメージを最小限に抑えるため、議論が尽くされる前にこの決定が下された、との批判も。 ◆アメリカのための五輪ソルトレイク五輪は冬季五輪史上、アメリカがもっとも多くメダルを獲得 (34個) した大会で、米国内では大きな盛り上がりを見せたが、競技の〈判定〉をめぐってトラブルが続出。もちろん“アメリカではない側”の抗議や不満である。フィギュアスケートの判定とクロスカントリー出場停止問題をめぐってはロシア市民が激昂、2月22日夜、モスクワ米大使館前に詰めかけ、「アメリカ五輪の不正」を糾弾した。また、ショートトラック男子1500メートル決勝では、先頭でゴールした韓国の選手が走路妨害を理由に失格となり、その結果アメリカの選手が金メダルとなったことで、韓国選手団はスポーツ仲裁裁判所に提訴、コーチは「審判がアメリカの選手をえこひいきした」と主張。 ◆放映権ソルトレイク五輪組織委員会は、放映権などのマーケティングで13億ドル (約1700億円) を集めた。これは五輪史上最高で、長野五輪の約2倍。すでに「ソルトレイクモデル」なる命名もあり、ビジネス的に一つのモデルケースになるという。なお、ロゲ氏は従来NBCが独占してきた放映権を2010年以降入札制にするとのこと。 ◆反テロ2001年9月11日に起きた米同時多発テロの影響で、ソルトレイク五輪大会はかつてない厳戒警備の中で行われた。ロゲ会長は開会式で「ブッシュ大統領からも、大会が平和裡に終了するよう最大限の支援をするとの言葉をもらっている」と安全面を強調。米国民に哀悼の意を示した。 ◆ドーピング (doping)ドーピングの根絶もロゲの主張の一つ。ソルトレイクではスキー距離男子のミューレック (スペイン) と同女子のラズティナ (ロシア) がドーピングによって閉会式当日、メダルを剥奪された。ちなみに、この措置については、サマランチ前会長が「五輪のダメージにはならず、ドーピングへの対決姿勢を示すもの」と発言している。 ◆コンドーム配布五輪では、1992年バルセロナ大会よりコンドームを配布。「安全なセックスのため」という観点に立ち、健康管理が目的。選手村でも診療所が取り扱っているが、今回は1万2000個のコンドームが配布された。選手は無料で使用できる。ソルトレイクはモルモン教徒の多い土地柄で、このことに対しての表立たない反対運動もあったという。 ◆訪中2001年8月、北京訪問中のロゲは江沢民国家主席と会見。江主席はロゲの主張する反腐敗やアンチドーピング、五輪規模拡大の抑制に賛意を示し、IOCへの協力を約した。ちなみに、北京では2008年五輪開催のため、胡同 (フートン=路地) の取り壊しが、史上最大規模で進んでいるという。 |
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