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トラブルや法律紛争から1年を振り返る用語集
執筆者 山口アイ子

偽造の2004年

通貨偽造罪

使用する目的で貨幣や紙幣を偽造したり変造したりする犯罪。2004(平成16)年11月、ホログラムなど最新の偽造防止技術を駆使した新紙幣が発行された。これに伴い、旧紙幣の偽造が急増。多くはカラーコピー機を使ったもので、逮捕された犯人の中には中・高校生も含まれるほか、全国的に同じ記番号が入ったものが見つかるなど組織的な犯行の可能性も指摘されている。通貨偽造は重大な犯罪行為で、使用する目的で偽造をした場合は無期懲役または3年以上の懲役(刑法148条)、偽造通貨と知りながら使用した場合は額面の3倍以下2千円以上の罰金(刑法152条)が科せられる。

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文書偽造罪

正当な権限がないにもかかわらず勝手に文書を作成する犯罪のこと。家庭用プリンター、カラーコピーの高性能化などもあって、さまざまな文書の偽造も増加傾向にある。最近発生したものだけでも偽造・変造旅券を使った不正出入国、偽造した納税証明書によって銀行で融資をだましとった詐欺、免許証を偽造してネット販売、借用書を偽造して他人名義で借金をする詐欺などの事件があった。

文書偽造にはさまざまな種類があるがいずれも刑法に規定された犯罪。納税証明書や免許証など公的な文書を、作成する権限のない者が偽造した場合は公文書偽造の罪で1年以上10年以下の懲役。借用書など他人の名義で権利義務、事実の証明などに関する文書を作成した場合は私文書偽造の罪で3か月以上5年以下の懲役が科せられる。また、偽造された文書を使用した者も同一の刑に処せられる。

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スキミング

クレジットカードなどの情報を「スキマー」と呼ばれるカード情報読み取り装置を店舗のレジなどに据えつけるというような方法で情報を盗むこと。盗んだ情報を利用して偽造カードを作成し、限度額まで物品を購入したり、キャッシングをするなどの事件が横行した。そこで、2001(平成13)年6月、刑法に「支払い用カード電磁的記録に関する罪」が追加された。他人の財産を侵害する目的で偽造カードを作成すると10年以下の懲役または100万円以下の罰金(163条の2)、偽造カードを所持していると5年以下の懲役または50万円以下の罰金(163条の3)、スキミングにより情報を取得したり、事情を知った上で情報提供をしたりすると3年以下の懲役または50万円以下の罰金(163条の4)が科せられる。

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ゴルフ場でのスキミング被害事件

2005(平成17)年1月、群馬県の有名ゴルフ場の支配人らが窃盗と支払い用カード電磁的記録情報取得などの疑いで逮捕された。ゴルフ場に来た客が貴重品ロッカーに預けたキャッシュカードをマスターキーを使って抜き取り、「スキマー」という機械を使って電磁情報を取得。偽造カードを作ってATMから現金を引き出していた。抜き取ったキャッシュカードはスキマーに通した後ロッカーに返されていたため、客はその場では気づかなかったという。

※編集部注:05年2月には高知地検の事務官などが業務の関係で入手した他人の運転免許証の写しを悪用し、借金をするという詐欺事件で逮捕された。この場合、他人の権利を証明する文書を使用しているので私文書偽造・同行使の罪にもあたる。

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スキミング被害対策

銀行と預金者の契約(約款)では、本人がカードや暗証番号管理に落度がないと証明できた場合を除き、銀行は損失を補償しなくてよいことになっている。そのため、スキミング被害にあっても、多くの預金者は十分な保護をうけられず、泣き寝入りしているのが現状である。そこで、2005(平成17)年には金融庁が銀行に対し預金者保護を要請するなど対策が急務とされ、一部銀行が損失補てんの検討を始めたほか、カードを偽造しにくいIC(集積回路)チップ入りにする静脈など生体認証機能を持たせる、ATMの使用時間を電話で調整できるようにするなどといった案が検討されている。

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