月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
“日本病”
がんばれニッポン!他の国も昔は病気だった
 

各国が“病の床”にあったとき、日本はどうであったのか?

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』

各国があえいでいる (ようにみえた) ときに、米国でベストセラーとなったのが『ジャパン・アズ・ナンバーワン』である。本誌1980年版は同書を評して以下のように解説している。

「アメリカのハーバード大学エズラ・F・ヴォーゲル教授が書いた本の題名が流行語になった。同教授のいわんとするところは、アメリカは現状を破るために日本を見習え。日本の社長は会社のもうけを考え、経団連は日本の経済を考える。アメリカも全体を考えようじゃないか。アメリカは自慢ばかりしてダメだ。西洋も少し個を制限しないとね。

---要はアメリカよしっかりしろというところか。日本を買いかぶりすぎているキライがあるが、この本は売れに売れた。“アメリカ・アズ・ナンバーワン”を目標にした時代と何と大きなちがいか。」

ページの先頭へ戻る

日本的経営手法 (ジャパニーズ・マネジメント) (Japanese management)

本誌1991年版収録。以下、

「一般に終身雇用制、年功序列、企業内労働組合 (労使協調主義) を3種の神器とする経営をいうが、論者によって必ずしも一致しない。欧米などの企業経営と比較したとき、日本独自もしくは特徴的な傾向とされる官民一体の日本株式会社、法人資本主義と従業員出身経営者による経営、生活あるいは運命共同体の理念、根回しや会議などによるコンセンサスの形成や稟議制度などの意思決定方式、協業集団による分業・共同執務体制、集団主義やヒト、シェアや成長目標の重視、平等主義や現場主義、などを示す場合もある。このように、これまで日本に特徴的とされてきた経営上の原理・理念、考え方、特質や制度・施策・慣行・しきたりなどを含めて日本的経営とよばれている。

こうした日本的経営の原理、理念、制度や施策は、戦後の復興期にわが国で形成された独特のシステムとされ、高度成長期に経済発展の原動力となった。しかし、第1次オイルショック以降の減量経営、昭和50年代半ばからの円高、ソフト化・サービス化、技術革新などの経営変化により大幅な軌道修正を求められている。

さらに経営のグローバル化の進展、人手不足の深刻化や日米構造協議の動向などによって、変容が迫られることは必至である。」

ページの先頭へ戻る

レギュラシオン (regulation)

本誌1992年版収録。以下、

「調整。フランスのローベル・ボワイエ (Rober Boyer) 教授らが主張している新しい経済学説で、「新古典派とマルクス派を止揚した“第三の経済理論”となるのでは」という期待の声も聞こえる。すなわち、経済のメカニズムを完全にインビジブル・ハンド (神の見えざる手) に委ねてしまうレッセフェール・レッセパッセ (自由放任主義) の理論だけでもうまくいかないであろうし、あべこべに国家や政党 (共産党) の手に全面的に頼ってしまう“社会主義”や“共産主義”志向の国々のようなやり方でも破綻するであろう、という観点に立って「資本家と労働者」とか「公と私」などといった対立勢力を巧みに協調させながら経済の発展を求めていこうとする、すぐれて“調整”的な考え方である。具体的には、“ソ連モデル”でも“アメリカ・モデル”でもない“日本モデル”、すなわち大量生産・大量消費を超克した「より人間の顔をしたモデル」、たとえば“フォード主義” (Fordism=フォーディズム) の破綻のあとにのしあがってきた“トヨタ主義” (Toyotism=トヨティズム) のほうがすぐれているし、さらには北欧型の“ボルボ主義” (Volvoism) のほうがより望ましいのではないか、と述べている。」

ページの先頭へ戻る

日本型経済発展モデル

本誌1993年版収録。以下、

「戦後日本の経済発展の経験は、一方では欧米諸国に脅威の念を与え、「日本株式会社論」や「日本文明異質論」を生み出した。他方で、発展途上国の間には、ある種の憧れや賛嘆の念をひき起こし、マレーシアの「ルック・イースト」 (東方を見よ) 政策等の背景ともなった。しかし、中央計画経済圏の崩壊と、それに伴ういわゆる社会主義国の間で市場経済への移行、あるいはその導入が課題としてクローズアップされてくるとともに、再び日本型の政府統制と市場経済を組み合わせた混合経済体制型の発展モデルに関心が集まることになった。1990年に当時のソ連は大統領府経済予測部長ミリューコフを団長とする日本経済の視察団を派遣し、その成果は『日本経済に学ぶ』 (いわゆるミリューコフ報告、朝日文庫訳刊) として公にされた。92年に入って第二の開放期に入った中国でも体制改革が大きな課題となり、日本での政府・企業関係に強い関心が寄せられている。ここに「日本型経済発展モデル」が提起されてきた。このモデルに従えば、政府はマクロ経済の統制に責任をもつが、市場メカニズムを活用し、企業の活動は行政指導等による間接統制にとどめる。企業は労働者との間に信頼に基づく安定した労使関係を築き、改善提案など日常的な技術革新体制をつくり上げる。日本型の発展モデルはもちろん一定の歴史的条件の産物だが、後進国の市場経済移行にとって一つの重要な先例として脚光を浴びるようになった。」

ページの先頭へ戻る

日本型経済システム (The Japanese Economic system)

本誌1997年版収録。以下、

「1996年版の経済企画庁『経済白書』は、「日本型経済システム」が転換期に立たされているという見方を示した。日本型経済システムとは、間接金融優位のメーンバンク制度、年功序列を基礎とした雇用システム、系列や株式持ち合い等の業界システム、政府の行政指導等による積極的介入、を特徴としてきた。ところが、国内外の環境変化により、この経済システムが行き詰まり、民間の自発性を生かした自己責任制に転換する必要がある、というのが、経済白書の主張である。このシステムは94年版の「日本型経済発展モデル」で指摘したように、後進国の先進国キャッチアップ時代に必要とされた政官業主導型の開発体制だが、近年では大蔵省のバブル経済放置 (誘致) や住専の不良貸付黙認、通産省の次世代コンピュータ開発失敗、厚生省の薬害事件、また民間でも大和銀行アメリカ支店や住友商事の銅先物取引の不正事件等、ほころびが目立ってきた。経済の成熟化、国際化時代にふさわしい大胆な規制緩和、政治・経済・金融・教育各分野での構造改革がかつてなく必要とされている。」

ページの先頭へ戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS