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自然界を知るための定数と係数
執筆 白鳥 敬

自然界を知るための定数と係数

万有引力定数

万有引力は、質量を持つすべての物体の間に働く力で、およそ340年前にアイザック・ニュートンによって発見された。リンゴの木からリンゴが落ちるのを見て、ひらめいたという逸話は有名だ。物体の間には引力という引きつけ合う力が働き、その力の大きさは、2つの物体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例する。式で表すと、

F=G・(Mm/r2)。

Fは万有引力の大きさで、単位はニュートン[N]、Gは万有引力定数で単位は[Nm2/kg2]。Mとmは2つの物体の質量で単位は[kg]。rは2つの物体の距離で単位は[m]。万有引力定数は6.672×10-11[Nm2/kg2]。

数式や細かな数字が出てきて、難しい印象があるかもしれないが、この定数の値は、宇宙のどこへ行っても同じと思えば、なんとなくすごいことがわかると思う。

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光速度

光の速度[c]は、真空中で約29万9792km/s。アインシュタインの特殊相対性理論により、光速度は不変だ。その値は、2.99792458×108m/s。1秒間に約30万km進む速さである。光速度が不変なのは真空中の場合に限られ、物質の中では少し遅くなる。例えば、水の中では、水の屈折率(1.333)のため、光速は約22.5万km/sとだいぶ遅くなる。現在、ナノスケールで屈折率が変わる構造を持つフォトニック結晶の開発が世界中で進められている。結晶の中を通過する光の速度を遅くすることで光信号を制御し、スイッチのように使おうというのだ。これが実用化されると、光通信の高速・大容量化がいっそう進むだろう。

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太陽質量

宇宙には、太陽系のほかにも多くの星があり、私たちの銀河系の外にも多くの銀河がある。そういった宇宙にあるいろんな天体の質量を表すときに、太陽質量[S]が用いられる。太陽質量とは、太陽の質量のことで、1太陽質量は、1.9891×1030kg、地球33万3000個くらい。記号は、。太陽を基準にすると、ほかの星の大きさ(質量)が感覚的につかみやすいからである。例えば、シリウスの質量は、2.14で、太陽の2倍ちょっとの大きさであることがわかる。

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天文単位  Astronomical unit/AU

太陽質量と同じように、地球と太陽の平均距離を天文単位という。1[AU]=1.49597871×108m(約1億5000万km)くらいである。私たちが使っている長さや重さの単位も、最初は、手指の長さや身近な植物の種の大きさ・重さなどから作られたが、宇宙の場合も、同じように“身近な”太陽を基準にして作るとわかりやすい。

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宇宙定数  cosmological constant

アインシュタインは、重力を表す方程式に1個の定数を加えることで、宇宙は安定した静的な宇宙であるとした。この定数を「宇宙定数」といい、「宇宙項」ともいう。この定数によって、宇宙が万有引力によって収縮しようとする力と釣り合うだけの斥力(せきりょく=反発力)を加えることで静的な宇宙を記述しようとしたのである。しかし、エドウイン・ハッブルが宇宙は膨張していることを発見したとき、アインシュタインは、宇宙定数の導入は人生最大の過ちであったと悔やんだという。

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安全係数

工業製品の安全性のために設けられた係数。「安全率」ともいう。たとえば、100kgf(重量キログラム、= 981 [N] )までの荷重に耐え、安全係数が1.5の製品ならば、150kgfの力を加えると壊れるということ。具体例を挙げると、飛行機の座席の安全ベルトの安全係数は1.33、飛行機本体の安全率は1.5。運用上の限界荷重の1.5倍の荷重がかかると、3秒までは持ちこたえるが、3秒を超えると壊れてしまうように設計されている。この壊れるときの荷重を「終局荷重」という。

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露出係数  guide number

カメラのフラッシュやストロボの露出係数のこと。「ガイドナンバー」と呼ばれ、記号は[GN]。ISO100で撮影するとき、ガイドナンバーを撮影対象物までの距離[m]で割ると、適正露出の絞り値が出る。ガイドナンバー20のストロボで2m先の被写体を撮る場合は、20÷2=10なので、絞り値を10にすれば適性露出になる。とはいえ、最近のデジタルカメラは、ほとんど全自動なので、ガイドナンバーを意識することはあまりない。

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摩擦係数

2つの物体が接している部分では摩擦が働いて、お互いに相手の動きを止める方向に力が働く。地上に置いた1kgの物体を1kgfの力で引っ張ることができるときの摩擦係数が1。つまり摩擦係数が1より小さくなると、滑りやすくなる。例えば、乾燥した道路の摩擦係数は0.7くらいだが、雨が降ると0.5くらいになる。特に、雨の降り始めでは、砂埃などが雨に混じって流れるため0.4くらいまで下がることがあるそうだ。また雪道では0.15、凍結していると0.07まで低下する。摩擦係数の低下によるスリップを防ぐために、路面に幅数mmの細い溝を刻むことがあり、これを「グルービング」という。道路だけでなく、飛行場の滑走路にもグルービングが施されている。

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膨張係数

物体の温度が1℃上昇するごとに、大きくなる長さや体積の膨張率をいう。長さに関する膨張率を「線膨張率」、体積の場合を「体膨張率」という。ほとんどの物質は温度が上がると膨張し、温度が下がると小さくなる。日常生活においては、物質の膨張率はわずかな量なので気にする必要はほとんどないが、わずかな変化が影響を与える場合もある。例えば、大きな反射鏡を使った望遠鏡では、温度変化によって焦点位置がずれてしまう。そのため、大きな口径の反射鏡では膨張率の大きな青板ガラスではなく、膨張率の小さいパイレックスやゼロデュアといったガラスが用いられている。

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