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トラブルや法律紛争から1年を振り返る用語集
執筆者 山口アイ子

わいせつ罪の2004年

わいせつ性

2002(平成14)年、警視庁はわいせつ図画を販売したとして東京都の出版社「松文館」の社長などを逮捕。対象となったのは同社発行のマンガ本だった。マンガ本のわいせつ性が問題となった摘発は初めてで、裁判での判断が注目されたが04年1月、東京地裁は該当のマンガのわいせつ性を認め、出版社社長に懲役1年執行猶予3年の判決を下した。判決文では、該当本の内容の大半が性器や性交部分であること、芸術性・思想性など性的刺激をやわらげる表現がほとんどないこと、性的部分に施される「消し」と呼ばれる修正が弱く、ほとんど効果をなしていないことなどから読者の性的興味に訴えるものであると判断している。被告側は判決内容を不服として控訴、05年には被告側証人として「あしたのジョー」などで有名なちばてつや氏が出廷し、「マンガ文化発展のため」に証言するという。

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強制わいせつ罪

13歳以上の男女に暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること、または13歳未満の男女に対してわいせつな行為をすること。6か月以上10年未満の懲役が科せられる(刑法176条)。わいせつな行為とは、加害者の性的欲求を満たすための行為。電車内のちかん行為などは被害者を殴ったり、言葉で脅すような行為がなくても身体に触れるという行為そのものが暴行または脅迫と判断されて強制わいせつ罪が適用される。2004(平成16)年、亜細亜大学の野球部員5人が、電車内で20歳の女性を囲んで痴漢行為をしようとしたとして、強制わいせつ未遂の容疑で逮捕された(その後、この件については全員不起訴処分に。ただ、うち一人は別件で起訴された)。

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公然わいせつ罪

不特定多数の人間の前でわいせつな行為をした場合に問われる犯罪(刑法174条)。2004(平成16)年、通勤途中のバス内で下半身を露出したとして福岡県在住の男性が逮捕されたが、05年の判決では無罪となった。これは、男性が義足の使用者で、車中で義足の装着部分が痛くなり、ズボンを下ろして調節する必要が生じたとの男性の言い分が認められたもの。つまり、公然と下半身を露出するような行為であっても、そこにわいせつ性がなければ罪にならないということになる。

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わいせつ物陳列罪

わいせつな文書、図画などを公然と陳列(店頭に並べたり、映画館で上映するなど)した者には2年以下の懲役または250万円以下の罰金等が科せられる。近年、パソコンを利用したわいせつ画像の扱いが問題になっており、わいせつ画像を記憶させたハードディスクをネットオークションで販売していた会社員や、インターネットプロバイダのサーバーにわいせつ画像を登録し、不特定多数の契約者が閲覧できるようにしていた者が有罪となっている。

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青少年育成条例

青少年の健全な育成を目的として制定された各自治体の条例。青少年の健全な育成を阻害する行為を規制したり、良好な環境を整備することなどを定めたもの。たとえば、18歳未満の青少年とのわいせつ行為などを禁止している。2004(平成16)年、国士舘大学のサッカー部員15人が16歳の少女とわいせつ行為に及んだことで逮捕された事件では16歳の少女と最初に会った学生の間に合意に近い状態があったとみられるため、刑法の強姦罪・強制わいせつ罪は適用されなかった(強制わいせつ罪は13歳以上の男女については暴行または脅迫がなければ適用されない)が、14人についてはあっせんとみなされ、都青少年育成条例違反が適用された。なお、東京都は18歳未満とのわいせつ行為を全面的に禁じるよう条例改正を進めており、05年4月には施行の予定。

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日本版メーガン法

メーガン法とは性犯罪者の再犯防止を目的として、1996年にアメリカで制定された法律。その内容は、性犯罪者の住所などについて情報を公開するというもの。2004(平成16)年11月、奈良県奈良市で起きた小学1年生女児の誘拐殺人事件の犯人として36歳の男性が逮捕されたが、この男が89年に幼女への強制わいせつ罪で送検、91年には女児を絞殺しようとした殺人未遂で逮捕・起訴され、服役していたことから性犯罪者の再犯性が問題視されるようになった。実際には性犯罪者の再犯率が目立って高いという具体的なデータは出ていないものの、事件の重大性から、法務省と警察庁が協議。法務省が、幼児(13歳未満を想定)に対する性犯罪者に限定して刑務所からの出所日や出所後の住所などの情報を警察庁に提供することで基本的に合意した。日本版メーガン法の制定については、賛否が分かれている。

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