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トラブルや法律紛争から1年を振り返る用語集
執筆者 山口アイ子

コンプライアンスの2004年

コンプライアンス

法令遵守の意味。近年、雪印乳業の食中毒事件(2000(平成12)年)、雪印食品の牛肉偽装事件(02年)、三菱自動車のリコール隠し(00年)など、企業が営利を優先して法令違反を行ったことによって消費者に不利益を与えるような事態が相次いだことから、企業のコンプライアンス(法令遵守)環境の強化が重要視されるようになった。対象としては、商法や独占禁止法などの具体的な法律のほか、企業間ルールや社員の倫理観なども含まれることが多い。法令を守ることは当然のことながら、一部の社員が法令違反を犯しただけでも会社全体の業績に多大な影響を与えることから、経営上のリスク管理の意味でも多くの企業が取り組んでいる。

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公益通報者保護法

法令違反に関する情報提供を行った者が解雇や減給といった不利益を受けないように保護する目的で制定された法律。2004(平成16)年6月制定。対象は公務員を含む現役の労働者。食品衛生法や証券取引法など一定の法律についての違反について通報する場合に保護される(新聞社など外部への通報については保護対象となる条件が厳しくなるなど通報先によって保護内容が異なる)。取引先など部外者からの告発は対象にならないなど、保護の対象が限定されている点が論議の的となっている。

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内部告発通報制度

公益通報者保護法の施行に伴い各企業、公共団体が独自に設けた制度。NHKはプロデューサーが詐欺で逮捕されるなどの不祥事が起きたのを受け、2004(平成16)年9月に内部告発の通報窓口を設置。12月には窓口に番組作成に対する政治介入などの告発が寄せられたが、その後調査が進まなかったことから告発者が記者会見を行うなど大きな問題に発展している。

編集部注:05年2月、北海道庁は保護法が対象とする法律以外の法律、条例などを含め、すべての業務の通報を保護対象とする要綱を作成した。

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三菱自動車工業のリコール隠し

リコールとは、企業が製造・販売する自動車に、安全上・公害防止上、国が定めた保安基準(道路運送車両法に基づく)に満たない構造上の欠陥がある場合に、国土交通省に届け出て欠陥部品の回収、無償修理などを行うことをいう。2000(平成12)年、三菱自動車工業で30年間に渡って自動車の欠陥などを隠匿し、リコールをしなかった(リコール隠し)ことが発覚。その後、03年には系列の三菱ふそうでも同様のリコール隠しが発覚し、グループ全体の問題隠蔽体質と非難されて信用が失墜したうえ、ドイツの大手自動車企業ダイムラー・クライスラーとの提携が解消されるなど大打撃を受けた。三菱自動車工業では現在、外部から人を招いて企業倫理委員会を設置するなどしてコンプライアンス体制を強化し、企業再建を図っている。

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トナミ運輸事件

2006(平成18)年に施行予定の公益通報者保護法では、新聞社など外部へ向けた告発は解雇等が行われることが明白な場合や、生命や身体への危険がある場合のみが保護対象となっており、告発の効果が問題視されている(05年2月、富山地裁で「正当な内部告発は法的保護に値する」との判決が出された)。この訴訟は、1973(昭和48)年に大手運輸会社の「トナミ運輸」において、運賃水増しなどをめぐる違法行為があることを新聞社に告発した社員が、30年間に渡って処遇や人事面などで不当な扱いを受けたことに対する損害賠償を求めて02年に提訴したもの。判決では報復人事を認めたうえで会社側に対し、一部損害賠償金の支払いを命じており、公益通報者保護法の適用を受けられない内部告発者にも裁判による法的保護の可能性を示した内容となった。

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