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不正事件で注目を集めた企業をめぐる用語集

富士銀行事件とその周辺の用語集

富士銀行不正融資事件

富士銀行の赤坂支店で幹部行員が、銀行の信用を背景に取引先に架空の預金証書を発行、それを担保に都内の不動産業者ら27社7個人が、15のノンバンク(預金を受け入れないで融資をしている会社)から総額約7000億円もの巨額を不正に引き出した詐欺事件。5月中旬、ノンバンクからの問い合わせで発覚した。赤坂支店の中村稔元渉外課長(38)は、1987年からコンピュータに架空預金額を打ち込んで預金証書を作り、このあと入金ミスとしてこの記録を抹消。預金証書は廃棄せず、偽造の質権設定承諾書(預金を担保にするのを銀行が認める書類)と共にノンバンクに持ち込み、融資を引き出す。そのカネは同支店に開設した取引先口座に一旦預金。1週間以内に解約するなどして融資金を騙し取るという手口。これらの資金は、おもに地上げや不動産投資に流れており、大手銀行の地価高騰元凶説が裏付けられた。この不正融資は、地上げへの批判から融資が締めつけられた結果考え出された方法と言われている。警視庁は知能犯を担当する捜査2課が、ロッキード事件以来15年ぶりという異例の特別捜査本部を設置、91年9月12日、元課長と取引業者ら4人を逮捕。元課長は融資の見返りに取引先から約2億円のリベートを受けていた。橋本蔵相の秘書がこの事件で無担保融資に介入したり、暴力団に融資金が流れるなど関係者の裾野は広がるばかりで金の流れも複雑。全体像がつかめないが、金に群がる政界、官界をも巻き込んだ複雑な構図が見え隠れしている。同行は他の4支店でも不正融資が発覚しており、このような不正を銀行の上部が知らぬはずはなく、銀行の収益至上主義が犯行に走らせたとも言える。

この富士銀行は2002年以降、第一勧業銀行、日本興業銀行と合併し、みずほ銀行に。丸紅とともに芙蓉グループの中核を担う。

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特別捜査本部

強盗や殺人、知能犯罪、爆発物事件など、強力な捜査を進める必要性のある事件については、その解決に向けて「捜査本部」が設置される(犯罪捜査規範や犯罪捜査共助規則などによる)。なお、社会的反響が大きい(もしくは大きくなるおそれが大である)と判断される重大な事件の解決のため、より強力で統一的な捜査を行う必要性が認められた場合には特別捜査本部が設置される。オウム真理教事件や世田谷一家4人殺害事件などでも設置された。最近では、耐震偽装問題で捜査員約70人体制の特別捜査本部が築地署に設置された。

ちなみにライブドア事件で強制捜査を行ったのは東京地方検察庁「特捜部」だが、これは「特別捜査部」の略で警察組織の「特別捜査本部」とは別。

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ノンバンク

1991年版本誌掲載。以下、

金融機関以外で与信業務を行う機関のことで、具体的にはクレジット会社、信販会社、リース会社、ファイナンス会社など。行政上は貸金業者に相当する。ノンバンクの貸出残高はここ数年30〜40%の高率で伸びており、とりわけ金融機関からノンバンクを通じた不動産融資が顕著であった。これは地価高騰につながる「迂回融資」として問題となっている。また、新たな融資調達手段としてノンバンクはCPの発行認可を求めている。こうした業務の拡大で、ノンバンクと銀行・証券などとの業務区分が曖昧になってきたため、大蔵省では1990(平成2)年4月に「ノンバンク研究会」を発足、ノンバンクの実態調査を進めている。

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地揚げ・底地買い

日本新語・流行語大賞1986年より。以下、

狂乱の土地投機ブームが本格化し、日本全国で悪質な土地買い、住民追い出しが目立つようになった。そのため、普通の市民生活を営むことさえ困難になる例も数多く出た。その一人、女優・馬渕晴子は、強引な追い出しを図る不動産業者を告発し、庶民の側からの「地揚げ・底地買い」反撃のシンボルとなった(流行語部門・不快語追放応援賞、受賞者:馬渕晴子(女優))。

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絵画担保ローン

1991年版本誌掲載。以下、

1989(平成1)年10月に富士銀行とクレセゾン(セゾングループの信販会社)で取扱いを始めたローン商品。近年、絵画は鑑賞用だけでなく、財テクの対象として注目されているが、この絵画を担保にしてローンを組むシステムを開発した。この融資の仕組みは、融資案件が発生し絵画がもちこまれると、その絵画の価値を西武百貨店が評価しクレセゾンがその絵画を担保として取得、保証したうえで富士銀行が融資するというもの。融資額は絵画の流通価格の8割がメドで、金利は7.5〜8.5%。利用者はコレクターや画商で、ほかの絵画の購入や画廊の増改築に使用されている。開発初年度で年間目標額をはるかに超えるほどの反響があり、他の大手銀行でも参入が予想される。

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捜査○課

警察内では、捜査事案の性格によって課が分けられている。警視庁刑事部では、捜査1課は殺人、強盗といった凶悪犯罪や大規模な過失致死傷事件の捜査を担当する。捜査2課は汚職などの知能犯罪や経済犯罪を、捜査3課はスリや窃盗などを担当する。捜査4課は放火や恐喝などの暴力犯罪を対象としている。

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天ぷら屋「尾花」

富士銀行赤坂支店を舞台にした巨額不正融資事件で、橋本龍太郎元首相(当時蔵相)の秘書が関与したとされる融資案件の融資先。約13億円もの額を無担保で融資されたとして、第121回、147回の国会議事録にも記録されている。元首相はその後引責辞任している。

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みずほコズミックブルー/みずほホライズンレッド

みずほ銀行のブランド・カラー。ブルーは信頼、誠実、ワールドスケール、クオリティを、レッドは、お客さまとのリレーションシップ、ヒューマニティ、情熱を表しているとのこと(参考:みずほFG・HP)。

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