月刊基礎知識
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新語流行語大賞からよむ日本のしくみ
 

狂牛病

プリオン (prion) 〔1986年版  生物技術用語より〕

感染性痴呆症であるクロイツフェルト・ヤコブ病 (CJD) 、ヒツジやヤギの中枢神経を侵すスクレーピー病などの病原体と考えられているもの。ウィルスより小さく、遺伝子を持たないのに増殖し感染力があり、謎の病原体と呼ばれる。カリフォルニア大学のグループにより、感染性タンパク質粒子 (proteinaceous infectious particle) から名づけられた。同大バークレイ校のD・T・キングスベリ博士らはCJDの患者の脳からプリオンを取り出した。それによるとプリオンは分子量1万〜5万のたんぱく質である。これまでの研究によるとプリオンは熱や紫外線、放射線に強く、これを含むマウスの脳1グラムには1億匹のマウスを発病させる感染力がある。しかし遺伝物質であるDNAやRNAは検出されておらず増殖の方法は謎とされてきた。最近、同大プルシナ博士らはプリオンたんぱくのアミノ酸配列を調べ、それに対応するヌクレオチドを合成するという方法でプリオンたんぱく遺伝子のクローニングに成功した。この遺伝子配列は感染細胞同様、健康な細胞にも検出されたことから、プリオンの増殖は宿主にそのたんぱく質を合成する遺伝子があり、感染によってそれが活性化されることによると考えられる。

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狂牛病 (BSE;mad cow disease) 〔1991年版  西欧問題より〕

畜牛が脳をおかされ、スポンジ状になる「牛スポンジ脳炎」。イギリスで牛の間に広がっている伝染病。イギリスの牛肉・牛輸出に打撃を与え、レストラン、食肉店、学校給食などにも牛肉使用中止の動きがみられた。

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プリオン (prion) 〔1997年版  医学問題用語より〕

脳がスポンジ状になって運動神経の障害を起こし、最後には死んでしまう牛の病気狂牛病 (ウシ海綿状脳症) が1996年春、イギリスで発生して世界中が大騒ぎになったが、その病原体とみられたのが、もともと生体内にあるタンパク質粒子のプリオンである。82年、米カリフォルニア大学のPrusiner教授によって発見、命名された。狂牛病のほか、スクレイピー (羊の病気) 、クロイツフェルト・ヤコブ病などの原因になっているとみられる。ニューギニア島の高地住民であるフォレ族の女性に1950年ごろ多発したクールー病は、はじめプリオンの関与が疑われたが、その後、スローウイルスの感染によって起こることがわかり、現在ではまったく発生がない。だが、イギリス政府がウシの狂牛病は人間にも感染する可能性があると発表したことから、騒ぎが再燃し、クロイツフェルト・ヤコブ病の動向が注目を集めている。ただ、プリオンは細菌やウイルスと違って、普通の病原体なら必ずもっている遺伝子が見つからず、したがって他の人間や動物の体内で、自分の遺伝子を次々とコピーして増殖することができないはずだ。生命をもたないプリオンが本当に動物から動物に感染する病原体になりうるかどうか、最終的な結論には達していない。

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狂牛病 (牛海綿状脳症) (Mad Cow Disease;BSE  Bovine Spongiform Encephalopathy) 〔1997年版  西欧問題用語より〕

牛の脳がスポンジ状になり涎をたらしよろめいて死ぬ病気。1986年にイギリスで発見。88年夏、イギリス政府は狂牛病の牛の焼却を命じる。89年11月、狂牛病の牛使用のパイ、ソーセージ製造禁止。発見10年後の96年3月22日、ヒトへの感染の可能性を認めた。現在、イギリス国内の牛は1100万頭、その4割の450万頭が対策の対象となった。これまでに約16万頭の牛が感染。

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クロイツフェルト・ヤコブ病 (CJD) (Creutzfeldt-Jakob disease) 〔1997年版  医学問題用語より〕

プリオンが原因で人間に起きる脳の疾患で、狂牛病同様、脳がスポンジ (海綿) 状になり、人格障害や痴呆、あるいは分裂病同様の症状を呈したり、錯乱状態を示すことも多い。35〜60歳代の男女に多く、100万人に1人ぐらいの割合で発生する。治療法はなく、発病後1年くらいで死に至ることが多い。1920年に初めてこの疾患を報告したドイツの2人の神経精神科医の名前をとって命名された。

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