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元素と金属をめぐる単位と数値
著者 白鳥 敬

元素と金属をめぐる単位と数値

地殻存在比(クラーク数)

地球の地表下10マイル(約16km)までに存在する元素の質量割合を表したもの。1924年、アメリカの地質学者F.W.クラークによって編み出された。岩石だけでなく気圏(大気)と水圏(海)を合計したものの中の割合。クラーク数は、サンプルとなる岩石の選び方で数値が変わるので恣意性があり、現在はあまり使われることはない。しかし地球表面に近いところにある採掘可能な資源が概ねどれくらいあるかを知るには便利である。クラーク数が最も高いのは酸素で49.5、2位はケイ素25.8、3位はアルミニウム7.56。地球全体では鉄が最も多く34.63だ。

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宇宙存在比

太陽や恒星のスペクトル解析と隕石の成分分析から、宇宙全体に存在する元素の割合(質量比)が推定されている。宇宙に最も多く存在する元素は水素で約71%、2位はヘリウムで27%。太陽くらいの質量で、生まれてから50億年くらいの壮年期の恒星の元素組成は、約90%が水素、約10%がヘリウム。この二つ以外の元素はごくわずか。これに対して、地球には人工的に作られた放射性元素を除いて、すべての元素が含まれている。

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人体存在比

地球上に存在している生物の代表である人の体における元素の割合(質量比)は、1位が酸素で約65%、2位が炭素で約18%、3位が水素で約10%。その他、カリウムが約1.5%、りんが約1%。人間の体の93%は、水と炭素でできている。

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レアメタル  rare metal

工業において必要不可欠な元素でありながら、埋蔵量が少ない・採掘が技術的に難しい・特定の国に偏在している等の理由で供給がスムースにいかない金属をレアメタルという。リチウム・ベリリウム・ホウ素など30の金属元素とレアアース(希土類)17種類。ベリリウムはアメリカが世界の生産量の80%、ニオブはブラジルが同じく90%、アンチモンは中国が88%、白金は南アフリカが78%。この他、ほとんどのレアメタル、レアアースは、産出量・埋蔵量とも地理的な偏りが大きい。

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偏在度

資源の偏在度を、元素毎に見てみると、高温用温度センサーやスイッチの接点に使用されるレニウムがトップで93%、2位は酸化トリウムとしてるつぼなどに使用されるトリウムの88%、3位は超伝導材料に使用されるニオブの88%だ。

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レアメタルの国家備蓄

レアメタルの産出は地理的な偏りが大きいので、ニッケル・クロム・タングステンなど7種類の金属について国家備蓄を行っている。その備蓄日数はニッケルが21日、クロムが30.4日、タングステンが21.日といった具合だ。意外に少ない!

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埋蔵量

掘り出すことができる埋蔵量を現有埋蔵量という。この現有埋蔵量と世界の年間消費量から計算すると、アンチモンはあと12年、銀はあと15年、金はあと16年で枯渇してしまうという。この他、30年以内に枯渇する金属には、スズ、亜鉛、ヒ素、銅がある。このような現実を目の当たりにすると、資源は限りあるものだということがよくわかる。

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エコロジカル・リュックサック  Ecological Rucksack

関与物質総量(TMR:Total Material Requirement)のこと。ある物質を掘り出すときに、目的の物質以外の物質もたくさん採掘される。ある物質を取り出すために、その物質以外の物質をどれだけ動かす必要があったかを示した指数がエコロジカル・リュックサック。たくさん掘っても、目的の物質は少量しか採れないので価値が高いということになる。エコロジカル・リュックサック第1位は放射性物質のラジウム。2位は自動車の排ガス浄化剤の触媒として使われているロジウム。3位は金。

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都市鉱山  urban mining

日本国内にある電気製品や電子部品及びそれらの廃棄物には、貴重な金属が含まれている。これを都市鉱山という。独立行政法人物質・材料研究機構の原田幸明氏の計算によると、重要な金属の世界の埋蔵量に占める日本の都市鉱山の比率は、1位が液晶パネルの透明電極に使われているインジウムで61.05%、2位が銀で22.42%、3位がDVDディスクの材料として使われているアンチモンで19.13%、4位は金で16.36%。

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日本の都市鉱山にある世界一の物質

日本の都市鉱山に埋蔵されている資源の量を国別に見ると、金の埋蔵量は日本が南アフリカを抜いて1位。銀はポーランドを抜いて1位。インジウムもカナダを抜いて一位だ。日本の地中には金属資源はほとんど埋蔵されていないとはいえ、実際は電気製品等に形を変えた資源が豊富にある資源大国なのである。

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