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ベストセラーから生まれた流行語
 

ベストセラーと「族」

斜陽族

1947(昭和22)年発表の太宰治の小説「斜陽」が語源。戦後の没落した上流階級を意味する言葉。「太陽族」など○○族という言葉の元祖といえる。太宰自身は青森県屈指の大地主、地方名士の6男。連載の始まった同時期に、元子爵の高木正得(三笠宮妃の父)が生活苦から自殺するという事件が起こっている。翌48年、さらに太宰本人が、未完の長編小説「グッド・バイ」を残して、玉川上水で愛人の山崎富栄と入水自殺をしたのち、「斜陽族」という言葉が使われ流行語になった。遺体が発見されたのは、太宰の39歳の誕生日であった6月19日であったため、この日は現在でも太宰を偲んで「桜桃忌」が三鷹の禅林寺で行われている。桜桃忌は、晩年の名作「桜桃」から名付けられた。太宰はそれまでに4度の自殺未遂を起こしていた。夫人への遺書には「あなたをきらいになったから死ぬのでは無いのです。小説を書くのが、いやになったからです」と書かれてあった。

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太陽族

1956(昭和31)年に芥川賞を受賞した石原慎太郎の小説「太陽の季節」から。無軌道な青春群像が描かれ、その反倫理性は、婦人団体やPTAからは映画の上映制限運動も起こるなどの社会問題となり、無軌道・不道徳な若者は「太陽族」と呼ばれた。スポーツ刈りの前髪を額にたらしておく髪型は「シンタロー刈り」と呼ばれ、太陽族の間で流行した。同年映画化された際、撮影所に遊びに来ていた弟・石原裕次郎が端役で出演。太陽族映画第2弾となる「狂った果実」で主役に抜擢され、一気にスターとなった。

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抵抗族

1956(昭和31)年の読売新聞に連載された石川達三の「四十八歳の抵抗」から。見合い結婚をして妻と娘の3人暮らし、真面目にこつこつと生きてきた中年サラリーマンが、現代の倫理と48歳の肉体に抵抗していく心理が描かれる。人生の何かに抵抗したくなる真面目一方の男たちが、抵抗族と呼ばれるようになった。

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夕暮れ族

1979(昭和54)年、吉行淳之介の野間文芸賞受賞小説「夕暮まで」から生まれた言葉で、若い女性と中年男のカップルのことを意味する言葉として流行した。大学生は「優くれ族」などのダジャレも生まれた。この頃、結婚にとらわれず、自立して生きていこうとする「翔んでる女」という言葉も流行。1983年には、若い女性が経営する夕暮れ族という名の愛人バンクが売春斡旋容疑で摘発され話題になった。

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クリスタル族

1981(昭和56)年、当時一橋大学の学生だった田中康夫のベストセラー小説「なんとなく、クリスタル」から生まれた言葉。流行の最先端を生きる女子大生の自由な日々を描き、有名ブティック、ブランド名、ミュージシャンなどが注釈付きで盛り込まれたこの作品の影響で、このようなカタログ文化にかぶれた若者、ブランド信仰の女子大生などが「クリスタル族」「なんクリ族」と称されるようになった。

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