月刊基礎知識
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新語流行語大賞からよむ日本のしくみ
 

ドメスティック・バイオレンス

家庭内暴力〔1979年版初出・社会風俗用語より〕

親に反抗して手当たり次第に暴力をふるう少年や少女が増えている。一人っ子に多く、甘え、非社会性、過保護の環境、父権の失墜、その背景には激化する受験戦争などが考えられるが、一方ではこれとは反対にすぐ暴力をふるう親もある。外では劣等感が強く職場のストレスをうまく処理できず、無力感を家庭で爆発させ、こども、家族に暴力をふるう。現代の家庭の病理を象徴している暗い暴力だ。

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校内暴力〔1982年版初出・教育問題用語より〕

学校内において教師に暴行を加えたり、学内の施設設備を破壊する暴力行為のこと。最近は、中学生によるものが多く、内容も凶暴化している。このような校内暴力の増加は、単に、教師の指導力の低下としてみることはできず、家庭、地域、学校を含めた、社会全体の教育力の低下として考えるべき点が多い。したがって、校内暴力を起こさせないためには、担当教師一人の指導でできることは少なく、家庭、地域、学校の一体となった指導、とくに学校の中での教師の一致団結した指導が必要となってきているといえよう。

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疎外感暴力事件〔1987年版・事件用語より〕

東京・新宿区百人町の西戸山公園で野宿していた日雇い作業員たちが、中高生や元暴走族らのグループに襲われ、失明するなどの大けがをする事件が、8月、10月と続いた。「やつらはゴミだ」などといい、公園を包囲して襲撃する。疎外されている者が、スカッとしたいために、さらに疎外されている者を痛めつけて面白がる。この種の事件を、疎外感暴力事件と名付けるが、3年前の「横浜・浮浪者連続殺傷事件」以来、あちこちで目立つようになってきた。

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家庭内暴力〔1988年版 ストレス社会用語より〕

家庭内暴力には、父母が子供に対して向けるもの、夫婦間で起こるもの、子供たちが父母に対して向けるものの3つがある。さらに、家庭内の老人に対するものも含まれる。従来は、親の子供に対する暴力は、幼児虐待の一つとして扱われていた。しかし、現代の日本社会で家庭内暴力という場合には、もっぱら思春期の子供が家庭内で、主として母親と父親に対して向ける暴力のことである。
最も多いのは、父母に対して、育て方が悪い、思う通りにやってくれない、なぜ自分を生んだのか、などの理由づけによって暴力を振るう場合で、いずれも家庭環境の中だけで起こり、それ以外の人物に対しては暴力を振るったり異常な態度をしない場合が多い。中には精神病の徴候、非行や拒食症・多食症、あるいは思春期挫折症候群ないしは境界パーソナリティー障害の表れのひとつとして、これが起こる場合がある。精神医学的にそれぞれのケースについて原因を正確に把握したうえでの適切な接し方が大切である。

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家庭内離婚〔1987年初出 婦人問題用語より →1986年新語流行語大賞・受賞語〕

夫婦の双方、または片方が離婚を望みながら、あるいは正式に離婚したが同居している等、夫婦の絆がないのに表面上は夫婦の形をとっている状態をいう。作家・林郁の造語。昭和58年NHK総合テレビ「中高年の離婚」が反響をよび、レポーター役の林郁が番組の中で発言し、60年、同名のルポルタージュを出版するに及んで話題となった。原因は、子供の数の減少、妻の高学歴化、長寿社会への移行など、ライフサイクルの変化にかかわらず生きかたのモデルがないこと、加えて性別役割分業、単身赴任、長期出張、子供の受験戦争、妻の自立志向などによる家庭生活の矛盾、それに気づかない働きバチの夫の意識の遅れなどがあげられる。
実際に離婚できない理由は、妻の経済的自立が困難なこと、老親の扶養・介護、子供の就職や結婚への差し障りなどの世間体等が代表的なものである。愛が失われれば離婚する欧米、ことにアメリカなどとは著しく異なる現象である。
最近離婚率が低下したといわれるが、実態は「家庭内離婚」がかなり多いのではないかといわれる。高齢化社会を迎えて、あらためて結婚や家庭の意味合いが問いなおされている。

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夫の性暴力 (Marital Rape) 〔1988年版初出 家庭・家族用語より〕

日本では従来「夫は妻に性交渉を要求する権利があり、婦女暴行罪は成立しない」とされていたが、1987 (昭和62) 年6月、広島高裁は、婚姻が実質上破綻し「名ばかりの夫婦の場合」、夫婦間にも婦女暴行罪が成立するという新判断を示す判決を下した。アメリカ、スウェーデンではすでに認められているが、日本では初めてである。女性の性的自己決定権確立への一歩として評価されたが、「夫婦間の婦女暴行罪は成立しない」を否定しているわけではない。

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女性への暴力〔1994年版 女性/男性問題用語より〕

強姦、セクシュアル・ハラスメント (sexual harassment) など、女性の意志に反して行われる性的行為を性暴力 (sexual violence) といい、友人や恋人同士であってもデートレイプとして問題視され始めた。また、1992年のアジア女性会議をきっかけに弁護士を含む女性グループが、日本で初めて、夫や恋人による女性への暴力 (ドメスティック・バイオレンス domestic violence) の実態をアンケート調査した。それによると、身体的、性的、精神的暴力のいずれかを受けたことがある女性が回答者の78%、三つとも受けた女性も49%、けがを負ったことのある女性が37%という深刻な事実が明らかにされた。93年6月のウィーンでの国連世界人権会議で採択されたウィーン宣言には、「女性に対する性的な暴力などの根絶」が盛り込まれている。

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ドメスティック・バイオレンス (DV) (Domestic Violence) 〔1994年版初出 家庭・家族用語より〕

家庭内暴力のことだが、日本で思春期の子どもから親への暴力がイメージされるのと異なり、諸外国では主として、夫から妻への、もしくは恋人など親密な関係の男性から女性への暴力をさす。1970年代のフェミニズム運動を契機に、女性抑圧の最も身近な問題として欧米では社会問題となり、制度・法的対応の改善がみられ、相談やシェルター (一時避難所) 活動が行われている。近年はアジア、中南米、アフリカなどでも問題にされている。
日本では調停離婚の妻からの申し立て理由は長年、夫からの暴力が第2位、精神的虐待が第5位にあがっている。また全国の婦人相談所を利用する女性たちの約3分の1が夫・前夫からの暴力が理由であるなど、この2つの公式統計しかない。その被害の実態を明らかにするため、92 (平成4) 年、民間のDV (ドメスティック・バイオレンス) 調査研究会が、調査協力者への全国的調査を行った。有効回答796人のうち、身体的暴力は58.7%、心理的暴力65.7%、性的暴力59.4%、この3種の暴力は44.2%の人が経験していた。

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