月刊基礎知識
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戦後60年に去来したブームたち

その他のブーム

海外別荘ブーム

1973年版本誌掲載。以下、

過密と公害の日本を逃れて、海外に別荘を持つ人がふえてきた傾向をいう。まだまだ数は少ないが、こうした傾向は、昭和46年7月に大蔵省が海外不動産の取得に対する制限をゆるめてからのことで、ハワイは言うに及ばず、北はアラスカから南はフィジー島にまで及んでいる。総額150万円から1000万円と庶民には高嶺の花だが、不動産業者の進出は盛んで、中にはヨーロッパの中世の古城を売りに出しているところもある。

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超能力ブーム

1975年版本誌掲載。以下、

テレパシー、霊感、透視術といった「超能力」の世界は、「空飛ぶ円盤」と並んでいまだ現代科学の挑戦をはねつける、あこがれのテーマだ。それにしても、昨今のブームはすさまじく、超能力者と言われているユリ・ゲラーがテレビに登場したり、「オカルト」(C・ウィルソン)「ノストラダムスの大予言」などの本が飛ぶように売れ、ユリ・ゲラーに触発されてか小学校5年生の関口淳君のようなスプーン曲げ少年も続出、その後も映画“エクソシスト(悪魔払い師)”に長蛇の列ができるなど根強いブームとなっている。科学の高度な発達に対する反動的不信感がブームの原因と説く学者もいる。

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泡ブーム/ムース

1987年版本誌掲載。以下、

最近泡状の化粧品がブームとなっている。機能性、新しさ、面白さ、おしゃれ感覚が大衆にアピールしたといえる。ヘアケア効果があり、泡状のものは油のほかに水もベースになっているため、セットはさらっとした仕上がり感があり、残った泡は水で洗い落とせるうえ、1回の分量も解り、液体とちがって流れ落ちないなどのメリットが人気を呼んでいる。整髪料、洗顔料、養毛料、トリートメント、その他ハンドクリーム、ファンデーションクリームなど、数多くの泡製品が各メーカーからそれぞれのセールスポイントで売出されている。なおムースは資生堂の登録商標。

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魔界ブーム

1987年版本誌掲載。以下、

片思いの相手の気持ちをこちらに向けさせたり、夢を叶えるのに効用があるという白魔術が注目を浴びている。東京・銀座にある白魔術ショップでは「オイル」や「インセンス」といった白魔術グッズを買い求める若い男の子や女の子が跡を絶たないという。こういった分野をとり扱っている月刊誌「ムー」(学研)は35万部を誇り、超能力の身につけ方や霊魂の輪廻・転生、アストラルトリップ(霊が肉体から離れ、他の場所に行くこと)といったテーマに、読者は関心があるという。悪魔に扮しているとしか思えないロックバンド「聖飢魔II」の人気も高い。魔界はもはや“悪”を運びこんでくる邪悪な世界ではなく、“現実”をより充実するためにある世界と捉えられているようだ。

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男性化粧品ブーム

1988年版本誌掲載。以下、

男性化粧品が予想外に売れている。男が化粧するのは当たり前とみなされ始めている。しかし、驚くことはない。身だしなみとしてのグルーミングが、数年前から注目されていたから、当然の成り行きともいえるのだ。

化粧品ばかりではない。男性下着も変化しつつある。女性のパンティと同じように布地が極端に小さい、いわゆるハイレッグカットのブリーフが現れたり、鉄人28号やまぼろし探偵など、なつかしのヒーローをプリントしてあるユニークなトランクスが登場したりと、様変わりを見せているのだ。

ユニセックス文化のもてはやされた1970年代以降に生れた世代にとっては、それほど抵抗を感じないものなのだろう。偶然かもしれないが、当時の一大ムーブメント、グループ・サウンズもこの世代に見直されており、ネオGSとして復活しているのは不思議といえば不思議だ。

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占いブーム

1988年版本誌掲載。以下、

占いは、それを信じる人の気力を出させるのには効果的な方法で、社会的な不安が増すと流行することから「不安産業」と呼ばれている。この占いがとくに小、中、高校生の女のコの間でブームになっている。占う内容は、以前は試験関係が多かったが、最近は恋愛の悩みがダントツだそうだ。第3次といわれる占いブームのカリスマ的存在は、何と言っても細木数子だ。彼女の単行本は数ある占いの本の中でもズバ抜けた売行きをみせている。また、単行本に対し「マイバースディ」「レモン」といった占い雑誌も部数を伸ばしており、さらに低年齢層に向けて同雑誌の姉妹版も創刊された。

本、雑誌ばかりではない。原宿・竹下通りにある「占いの館」は、ビルの1階に9つの占い部屋があり、水晶占い、タロットカードなど好みに応じられるようになっている。毎週土、日曜日になると、占いファンがゾクゾクとつめかけ、列をなすという繁盛ぶりだ。この他、占いと美容院、喫茶店、バーなどが一体になった店も登場して話題となった。

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101ブーム

1989年版本誌掲載。以下、

中国育毛剤「101」が話題になっている。北京の趙章光医師が考案した漢方薬で、中国国内では脱毛症や薄毛の治療に効果があるとされている。ただし、日本では薬事法に基づく認可が出ておらず、市販されていない。それなら中国に出かけ趙医師の診断を受け101を買ってこようとツアーが組まれ、これが流行しはじめた。3泊4日で37万9000円だが、日中交流サービス(東京・本社)ではすでに8回約260人を送り出している。同様な企画をしている会社が全国で7、8社あり、訪中者は4月までに延べ1000人にもなっている。旅行は無理という人のために個人輸入をはじめたのはトップマスト(本社・京都)で、101の輸出権を持つ中日飛達連合公司(本社・香港)と交渉の結果、年間20万本の供給をうけることになった。購入者は、5000円払って個人輸入の会員になり、輸入代行の依頼書に「第三者には転売しない」という誓約書を入れる。1本(100cc)で1万1000円。

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屋形船ブーム

1989年版本誌掲載。以下、

東京湾で昔ながらの屋形船の進水が相次いでいる。4年前、数軒の船宿が屋形船を復活させたのを皮切りに、87年夏には40隻に増え、88年はこれまでの40〜50人乗りを大きく上回る定員70人の大型船が次々と登場している。客の人気も上々で、週末の予約をとるのがむずかしいほどであった。得意先の接待や会社の仮装パーティ用などが多いが、個人の申し込みも多いという。市民の遊びがウォーター・フロントから水の上にまで乗り出してきた形。

料金は1人7000円から1万円程度。15人から20人以上の貸切りが原則。都内各所の船だまりから出発、お台場付近で錨をおろして停泊して帰ってくる3時間コースが主流。船の中で船頭がキスやメゴチ、アナゴなどの天ぷらを食べ切れないほど揚げてサービス、刺し身もなどもつく。カラオケも積み、トイレも備えつけられているから女性客も安心。たたみと障子の座敷を備え、半てん姿の船頭が乗り込み純日本風なところがうけて、外資系ファッション会社が外国人ばかりの一団で仮装パーティに使ったこともある。個人で楽しみたい人たちのため日本交通公社では相乗りの屋形船をはじめた。1人7000円の天ぷら食べ放題コースと、1万円の食べ放題・飲み放題の2コースがあり、都内の各営業所で受付けている。隅田川も30年代後半からPCB汚染の影響で、船の上で料理を楽しむ「あみ船」も休業していた。屋形船の復活・流行は隅田川がきれいになった証拠ともいえる。

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雑貨ブーム

1989年版本誌掲載。以下、

生活が豊かになり、必需品が満たされた後、消費の動向は身近の小道具、雑貨(グッズ)に向かっている。文房具(ステーショナリー)、アクセサリー(靴・バッグ・装身具)、スポーツ、キッチンと多方向にひろがっているが、どの分野でも、生活のニーズに合わせたデザインやアイテムを新しくして、現在、雑貨ブームといわれる現象を起こしている。例えば、文房具では、伊東屋の売り上げが、1、2年で200%の伸び、なかでもシステムノートは、若者というより、中年層にひろくゆき渡っている。

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第3次ハイオクブーム  High Octane Gasoline

1994年版本誌掲載。以下、

ハイオクガソリンを正確にいえば、ハイオクタンガソリンとなる。ガソリン性能の評価のひとつに、オクタン価があり、これは、エンジンがノッキング(異常燃焼)を起こしにくくする指標の一つで、オクタン価が高いガソリンを使えば馬力の出るエンジンとすることができる。逆に、高出力を出すためにオクタン価の高いハイオクガソリンを指定するエンジンもある。ところで、市販されているガソリンは、レギュラーとプレミアムに分かれるが、レギュラーガソリンのオクタン価は約90、プレミアムガソリンのオクタン価は約100となっている。レギュラーよりオクタン価が高いため、プレミアムガソリンのことを一般にハイオクガソリンといっている。近年のハイオクブームのきっかけは、MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)という物質をガソリンに入れたことで、従来のプレミアムガソリンに比べ酸素分子含有量が増えることから、エンジンの始動性が良くなる、燃費が良くなるなどの効果があるとされ、売り上げを伸ばした。一方、オクタン価が高くなったわけではないので、ハイオクガソリンというのはふさわしくなく、価値の高まったガソリンという意味で、プレミアムガソリンというほうが好ましい。

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スリミングコスメブーム

1997年版本誌掲載。以下、

“ぬるだけで痩せる”という衝撃のコピーでダイエットに悩む日本女性たちをあっという間に魅了したクリスチャン・ディオールのスヴェルトに続け、とばかりに96年は夏前までにほとんどのメーカーからスリミングコスメが発売され、大スリミングコスメブームとなった。そのテクスチャーはほぼスヴェルトを踏襲したものが多く、名前やパッケージデザインまでそっくりなものも登場した。

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マイ・ブーム

1997年版本誌掲載。以下、

若者語の一つで、自分が秘かに気に入っていること。「穴の開いた靴下を重ねてはくのがマイ・ブームなのよね」などという。個人的な好みを“自分の中の流行”と言い換えるライフスタイル。造語者は、みうらじゅん。

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小顔ブーム

1998年版本誌掲載。以下、

「アムロちゃんのように」、また「スーパーモデルのように」カッコよく服を着こなしたい女性たちの間で「小顔」づくりが一大ブームに。顔用のスリミング化粧品が売れ行きを伸ばし、女性誌では小顔をつくる化粧法や表情筋のエクササイズなどが多数紹介されている。たしかに小顔のほうが洋服を着るにはバランスがよく、ブームは当分続くだろう。

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iブーム

2000年版本誌掲載。以下、

小文字の「i」を冠した商品が続々。「i」はinternetの「i」で、1998年8月発売されたアップル社のiMACが発祥だが、米シリコンバレーでは94年誕生したブラウザ、ネットスケープ以来「iビジネス」が大爆発。いまや好景気アメリカの基幹産業である。それが今年(99年)になって、NTTドコモの携帯電話「iモード」のヒットとともに速力を増し、カメラや文庫のシリーズにまで採用された。就職情報誌『とらばーゆ』の表紙は「i私らしく、僕らしく」とコピーが入っていて、単なる新型テクノロジーを超えた流行語に。

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字幕ブーム

2000年版本誌掲載。以下、

とくにTVのバラエティに関して不要な字幕が増えた。『進ぬ!電波少年』やダウンタウンの音楽番組『HEY! HEY! HEY!』などでは、まるで劇画の吹き出しをみるように凝った字幕が連発される。『広告批評』島森路子編集長が指摘するように、「美的感覚に大きな影響を及ぼすテレビ画面が汚れていく」ことは大問題かもしれない。が、映画監督の森田芳光が邦画が洋画に負けるのは字幕がないせいだと、自分の日本語映画にあえて字幕を採用したところをみると、そもそも映像文化における音声は欠陥があるのかもしれない。オペラ界でも『薔薇の騎士』はじめなじみにくかった西洋文化が再発見されたのは、字幕を用意してから。映像文化が活字を追放するという予言がまかりとおったが、結局のところ、「文」を用いてしかわれわれは考えられない。字幕ブームは必然だろう。

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