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新語・流行語大賞・候補60語/パート1

新語・流行語大賞・候補60語/パート1

想定外

「2011ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入選は成らなかったものの、かなり有力だったノミネート語。福島第一原発を襲った津波の高さは14m超といわれる。東京電力が想定した5.4mをはるかに超え、その意味で津波は「想定外」の大災害であった。しかし危険性を指摘する声は以前からあり、東京電力が「想定外」を盾にすることに対し、多くの疑問の声が上がった。

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放射線量

放射性物質の放射能の強さを表す単位は「ベクレル」。人体に与える放射線の影響量の単位が「シーベルト」。人体への放射線被曝線量の限度は、国際放射線防護委員会(ICRP)によって指針が示され、各国が法律を定める際の基準になっている。一般人の被曝限度は「1年間に1ミリシーベルト」とされていたが、福島第一原発事故の後、ICRPは、一般人の年間被曝量を「1〜20ミリシーベルト」に引き上げることが妥当であると示した。

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シーベルト

放射線が人体に与える影響量の単位。放射性物質が放射線を出す強さの単位は「ベクレル」で表されるが、福島第一原発事故では人体への影響が最も懸念されていため、人への影響度を表現する「シーベルト」という単位がマスコミの紙面に頻出した。ミリシーベルトはその千分の一。「気温ならすぐに実感できるのに体感できぬミリシーベルト」(福田万里子)というように短歌の中にまで盛り込まれた。

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脱原発

「2011ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入選は成らなかったものの、かなり有力だったノミネート語。原子力発電から脱しようとするエネルギー政策。福島第一原発事故は、脱原発の世論をいっきに高め、朝日新聞は「原発ゼロ社会」を提言。菅直人首相も記者会見で「脱原発依存」を表明した。

代替のエネルギー源をどうするかという問題があるが、福島第一原発事故後には、ドイツなど脱原発を政策として掲げる国も現れている。

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安全神話

根拠がないまま絶対的な安全が信頼されていること。安全性が崩れたときに使用される言葉。東日本大震災を契機に、原子力発電所の安全性が、実は「安全神話」にすぎないことが明確になった。この「神話」を推し進めてきた政府・産業界・財界・学界・マスコミの協力体制が、にわかに明らかになっている。

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エダる

寝る間も惜しんで働くこと。また、上司に恵まれず必要以上の努力を強いられること。東日本大震災発生から、不眠不休で連日の記者会見に臨む枝野幸男官房長官の姿になぞらえ、ネット上で生まれた造語。

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がんばろう日本

「2011ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入選は成らなかったものの、かなり有力だったノミネート語。東日本大震災直後から、世界では「プレイフォージャパン(日本のために祈りを)」などの支援スローガンが登場した。国内では、「がんばろう日本」「がんばろう東北」などのスローガンが登場し、ボランティアのほか被災地の特産品を買う「応援消費」も広まった。

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瓦礫

3月11日の東日本大震災では、大津波によって家や町が根こそぎさらわれた。それがうず高く寄せられている状況を、第三者は「瓦礫(ガレキ)」と呼んでしまうこともある。しかし、被災した当事者にとっては、もちろん単なる瓦礫ではない。一つひとつ、思い出のこもった品々、その大事なかけらである。

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原子力ムラ

産官学からなる原子力業界のことで、その閉鎖性・排他性を批判するニュアンスを含む呼び名。命名者は環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長といわれる。

福島第一原発事故は、原発推進の背景とされる原子力ムラの癒着構造を明らかにし、さらに日本のエネルギー政策を再考する国民的な議論を促した。

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災後

2011年3月11日の東日本大震災以降を、御厨貴東大教授は「災後」と呼んだ。

2001年9月11日以降を「テロ後」と呼ぶように、政治、経済、社会など、さまざまな側面での国家の一大転換点として東日本大震災をとらえる考えに基づいている。

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メルトダウン

冷却水を失う冷却材喪失事故によって原子炉内の温度が上昇、核燃料が融解して原子炉圧力容器の底にたまった状態のこと。「炉心溶融」とも呼ばれる。また、溶けた核燃料が原子炉や格納容器の底を溶かして穴を開けることを「メルトスルー」といい、さらに原子炉建屋を突き破って核燃料が施設外に露出した状態が「メルトアウト」という。福島第一原発事故では、メルトダウンが起こったことを東電は認めている。

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ただちに

「2011ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入選は成らなかったものの、かなり有力だったノミネート語。福島第一原発30km圏内の高濃度の放射線量について、3月16日、枝野幸男官房長官は「ただちに人体に影響を及ぼす数値ではない」と明言した。しかし多くの国民にとって、「ただちに」という表現がどの程度の時間なのか判然とせず、「ただちに健康に影響はありません」と「冷静な対応」への呼びかけは、逆に不安をあおる形となった。

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ゼロではない

東日本大震災翌日の3月12日、福島第一原発1号機への海水注入が一時中断され、後に発覚して問題化した。菅直人首相らとの協議で、内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長は、「(注水による)再臨界の可能性はゼロではない」と進言し、それが海水注入の中断につながったとされた。その真意を、斑目氏は「事実上ゼロという意味だ」と後に釈明。緊急時の重大な判断に際して曖昧な言葉によって混乱が生じ、非難を受けた。

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節電

福島第一原発事故等にともなう電力不足が東日本で問題化し、東京電力が計画停電に踏み切ったほか、自発的な節電も各所で行われた。駅のエスカレーターが停止され、列車は節電ダイヤの運行に、飲食店では減灯による節電営業も広まった。一部企業ではサマータイムが導入され、環境省は節電用ビジネス軽装の強化版である「スーパークールビズ」を提案。

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計画停電

「2011ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入選は成らなかったものの、かなり有力だったノミネート語。

電力需要が供給を上回ることによる大規模停電を避けるため、電力会社が送電停止を予告したうえで地域ごとに一定時間の電力供給をとめること(輪番停電)。東日本大震災で多数の発電所が停止したことにともない、東京電力が3月14日カら首都圏など各地域で実施し、人々の暮らしは多大な影響をこうむった。

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アフター4

16時以降のこと。節電の必要からサマータイムを導入する企業が増え、「アフター5」ならぬ「アフター4」という言葉が生まれた。飲食店や小売り、サービス業などでの、新たなビジネスチャンスとして注目を集めた。

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再生可能エネルギー

自然環境の中で繰り返し起こる現象を利用した、持続的に利用が可能で枯渇のおそれのないエネルギーのこと。太陽光、太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱、波力、温度差などを指し、自然エネルギーともいう。原子力発電への信頼が崩れる中、それに代替するエネルギー源として注目される。

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自粛

東日本大震災は、社会心理にも大きな影響を与えた。その一つが、被災者への心遣いから花見・花火・祭りなどのイベントを取りやめる「自粛」。個人レベルでも旅行や外食などの消費が自粛され、客足の減少が問題化した。米紙ニューヨーク・タイムズも、過剰な「Jishuku」による経済への悪影響が懸念されると報じた。

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復興

破壊されたインフラや建造物を元の状態に戻すことが「復旧」、コミュニティなどを含めて新しく街を興すことが「復興」。6月24日に公布・施行された東日本大震災復興基本法では、「復興庁」の設置に関する基本方針を定めるとしている。また野田首相も所信表明演説で、省庁の枠組みを超えて被災自治体の要望にワンストップで対応する復興庁を設置するための法案を、早急に国会に提出すると言明した。

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津波てんでんこ

東北の三陸海岸地域に伝わる言い伝えで、津波は到達速度が速く、家族にも構わず各自「てんでんこ(てんでんばらばら)」に逃げないと助からないという意味。震災で多くの命を奪った津波の恐ろしさを如実に表す言葉。

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東北魂

宮城県気仙沼市で被災した仙台出身のお笑いコンビ・サンドウィッチマンは、震災直後から「東北魂」を冠した義援金口座の開設やチャリティライブの開催を発表。また、必ず東北は復興するんだと、人々を奮い立たせるメッセージを発信し続けた。3億円近く集まった義援金は、5月に被災した各県に寄付された。

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ホットスポット

局地的に何らかの数値が高かったり、活動が活発であったりする場所のこと。福島第一原発事故後、特に放射線量の高い地域について使われることが一般的になった。気象条件や地形によって、福島第一原発から距離は離れていても放射線量が高い地域が点在している。

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内部被曝

体の外にある放射性物質からの被曝である「外部被曝(体外被曝)」に対し、体の中に取り込んでしまった放射性物質からの被曝をいう。アルファ線のように紙1枚でもさえぎることのできる放射線は、体の外にある場合の危険度は小さいが、体内に取り込むとすぐ近くの細胞に集中的に放射線を浴びせることになるため、被曝量が大きくなる。

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除染

身体、あるいは土壌などから放射性物質を除去すること。福島第一原発事故により汚染された地域では、放水で洗い流したり汚染土壌を剥ぎ取ったりなどの対策が実施されている。完全な除染には巨額の費用と膨大な時間がかかり、また除染によって削り取った汚染された表土をどこへ処分すればよいかなど、問題が山積している。

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満身の怒り

7月27日の衆議院厚生労働委員会での参考人、児玉龍彦東大教授の発言が大きな話題となった。放出された放射線の総量を公表せず、徹底した測定を行なおうとしない政府や東電に対し「満身の怒りを表明します!」と発言。内部被曝の危険性を明晰に説明し、一刻も早く国と民間の総力を挙げて除染すべきと提言。「7万人の人が自宅を離れさまよっている時に、国会はいったい何をやっているのですか!」と締めくくった。

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建屋

原子炉やタービンなど、設備を収納している建物のこと。福島第一原発事故では、原子炉と格納容器をすり抜けて建屋上部に水素がたまり、爆発。1号・3号・4号機とも建屋の上部が吹き飛ばされている。

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トモダチ作戦

東日本大震災を受け、4月に米軍が自衛隊と緊密に協力して展開した救援活動。救難活動や物資の輸送、福島第一原発事故の対応など、さまざまな分野に及んだ。人員は2万人以上、動員された艦船は20隻、航空機約160機、総予算8000万ドル。陸海空軍のほか、沖縄に駐留する海兵隊も参加した。仙台空港近くの海岸では「ARIGATO(ありがとう)」の文字が作られるなど、被災地住民は米軍への感謝を示した。

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フクシマ50

震災後、外国メディアは、冷静で秩序を守る被災者や滅私で救援活動にあたる自衛隊などを賞賛とともに報じた。米紙ニューヨーク・タイムズは、原子炉爆発事故後も福島第一原子力発電所内に留まって命懸けの作業に取り組んだ東京電力社員ら50人を「最後の砦」と称え、彼らを「フクシマ50」と呼んだ。作業員の数はその後増えたが、現在も現場で復旧などの作業にあたっている。

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