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トラブルや法律紛争から1年を振り返る用語集
執筆者 山口アイ子

詐欺の2004年

振り込め詐欺/オレオレ詐欺

電話口で身内を装って金銭を要求し、銀行口座などに振り込ませるという詐欺。当初は、高齢者などに「おれ、おれ」と名乗り、息子や孫などと思いこませる手段が多かったため「オレオレ詐欺」と呼ばれた。その手口がマスコミなどで報道され、警戒が強まるようになると、今度は複数人で、弁護士や警察、身内、被害者などを装い、「ご主人が交通事故を起こした」「息子さんが女性を妊娠させた」などの話をでっち上げる劇場型の手口が増加。手口の変化を受けて警察が「振り込め詐欺」と呼称を変更した。

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組織的詐欺罪

刑法の詐欺罪(10年以下の懲役)よりも重い、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)に規定されている(1年以上20年以下の懲役)。

※編集部注:2005(平成17)年1月には会社のように組織をつくり、マニュアルを作成したりノルマを課すなどして振り込め詐欺を行っていた集団が逮捕され、この法律が初めて適用された。

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本人確認法

架空口座がテロ組織の資金供与に利用されるなど悪用されることを防ぐための法律。2003(平成15)年には「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(本人確認法)」が施行され、口座開設や多額の現金取引を行なう場合には金融機関で免許証などの提示をすることが必要になった。ネットなどを通じて実在の口座を売買する方法が横行したため、04年、法律名を「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」と改め、不正な口座売買を禁止(50万円以下の罰金)し、口座売買を商売とする口座屋などには2年以下の懲役または300万円以下の罰金を科す(両方の場合もある)こととした。

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支払督促の異議申し立て

債権者(お金を支払ってもらう権利のある人)が簡易裁判所に支払督促の申し立てをすると、裁判所の書記官から債務者(お金を支払う義務のある人)に督促状が送付される。債務者が14日以内に「異議申し立て」という手続きをしないと、実質的にお金を支払う義務を認めたものとして扱われ、最悪の場合は財産の差押えなどが行われるというもの。支払督促の申し立てにあたっては、債務者に対して事実関係の確認などは行われず、正当な請求でなくても申立てが通ってしまうことがある。裁判所からの督促状を受け取ったらまずは最寄りの消費生活センターなどへ相談するとよい。

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刑法上の詐欺罪

「人を欺いて財物を交付させた者」(刑法246条)に科せられる。詐欺罪が成立するためには、金銭などの財産を出させるためにうそをつき、相手をその気にさせて財産を取り上げる、という行為が必要。例えば、振り込め詐欺で身内を装って信用させ、金銭を実際に振り込ませれば詐欺罪が成立するが、相手が途中で嘘に気づいて振り込みをしなかった場合は詐欺罪は成立しない(この場合は未遂罪となる)。

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民法上の詐欺

「騙すという意識を持って嘘をつく」という行為は刑法・民法とも同じだが、刑法上の詐欺罪の成立には財物(金銭など)が実際に動くことが必要であるのに対し、民法ではその必要はない。民法上の詐欺(民法96条)の場合、詐欺によって行った意思表示は取り消すことができる。例えば、架空の商品カタログを配布した業者と、それを見て申込をした消費者がいた場合、申込をした時点でいったんは商品売買契約が成立したことになるが、申込者は代金の支払をせずに一方的に契約を取り消すことができる、ということになる。

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