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“大きい数字・小さい数字にあらためて注目”の特集
著者 白鳥 敬

“大きい数字・小さい数字にあらためて注目”の特集

Google で検索できるWebページは20億個!?

 インターネットが、ビジネスに、生活に欠かせないものになってきたが、その利用目的のトップにくるのは、やはり情報の検索。世界中にいくつあるのか見当もつかないホームページはまさに情報の宝庫。この膨大な情報の中からめざす情報を探り当てるためのツールが検索エンジンだ。この検索エンジンで、現在もっとも広く使われているのが、Google。検索語を指定するだけで、1秒もしないうちに、情報を探し出してくれる(検索にかかった時間が“得意気に”表示されるしかけになっている)。みなさんも、毎日のように活用されてるのでは。

 このGoogleという名称の元になったのが、googol(ゴーゴル)という言葉。これは、10の100乗(1の後に0が100個もつく)という大きな数を意味している。

検索エンジンのおかげで、どんな速読家でも、どんな博識な学者でも読みきれないような大量の情報にあたって、その中から必要なものを要領よく探し出し、読むことができるようになった。もっとも、だれもが情報をすばやくゲットできるようになったからといって、だれもがすぐに学者なみになれるというわけではない。情報をどう活かすかは本人次第ということで…。

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大きな数を表す単位をイメージできるかな?

 英語では、100万はmillion、10億はbillion、1兆がtrillion、千兆はquadrillion。ある程度イメージできるのは、ここまでで、これより大きな数字は人間の頭ではうまくイメージすることができない。科学技術の分野、とくに天文学では、これより大きな単位が必要になるが、天文単位・パーセク・光年といった専用の単位があるし、物理学の世界では、10の何乗という言い方をする。

 ところで、quadrillionの上は、quintillion、sextillionと続き、ついには、10の100乗を表すgoogleになり、ついには、10の300乗を表すcentillionになるらしい。10の300乗といえば、次項で述べる日本というかアジアの究極の大数である「無量大数」の10の68乗をはるかに超えてるではないか! なんとも想像を絶する世界である。

 ところで、英国では、billionは10億ではなく1兆を表すそうだ。最近は米国式になってきているとも聞くが、容積の単位ガロンのように、同じ単位でありながら意味する数量が違うというのは、なんとも困ったものだ。

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日本の大数の究極の単位は「無量大数」

 大きな数を表す単位である大数(だいすう)は、一、十、百、千、万、億、兆などがあり、兆までは、「不良債権ン兆円」など、ニュースなどでも普通に見聞きする。しかし、その上の単位になると・・・、兆の上の京(けい)くらいまではなんとかわかるが、さらにその上になるとさっぱり、という感じではないだろうか。

 江戸時代の算術書『塵劫記』(吉田光由著)には、大数が次のように記されている。 兆の上の京は、1の下に0が16個つくが、ここから0が4個増えるごとに、垓(がい)、秭(し)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(こうがしゃ)、阿僧示氏(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)となり、次いで無量大数(むりょうたいすう)で終わりになる。

 無量大数は、1の下に0が68個もつく大きな数字。いったい何を表そうというのだろうか。→◆大きな数

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『無量大数』は、宇宙を測ってもまだ余る?!

 『塵劫記』は、江戸時代のベストセラーで、200年以上に渡ってひろく読まれたため、多くのバージョンがあり、中には無量大数を無量と大数にわけて記述されているものもある。また、『塵劫記』の元になった中国の『算法統宗』では、『塵劫記』に取り上げられている大数とは異なっている箇所がある。

 そういうわけで、阿僧示氏や那由他などと名づけられていることからもわかる通り、極めて大きな数の単位は、実用的な単位というよりも、仏教思想の影響などを受けた、現実の世界とは大きくかけ離れたものであったのでは、と想像される。

 だって、宇宙の果てまでの距離(仮に137億光年とすると)は、”たったの”1297×10の20乗(1297垓(がい)メートル)。無量大数の10の68乗といった数は、宇宙の直径(?)よりも、さらに48桁も大きいのだから。

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宇宙サイズはどれくらい?

 宇宙空間に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡は、100億光年も先の銀河のようすを見せてくれ、私たちに新鮮な感動を与えてくれたが、最近、NASAはさらに興味深い発表を行った。

 宇宙の年齢は約137億歳で、永遠に膨張を続けるのだそうだ。朝日新聞の記事から引用させてもらうと「国立天文台の杉山直教授(宇宙論)によると、--中略--800億年後に今の100倍になる」(asahi.comより)のだそうだ。これまで言われていたように、あるところまでいったら収縮に転じるのではなく”永遠に”膨張しつづけるという。137億年でも人間にとっては、ほとんど永遠とイコールなんだが、ほんとに”永遠”といわれると、考え込んでしまう。”永遠”なんて人間にはとうていイメージできないのではないか。

 そういうわけなので、いつか宇宙の大きさは無量大数という単位で表されるようになるのだろう。そしてその先、さらに”永遠に”大きくなっていくというのだから、無量大数よりも大きな次の単位を考えておかなければいけないということか。

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「ナノ」テクノロジとはいうけれど、漢数字の小ささはそんなものではない。

 大きな世界から一転して極微の世界に目を転じよう。昨今はナノテクばやりだ。10億分の1を意味するナノスケールの世界が最新のテクノロジーの対象となってきた。ノーベル物理学賞の小柴先生の研究対象は、質量があるかないかもわからないほどの極微の素粒子であるニュートリノの研究、田中耕一氏の研究も、タンパク質の構造を調べるためのナノレベルのテクノロジー。

 ナノは、10のマイナス9乗、簡単にいうと10億分の1を表す接頭語だ。これに対応する日本語の単位は『塵(じん)』。

 冒頭の方で紹介した『塵劫記』には、小数(しょうすう)、つまり小さな数の単位も10のマイナス21乗を表すものまで書いてある。

 10のマイナス1乗、つまり110分の1を表す単位が分(ぶ)、100分の1が厘(りん)、1000分の1が毛(もう)。ここまでは、野球の打率などでおなじみだ。で、この先、10分の1ごとに小さな単位になっていく。毛の次は絲(し)、忽(こつ)、微(び)、繊(せん)、沙(しゃ)、そして、さきほどの塵(じん)続いて、埃(あい)ときて、さらにどんどん進んで、10のマイナス21乗の清浄(せいじょう)で終わっている。塵も埃もなくなったら清浄になるということか。

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ナノテクは、塵の技術?

 『塵劫記』では、小数は10分の1を表す分(ぶ)から、10のマイナス21乗の清浄(せいじょう)まで一桁小さくなるごとに一つの単位が当てられている。

 1000分の1を表す毛(もう)は、国際単位系でいうm(ミリ)にあたり、以下、100万分の1を表す微(び)がμ(マイクロ)、10億分の1のn(ナノ)が塵(じん)、1兆分の1の漠(ばく)がp(ピコ)にあたる。

 原子の直径は0.1nm(ナノメートル)ほどだが、現在、ナノテクノロジーと呼ばれる極微の領域では、ナノメートルオーダーの技術が最も注目されている。ナノテクを無理やり日本語にすると、塵技術か? しかし、実際は塵(ちり)よりももっと小さな世界を扱う技術なのだが。

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SI(国際単位系)の大数・小数の単位は?

 大数・小数の単位は、PCのおかげで、技術者ではない一般の人も、普通に接するようになった。おなじみの、ハードディスクの容量が何ギガバイト(GB)とかってやつ。現在は、G(ギガ)の1000倍のT(テラ)がつくTB(テラバイト)の声も聞こえてくるようになったし、あと数年で、さらにその1000倍のP(ペタ)までいくだろう。

 国際単位系(SI)では、大数の単位は、10倍を表すda(デカ)、100倍を表すh(ヘクト)、1000倍を表すk(キロ)から先は1000倍ごとに、M(メガ)、G(ギガ)、T(テラ)、P(ペタ)、E(エクサ)、Z(ゼタ)、Y(ヨタ)と続く。

 一方、小数の単位(接頭語)もPCとともに、身近に聞く機会が増えてきた。メモリーのアクセス速度とか、半導体の配線の間隔など、マイクロやナノといった言葉はよく聞くようになった。国際単位系での小数の単位(接頭辞)は、10分の1のd(デシ)、100分の1のc(センチ)、1000分の1のm(ミリ)の後、1000分の1小さくなるごとに、μ(マイクロ)、n(ナノ)、p(ピコ)、f(フェムト)、a(アト)、z(ゼプト)、y(ヨクト)と続く。

 技術者が使う10の何乗という言い方もわかりにくいが、こんなに単位があると、これを覚えるだけでもたいへんだ。

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時間で最も長い単位と短い単位は?

 物体が動くとそこに速度というものが生ずるが、時間が経過しても「時間の速さが時速何キロ」という言い方はしない。しないというかありえない。時間とは、物体が移動する割合、つまり速度を知るための基準となるものだから、それ自体には速度はない(だろう、たぶん)。

 しかし、長い時間もあれば短い時間もある。揚子江の水の流れを悠久の流れといえば、刹那という短い時間もある。また、時間の長さは気持ちの持ちようしだいでも変わる。恋人といる時間は短く感じるが、会社にいるとやたら長く感じたりする。

 最も長い時間はなんだろう。それは宇宙が誕生してから現在までの時間だろう。約137億年。では、もっとも短い時間は? 

 現在、通商産業省で「フェムト秒プロジェクト」というものが進められている。光や電子をフェムト秒レベル、なんと1000兆分の1といった短い時間でコントロールし、超高速の半導体をつくろうという試みだ。1フェムト秒では、光でさえわずか0.3マイクロメートルしか進まない。

 これがもっとも短い時間と言えるかもしれない。

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野球はペタ 最速スーパーコンピュータはテラの時代?

 ペタジーニが松井の抜けた巨人に移って、今年の巨人はどうなのか、気になるところだ。ペタ(P)は1000兆倍を表す接頭語なので、いかにもホームランを連発してくれそうで頼もしい。しかし、1000兆回もホームランを打つなんて、一生かかっても不可能だ。いや、一生どころか…

 野球がペタならスーパーコンピュータは、1兆倍を表すテラの時代になっている。TOP 500 SuperComputer sites(http://www.top500.org/)というサイトで、世界で最も速く計算できるスーパーコンピュータのランクを発表しているが、今のところ最も速いのは、日本の『地球シミュレータ』だ。これは、理論的最大値で40-41テラフロップスという速度で計算できる。TOP500に掲載されているのは実行値で、35.86テラフロップスだ。これは1秒間に、35兆8600億回計算できるということだ。

 すばらしい速度ではあるが、残念ながらまだペタには及ばない。

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