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100年を1秒にしてみると…
著者 白鳥 敬

100年を1秒にしてみると…

胡蝶の夢

もしも100年が1秒に短縮されたらどうなるでしょうか。人間の寿命も同様に短縮されれば、人間は、800ミリ秒の間にこの世を去ってしまいます。これではちょっと空しすぎるので、人間の時間スケールだけは変わらなくて、それ以外のすべてが100年が1秒で経過する世界を想像してみることにします。きっと目の前にぱっとビルが建ったかと思うと、ぱっっと別のビルに変わったりするんでしょうね。

『荘子』に「胡蝶の夢」というお話が出てきます。100年の間、蝶になって花の上を楽しくふらふらと飛んだ夢を見て目が覚めたが、自分が蝶になった夢をみたのか、蝶の夢が自分なのかが判然としない、という話です。100年というのは、意外と短いのかもしれません。

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邯鄲(かんたん)の夢

「胡蝶の夢」と同様の言葉に、「邯鄲の夢」という言葉があります。唐の時代、邯鄲の街で、不思議な枕を借りて茶店でうたたねをしたところ、自分が王となって一生を終えた夢をみたが、夢から覚めると、粟の飯がまだ煮え切らないわずかな時間であった、ということで、人の一生の短さ、儚さを表現しています。これと同様の言葉に、「一炊の夢」「盧生(ろせい)の夢」などがあります。

1000年以上の昔の人の一生は、現在のように80年などといった長いものではありませんでした。「老化の科学入門」(http://www.taishitsu.or.jp/aging/index.html)によりますと、8世紀の日本の平均寿命は20歳に達していなかったそうですし、17世紀でもよくて30歳程度までであったそうです(100年を1秒と仮定すると僅か0.2〜0.3秒!)。ただし、運良く、病気にならず長生きした人は、60歳を超えるくらいまでは生きたようです。

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須臾(しゅゆ)/瞬息(しゅんそく)/弾指(だんし)/刹那(せつな)

小さな時間の単位として、次のような言葉があります。須臾は13.3秒、瞬息は1.3秒、弾指は133ミリ秒、刹那は13ミリ秒。これらの言葉は仏典にある言葉で、ここに上げた数値は一例で、この他いろんな説があります。瞬息はまばたきする間の時間のことです。1.3秒くらいと言われれば、そんなもんかなぁといった感じですね。弾指は指を鳴らす間、刹那は、仏教における最小の時間単位です。100年を1秒と考えたら、人間の一生なんてまばたき1回にも満たないことになりますね。

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人口比急変

先進国は少子化により人口が減少していますが、アジア・アフリカの諸国では、人口が爆発的に増加しているところもあります。総務省統計局の「世界人口の推移」によると、2002年現在の地球の総人口は約62億1100万人ですが、このままの出生率が続くと、2050年には、93億2200人に達するだろうと予想しています。

また、先進国と開発途上国の人口比が、1950年には、先進国32.3%、開発途上国67.7%だったのが、2050年には、先進国12.7%、開発途上国87.3%になると予想しています。100年を1秒とすると、わずか0.5秒の間に、先進国と途上国の人口にはこれだけの差がつくことになります。そうなると、国際社会の社会構造は変化せざるをえないのではないでしょうか。

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人口爆発

ここ100年間で、総人口が1.5倍にもなるというとすごいみたいですが、日本では、明治維新から現在までに人口は約4倍になっていますし、ヨーロッパやアメリカでは、最近200年間で、それぞれ約3.8倍、約52倍になっているといいます。

世界の人口は西暦1年頃は3億、1650年で5億、1800年に9億、1900年で16億と推定されています。つまり西暦1年から1800年間では3倍、1800年からの200年間(100年を1秒と考えればわずか2秒)では7倍に増加したということになります。

産業革命以降の産業の発達とともに、人口の爆発的な増加がおこっているわけで、途上国のみが人口増加の原因ではないことがわかります。

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1人当たり土地面積の変化(日本)

約130年前の1872(明治2)年に初めて全国戸籍調査が実施されました。その当時の日本の人口は、約3311万人。現在の日本国の人口は、1億2771万6000人(「平成16年11月1日現在推計人口(総務省統計局)」による)。133年の間に、約3.9倍にもなっています。日本の面積37万8000km2を人口で割ると、1人当たりの面積は、約3000m2

おおざっぱにいって一辺が55mの正方形の土地が1人分の土地ということになります。意外と小さいもんですね。それに較べると、133年前は、日本の国土の面積が今と同じとして、1人当たりの土地は、一辺107mの正方形です。

100年が1秒だったら、まばたきする間に、自分の土地は約4分の1になっているわけですね。ちょっとショックかもね。

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1人当たり陸地面積の変化(世界)

100年を1秒に圧縮すると、西暦1年から2000年までが、たったの20秒です。まばたきを20回ほど繰り返す間に、地球上に3億人しかいなかった人間が63億人に増えるのです。地球の表面積は約5億km2、そのうち陸地は30%ほどですから、人間が住める地表部分は、約1.5億km2。砂漠など人間が住むのに適さない土地もありますが、とりあえずそれは無視して、1人あたりの陸地面積を計算すると、西暦1年で、0.51km2、西暦1800年で0.17km2、西暦2000年で0.024km2となります。正方形にすると、それぞれ一辺の長さが約714m、412m、154mです。

100年が1秒だったら、まばたきを20回する間に、お隣さんがぐんとそばに近寄ってくるわけです。これ以上近づくと、お互いに不快感ででてくるのでは?

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食糧問題

2050年の世界の総人口は約93億人と大幅に増加すると予想され、逆に日本の人口は、このまま少子化が進めば、同年には、1億593万人まで減少すると予想されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」の中位推計による)。

この予想通りに進めば、2050年には、地球の陸地面積のうち、126m四方の面積しか割り当てられないことになります。2000年における面積の約67%です。1人当たりに割り当てられた枡の中で作物をつくって自給自足をすると仮定すると、食べ物の量が67%になってしまうということになります。

日本だけで考えれば、1人あたりの面積は少し増加しますが、世界的にはますます窮屈になります。

100年が1秒だと仮定して、まばたきを“2分の1”回する間に、こんな時代がやってくるのですね。

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