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いろんな曲線とそれにまつわる数値
著者 白鳥 敬

いろんな曲線とそれに関わる数値

リサージュ(リサジュー)曲線  Lissajous curves

フランスの物理学者リサジュー(1822〜80)が研究したことから彼の名がつけられています。振り子がx軸(横軸)とy軸(縦軸)の両方に振れたときに、平面に描かれる軌跡をいいます。横軸と縦軸に入力する信号の周波数の比・位相差・振幅の比によって、いろんな美しい図形になります。電気通信大学の校章は、位相差が0、周波数比が5:6のときのリサージュ曲線が使われています。この比は、東日本と西日本の交流電力の周波数の比(50Hz:60Hz)をあらわしているのだそうです。

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コッホ曲線  Koch curve

海岸線や木の枝など、自然界にある一見複雑な図形も、全体と部分が相似形になっている場合が多い。これをフラクタルと言います。最初に自己相似図形を発見したのはコッホで1906年のことです。この自己相似形図形の線をコッホ線といいます。1960年代になってアメリカのマンデルブローがフラクタルの理論を研究し、その後、コンピュータで図形を処理するときのツールとしてフラクタルは有用なツールとなっています。Google Earthで遥か宇宙から徐々に地表をクローズアップしていくと、海岸線があとからあとから同じような形で見えてくるのが見え、実際の海岸線もフラクタルなのだな、ということが実感できます。

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ベジェ曲線  Bezier curve

パソコンでイラストを描いたり図案を作成している方にはおなじみのベジェ曲線は、パソコンで曲線を描くためのツールです。フランスの技術者ベジェが発明しました。始点と終点の間にふたつの制御点を設けて、始点と制御点1・制御点1と制御点2・制御点2と終点のそれぞれの線分を2等分する点どうしを直線で結ぶという作業を繰り返していくとベジェ曲線が得られます。Postscriptフォントはベジェ曲線を表す数値データによって描かれていますから、拡大しても縮小しても、ギザギザのでない美しい表現ができます。

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カテナリー曲線  Catenary curve

電柱と電柱の間の電線は真ん中あたりが下に弛んでいますね。この曲線がカテナリー曲線です。カテナリー(catenary)は電車の架線のことで、懸垂線などともいいます。力学的に安定していますから橋のアーチや大型ドームなどで使われます。吊り橋で橋桁と橋桁の間にだらーんと張られているケーブルはカテナリー曲線になっています。岩国市の錦帯橋のように上に膨らんだアーチ状の橋もカテナリー曲線になっています。

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ローレンツ曲線  Lorentz curve

イギリスのローレンツが、所得分布の不平等の度合いを示すために、編み出した手法で、横軸は低所得者から高所得者まで順に並べ、下のほうから累積した100分率。縦軸は最低所得額から最高所得額を下位から順に累積して100分率で表したもの。縦軸横軸とも最低値が0、最高値が1。所得が完全に平等なら右上がりの角度45度の直線になり、不平等であるほどローレンツ曲線が下に下がります。

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ジニ係数  Gini coefficient

ローレンツ曲線と切っても切れないものに、所得分配の不平等度を示すジニ係数があります。ローレンツ曲線と45度線とに囲まれた三日月型の面積が45度線より下の三角形の面積に占める比がジニ係数です。ジニ係数が大きければ(最大1、最小0)、不平等であるということになります。

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ハイプ曲線  Hype cycle

アメリカの調査会社ガートナーが提案しているIT業界に特徴的なサイクルを示す曲線。新しいテクノロジーが登場すると世間は注目し期待がたかまります。この時期を「黎明期」とし、ハイプ曲線は上昇の兆しを見せ始めます。ハイプ曲線の上昇とともに、多くの企業や顧客が、テクノロジーの詳細を十分知らない者まで含めて、どっと飛びついてブームになります。これが「流行期」で、ハイプ曲線は一気に上昇します。次には、その反動で熱狂が覚め、ハイプ曲線が下がります。これが「反動期」。続いて、テクノロジーの本質がよく理解され、今度は冷静さを持って関わるようになります。これが「回復期」。少し上方に回復したハイプ曲線は、その後、安定して推移していきます。

このハイプ曲線は、IT関係では非常によく見られる現象です。また、IT以外でも、さまざまな流行現象は、ハイプ曲線を描くことがよくあります。

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バズワード  Buzzword

曲線の話ではないのですが、ハイプ曲線に関連してこの言葉をあげておきましょう。buzzwordとは本来、専門家が使うもったいぶった偉そうに聞こえる言葉のことを言いますが、IT業界では、使ってる本人もよく理解しないで使っている、最新の技術用語などのことを言います。悪く言えばこけおどし、ひいきめに見ても衒学的(pedantic)と言ったところでしょうか。クライアントを説得するには、このような言葉の方が便利(失礼!)というケースもあったりします。バズワードは、ハイプ曲線で言えば、「流行期」に使われることが多いと言えるでしょう。

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忘却曲線  Foegetting curve

ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(1850〜1909)が編み出した、人間の記憶が時間の経過とともに、指数関数的に減少することを表す線のこと。それによると記憶の保持率は、20分後に58%、1時間たつと44%と急速に落ち込み、9時間たつと36%、1日たつと30%しか残らない、と言うことだそうです。時間がたつとともに、忘れる度合いは下がってくるのですが、最初にどばっと忘れてしまっているので、ここをなんとかすれば記憶力が強くなるのでしょうが、やはり地道に繰り返し勉強することが欠かせないということでしょうか。

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春の大曲線

春がやってくると、夜空に大きな曲線を見ることができます。といっても、空に曲線が描いてあるわけではありません。明るい星を何個か結んでみると曲線が見えてくるのです。北斗七星の柄の部分から始めて、うしかい座アルファ星アークトゥルス、おとめ座アルファ星スピカを経てからす座までたどってみると、視線の跡は天空に描いた大きな曲線になります。これを春の大曲線といいます。暖かくなった春の宵を実感させてくれる曲線です。

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