月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
感覚と心理に関する単位と数値のお話
著者 白鳥 敬

感覚と心理に関する単位と数値のお話

ボディソニック  bodysonic

週末の夜になると、自宅の前の交差点で信号待ちをしている車から、「ズズズーン」という低いうなりが聞こえ、体が振動しているような感覚を感じることがあります。人間の可聴周波数20Hzの下限を下回る音は、鼓膜ではなく、体と共振して人間にエネルギーを伝えています。音響機器の中にも、このエネルギーを利用したものがあり、ボディソニックと呼ばれています。ステレオ装置で聴く音楽よりも、実際のコンサートの方が迫力があるのは、視覚的な刺激が加わることだけでなく、体に振動として伝わる低周波によるものも大きいでしょう。インターネットで検索したら、多摩美術大学の研究者が作成した資料に、人体各部の振動特性が載っていました。それによると、立っているときは体全体で3Hz-6Hzの音に、座っているときの頭部は20Hz-30Hzの音に共振しているそうです。

ページの先頭へ 戻る

メル  mel

人間が感じる音の高さを表す単位。1000Hz・音圧レベル40デシベルの純音を基準の音とし、これを1000メルとする。この音に対して2倍の大きさに聞こえる音が2000メル、半分の大きさに聞こえる音が500メルとなります。

ページの先頭へ 戻る

横1°、縦5°

人間の左右の耳は横に並んでいるため、左右の耳に届く音のわずか数ミリ秒から数十ミリ秒の時間差で音源の位置を特定しています。この精度は、水平面では±1°。垂直面では、かなりにぶくなり±5°です。人間は音が聞こえると、その方向に正確に顔を向けることができますが、上下方向の識別は苦手ということです。人間のこの生理機能を利用して、意図的に左右のスピーカから時間差をつけて音を出し、立体音響を作り出すスピーカなども発売されています。

ページの先頭へ 戻る

カクテルパーティー効果  cocktail party effect

おおぜいの人が雑談しているざわざわしたカクテルパーティの席でも、ある人の声を聴こうと思うとその人の声がよく聞こえてきます。これをカクテルパーティ効果といい、1953年にMITのColin Cherryが提唱しました。1950年代の初めには、航空管制官がパイロットと交信する際に、ノイズの中から多くの声を聞き分ける必要があることから、ノイズの中から声を聞きわける能力の検証が始まりました。ノイズとスピーチの関係については、LochnerおよびBurgerの研究があります。それによると、騒音の方が声よりも大きな環境でも、90%以上の了解度があるといいます。喫茶店などで、録音機に会話を録音して再生してみると、ノイズだらけで、誰が何を言っているのかわからないことが多いですが、実際にその場にいると、声がよく聞こえます。人間の脳の情報処理能力はすごいものです

ページの先頭へ 戻る

感覚尺度

人間の感覚は、定量的な物理量の変化に比例するわけではないところから、人間の感覚の度合いを表すのが感覚尺度。たとえば耳に聞こえる音の大きさの感覚は10デシベル大きくなると2倍の大きさに聞こえます。人間が等しい大きさに感じる音圧レベルと周波数の関係を示したものに「等ラウドネス曲線」があります。人間の耳は、低音の感度が悪く、1000Hzで40デシベルの大きさの音は、50Hzの音は25デシベルも音圧をあげないと同じ大きさには聞こえません。

また、年齢を経ていくと次第に高音が聞きづらくなります。20歳を超えるとすでに、高音の感度は落ちており、1万7000Hz以上の音は聞こえなくなります。この聴感特性を利用して10代の若者が特定の場所に屯するのを「妨害」するために、1万7000ヘルツ以上の不快な音を発生させる装置が開発されているほどです。実際、筆者も聴いてみましたが、1万7000Hzを超える音を聞き取ることはできませんでした。

ページの先頭へ 戻る

ウェーバの法則  Weber's law

ドイツの生理学者ウェーバ(Ernst Heinrich Weber)が、1851年に発表した感覚に関する法則。(弁別域 / 刺激量 = ウェーバ比)。わかりやすくいうと、100グラムの重さと101グラムの重さを識別できないが、100グラムと103グラムが式熱できたとすると、200グラムと203グラムが識別できるかというとそうではなく206グラムで重量の比率で重さの変化を識別することができるということ。ウェーバ比は、感覚の種類によって違っていて、重さなら0.020、音の大きさは0.048となっています。

ページの先頭へ 戻る

フェヒナーの法則  Fechner's law

ウェーバの法則から発展させてフェヒナーが編み出した法則で、(感覚量 =k logI)となる。kは定数。つまり、人間が刺激を受けたときに感じる心理的な感覚の大きさは、刺激量(I)の対数に比例するということです。これによると刺激量が小さいときは、感じる刺激の大きさは、ほぼ比例して大きくなりますが、刺激量が一定以上大きくなると、感覚量はあまり変わらなくなります。ウェーバの法則とともに、人間の心理的な感覚を数量で表すことができたというところに意味があります。

ページの先頭へ 戻る

色覚

人間の網膜には、色を感じる錐体細胞と明るさを感じる桿体細胞があります。錐体細胞は、主に色を識別し、感度はあまり高くありません。暗くなると色が識別しにくくなるのはそのためです。錐体には、光の3原色である「赤緑青」のそれぞれに感度が高い3種類の細胞があります。赤の感度が高い細胞は570nmに、緑を感じる細胞は530nmに、青を感じる細胞は440nmに感度のピークがあります。(この数値は研究者によって少し違います)まさに、コンピュータと同じ原理で色を感じているのです。いっぽう桿体細胞は、色は識別できませんが、感度が高いので、暗くなると桿体細胞で光をとらえます。この細胞は中心部以外に多く存在しているので、暗いところで何かを見るときは、対象物を視野の端に持ってくるようにするとよく見えます。また、桿体細胞は、500nm(青と緑の中間くらいの色)に感度のピークがあるので、夕暮れになって薄暗くなると、赤よりも青系統の光のほうがよく見えるようになります。これをプルキニエ現象といいます。

ページの先頭へ 戻る

臭気強度

音や色よりももっと数量化しにくいものが臭気です。環境省では、6段階の「臭気強度」を定めています。それによると、「臭気強度0」は「無臭」、「臭気強度1」は「やっと関知できる臭い」、「臭気強度2」は「何の臭いかがわかる弱い臭い」、「臭気強度3」は「楽に感知できる臭い」、「臭気強度4」は「強い臭い」、「臭気強度5」は「強烈な臭い」となっています。同時に悪臭原因物質ごとに、測定された濃度との相関関係を数式で定義しています。たとえば、硫化水素は、y=0.950logx+4.14。yは臭気強度、xは悪臭物質の濃度(ppm)です。

ページの先頭へ 戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS