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名誉ある撤退、と言われたいものだ

家電業界は進出と撤退がドラスティックなものだ

銀塩カメラ

撤退が相次ぐことによって名前が認識されるようになるのも珍しい。今までただ単にカメラと呼ばれていたものが、デジタルカメラの出現によって、わざわざ「銀塩」と冠をつけて呼ばなければ区別できなくなったのだ。2006年1月にコニカミノルタがカメラ事業から撤退し、一眼レフの一部資産をソニー譲渡。ニコンは一眼レフの高級2機種を除き生産を終了し、今後はデジタルカメラ事業に特化することを発表。「CONTAX」の京セラは銀塩・デジタルともに撤退。お手軽で年々品質をあげていくデジタルに市場を席巻され、アナログが追いやられた形だが、そうなると銀塩写真のよさもまた見直され、付加価値も出てくる。銀塩愛好家はきちんと存在し、年々新しいものが登場するデジタルと異なり、マニュアルの古いカメラの値段は下がらず、デジタルに抵抗のある世代や、ものめずらしさでかっこよさを感じる若い世代のなかにも生き続ける。

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ポケベル

1993(平成5)年には「ポケベルがならなくて」というドラマとその主題歌として大ヒットした秋元康作詞の同名の曲のタイトルにまでなったポケットベル。ポケットベル端末に電話をかけると、相手の端末に当初は呼び出し音がなり、数字が表示されるというドコモが提供したサービスで68しょう(昭和43)年に東京23区で始まった。受信したら後で公衆電話からかけなおすという利用方法で、ビジネスマンのツールであったものが、96年には「お誕生日にポケベル買ってもらった」のせりふで広末涼子が「広末、ポケベルはじめる」とドコモのCMに起用され、0840(おはよう)や14106(あいしてる)など、数字を文字に見立てて言葉を伝える使い方で、10代まで広がるブームとなった。その後数字だけでなく文字が入力できるタイプも登場したが、携帯電話が一般的に普及し、メールも携帯で送れるようになるに伴って姿を消し、医療関係者など携帯電話の使えない職業の人たちの間で細々と利用が続けられていたが、FOMAの普及などでその必要も減少。NTTドコモは2001年に名称をポケットベルからクイックキャストへと変更してサービスを続けていたが、07年3月31日でそのサービスからも撤退する。

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ボーダフォン

イギリスが本社の世界最大の携帯電話会社。日本法人は、2006(平成18)年に日本法人の携帯電話事業を1兆7500億円という大きな金額でソフトバンクに売却。同年10月よりソフトバンクモバイルに名称変更することを発表した。ボーダフォンはドコモとauからシェアを奪えず、収益性も低かった日本市場からの撤退ともいえるが、撤退ではなく「強化」であることを強調。ソフトバンクとボーダフォンとの戦略的な提携であり、ソフトバンクは世界の総合デジタル情報カンパニーを目指す。

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ブラウン管テレビ

1926年、浜松高等工業学校(現静岡大学)助教授だった高柳健次郎氏が世界初のブラウン管テレビを開発。同氏はのちに日本ビクターの副社長、技術最高顧問を歴任する。53年にNHKがテレビ放送を開始。このときの放送規格がNTSC方式とよばれるアメリカ式の走査線525本の規格であった。89年にハイビジョンの実験放送が開始されると、NTSC方式からHDTV(High Definition Television)の時代へと突入。ハイビジョン放送の総走査線数は1125本であり、地上デジタル放送はアナログ放送の倍の走査線で高精細な映像を映し出すようになった。アナログ放送にもデジタル放送にも対応するプラズマテレビや液晶テレビの登場で、05年のブラウン管テレビの出荷台数のシェアは48.7%となり、薄型テレビに逆転された。

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ゲートウェイ/マイクロン

デルとともにパソコン直販の御三家として日本に参入。インターネット上で消費者が直接購入するシステムの先陣を切り、派手な宣伝を展開したが、思うように売り上げは伸ばせず、99年にマイクロンが、2001年にゲートウェイが日本市場から撤退。デルのみは売り上げを伸ばし、一人勝ちの結果となった。しかし撤退した2社についても、日本のパソコンの価格をアメリカ並に引き下げた功績は大きく、日本の家庭用パソコンの黎明期を確かに担ったといえる。日本だけでなくアジア一帯から撤退していたゲートウェイだが、04年にeMachinesを買収し、アメリカでPC販売第3位となると、日本での販売を再開。現在はかつてのインターネット販売ではなく店舗販売を中心に展開している。

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レノボショック

2005年3月、コンピューターの生みの親であるIBMが、パソコン事業から撤退。同部門を中国の聯想集団(レノボ・グループ)に売却することを発表し、レノボ・ショックとして話題をよんだ。IBMの同部門の負債は5億ドルであり、この採算性の悪い部門を売却してコンテンツ事業に集中するためと見られた。レノボは10年分の利益に相当する金額で買収。5年間レノボは無償でThinkPadのロゴを使用できる。IBMはPC資産を売却するわけではなく、グローバルなパートナーシップであるとし、パソコン事業の収益性は低いが、関連ビジネスでは着実に利益が上がるため、聯想への投資であると主張している。

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SONY

新しく登場する家電において、規格が統一されていないことは消費者にとってはなはだ迷惑な話である。ビデオテープはVHSが当たり前となったが、ソニー創立30周年である1976年に「ビデオ元年」として鳴り物入りで登場した家庭用ビデオ「ベータマックス」。その名の通りベータ規格のこのビデオの登場は、派手な宣伝もあいまって、一気に一般家庭に普及するかと思われたが、その矢先、日本ビクターがVHS規格のビデオを発表。コンパクトで画質のよいベータとベータより録画時間の長いVHS。互換性のまったくないこの二つの規格に消費者はどちらを買うべきか大いに悩まされた。規格は統一されないまま、家電メーカーはそれぞれの支持する規格でビデオを販売。選択は消費者に委ねられた。しかし低価格化に有利であったVHSが次第にシェアを伸ばし、ベータは一般市場からは撤退を余儀なくされた。SONYも結局VHS製品を出さざるを得ない状況となり、最終的にはVHS市場でシェアを拡大した。現在はDVDの規格がまたもや二つの陣営を張って争っている。SONYや松下電器がブルーレイ規格、NECや東芝がHD DVD。ブルーレイのほうがより容量が大きいが、HD DVDのほうが現行DVDとの互換性が高いなどの違いはあるものの、技術的な違いよりも、電機メーカーや映画制作会社の思惑に左右されている現況であり、規格統合が望まれる。

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