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連載「平成ヒストリア」その7=平成7年、大震災、オウム、もんじゅ損傷
執筆者 木村傳兵衛

連載「平成ヒストリア」その7=平成7年、大震災、オウム、もんじゅ損傷

安全神話

1995年1月17日午前5時46分、それまで地震とは無縁と思われていた阪神・淡路地域で直下型の大地震が起きた。道路・鉄道・電気・水道・ガス・電話などライフラインは寸断され広範囲で全く機能しなくなった。さらに、世界でも安全と言われていた大都市・東京をテロが襲った。3月20日の地下鉄サリン事件でである。「安全な国」と思われていた日本は一転して「怖い大国」というイメージを世界中にまき散らすことになった。この国の「危機管理」能力の予想外な低さと甘さが指摘された。

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ライフライン  lifeline

命綱、生命線を意味する言葉。1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災では、電気、ガス、水道、電話、食料流通など生命、生活を支えるシステムが麻痺したが、それ以外にも広い範囲でさまざまな命綱が必要だという課題を提起した。

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地下鉄サリン事件

首都の大量輸送機関内で「サリン」を使った無差別殺人テロ事件が起きた。1995年3月20日朝、地下鉄日比谷線、丸ノ内線、千代田線の3路線計5台の車両内で、オウム真理教団の実行メンバー5人がナイロンポリ袋を床に置き、先を尖らせた傘で突き刺してサリンを発生させ、乗客ら計12人を殺害、数十人の重症を含む5510人を負傷させた。→ポアする

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住専  Jusen

住専(住宅金融専門会社)が、総額8兆円を超える巨額な不良債権で問題化。住専は銀行などの住宅金融機能を補完することを目的で設立されたノンバンクで、都市銀行や生命保険会社などの金融機関が巨額の融資をしている。大蔵省OBの天下り先。一気に不動産融資を膨張させ、失敗へ。この問題は欧米でも〈Jusen〉と呼ばれ、日本の金融不安のシンボルとなった。

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金融破綻

この年、戦後初の銀行倒産は、この国に大きな衝撃をあたえた。不動産関連融資を中心に多大な不良債権を抱えて経営難に陥った兵庫銀行(第二地方銀行最大手)と木津信用組合に対し、1995年8月、大蔵省と日銀は、自主再建が困難と判断し、破綻処理に踏み切った。

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官官接待  the wining and dining of public officials by other public officials at public expense

官が官を接待すること。公務員が公務員を接待する行為。補助金をめぐり「中央」と「地方」が差しつ差されつ。民間が公金目当てに役人を供応すれば直ちに断罪されるが、役人同士なら見逃される現実がこの言葉によって摘発された。

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がんばろうKOBE

イチロー選手を擁するオリックス・ブルーウェーブが阪神・淡路の大震災にもめげず声援を送るファンに応えて、ユニフォームに縫いつけた励ましのフレーズ。天の配剤か、そのブルーウェーブはリーグ優勝を遂げた。

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仰木マジック

阪神・淡路大震災によって試合開催さえ危ぶまれていたこの年のシーズン、「がんばろうKOBE」を合言葉に、オリックス・ブルーウェーブをリーグ初優勝に導いたのは、仰木彬監督。もちろん、首位打者、打点王、盗塁王、最多安打、最高出塁率の5冠を達成した、イチローの貢献は多大なものであったが、監督の手腕も高く評価された。そもそも、そのイチローの才能をいち早く発見したのも仰木監督だった。その前の近鉄バッファローズ監督時代には野茂英雄を育てたことでも知られている。仰木監督の名伯楽ぶりには定評があるが、もともとは地元福岡出身、西鉄ライオンズの地味な存在だった。が、名将三原脩監督から野球理論を学び、時には奇策とも思える采配を行うこともあったが、「三原マジック」になぞらえて「仰木マジック」と呼ばれた。

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NOMO

村上雅則以来31年ぶり、史上2人目のメジャーリーガーである野茂英雄。ロサンゼルス・ドジャースでの野茂投手の活躍は、日本にとってこの年唯一にして最高の明るい話題だった。予期しなかったことに野茂はアメリカでNOMOとして、より受け入れられた。そのキャラクターグッズ売り上げは彼の契約金200万ドルを7月半ばで早くもペイし、アメリカ有力雑誌「ニューズウィーク」は、NOMOを救世主と讃えた。96年には2度のノーヒットノーランという偉業を達成する。

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変わらなきゃ

与党も野党も等しく「変革」を叫び、誰もが「変わらなきゃ」と思っている。が、現実はなかなか変わらない、変われない。そんな時代に、イチロー選手がTVに登場し、屈託もなく「変わらなきゃ」と呼びかけたのが日産の安全・販売キャンペーン。たった一人で低迷化していたプロ野球人気に活気をとり戻した男のセリフだから、説得力があった。

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無党派

この年、政治では「無党派」の躍進が目立った。東京都、大阪府の知事選挙で、無所属候補の青島幸男、横山ノック候補が、政党推薦候補を破って、無党派層の存在がマスメディアで脚光を浴びることに。

1995年4月の東京都知事選、青島幸男が、「都市博・臨海副都心開発中止」を公約に掲げ立候補。選挙運動をしなかったにもかかわらず、170万票を集めて当選した。世界都市博覧会は、前任の鈴木俊一が推進していた「東京フロンティア計画」のお披露目として、翌96年の開催が決定されていた。

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もんじゅ損傷

国産技術で基礎から積み上げて開発した日本初の発電用高速増殖炉、5900億円をかけて建設されたもんじゅが性能試験運転中の12月8日に事故。二次系冷却材のナトリウムが漏れたのだ。火災や床の損傷を生じたが、放射能漏れはないという。二次系のナトリウムが流れるパイプに取り付けた温度計が折れ、パイプに穴があいたのが原因。科技庁や報道機関に虚偽の報告や発表を重ねた。

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ダウンタウン

お笑いコンビ、ダウンタウン・松本人志の『遺書』(1994年9月刊)、『松本』(95年9月刊)の2冊が、この年のベストセラーに。「

松本は、小学校の頃からの友人である浜田雅功のコンビは、浜田がツッコミ役、松本がボケ役。それは先鋭的な笑いで、とんねるず、ウッチャンナンチャンとともに「お笑い第三世代」といわれ、「ガキの使いやあらへんで!!」「ダウンタウンDX」などの看板番組、また自身の名前を冠した番組「人志松本のすべらない話」で絶妙なトークを披露、同時代の笑いを牽引し続けている。

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ポアする

オウム真理教では、抹殺することを〈ポアする〉と言っていた。ほかにも、オウム真理教の実態が暴かれるにつれ、数々のオウム信者用語が公になった。サンスクリット語で〈真理〉を意味する〈サティアン〉は上九一色村の施設で、第○サティアンと番号を付けて用いる。宗教上の名前を〈ホーリーネーム〉といい、教祖が一部の出家修行者に対して与えていた。〈カルマ〉は伝統仏教の用語でいう業(ごう)のこと。〈カルマ落とし〉は、苦難や試練に遭うことにより、前世・現世で積んできた悪しき業をなくしていくこと。信徒虐待・殺人の正当化に用いられた。

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