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春はどこから?
著者 白鳥 敬

春はどこから?

桜咲く

今年の桜の開花日は、東京では3月18日でした。これは、平年より10日早かったそうです。では、平年とはなんでしょう。平年とは、過去30年間の平均値を言います。現在は、1971年から2000年までの30年の平均値を使っています。

桜の開花日は、ソメイヨシノの開花で示されます。基準となる木に花が5〜6輪開いたときを開花日としています。東京の基準木は靖国神社にあります。ちなみに、2002年までの開花基準は「花が数輪咲いた状態」でした。

では、満開とはどんな基準でしょうか。満開は、花になる芽のうち約80%が開花した状態を言います。満開といっても100%ではないのですね。

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桜前線

毎年、冬の終わりになりますと気象庁が全国の桜の開花予想日を発表しています。日本地図に、開花時期が等しいところを線で結んだ「桜前線」が描かれていて、これが発表されるともうすぐ春だなあと実感させられます。

 ところで、この開花前線の速度ってどれくらいでしょうか。本州最南端の鹿児島の開花平年値は3月26日、最北端の青森の開花平年値は4月26日です。鹿児島・青森間の距離は約1400km、その距離を約1か月かけて桜前線が北上しますから、その移動速度は、時速約2kmとなります。人間がゆっくり歩くくらいの速度で着実に北上しているのですね。

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平年並み

今年は、桜が咲く頃の寒暖の差が大きく、桜の開花から満開まで時間がかかりました。そのおかげで、いつもより長い間、桜を見ることができたのは得だったかもしれませんが、体調を崩した人も多かったのではないでしょうか。

今年の桜の開花は、3月18日と、平年より10日も早かったのですが、「平年より早い」の基準は、平年値より3日以上早い場合を言います。「平年よりも遅い」は、平年値より3日以上遅い場合、そして「平年並み」は、平年値との差が2日以内の場合を言います。

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桜散る

咲いた桜は、1週間ほどで散ってしまいます。この「はかなさ・いさぎよさ」が日本人に愛される理由でしょう。ところで、今年の東京の桜は、3月18日に開花したあと、低温が続き、満開まで10日ほどかかりました。

桜の開花から満開までの日数は、開花したあとの気温によって違ってきます。気象庁の資料によると、東京における1929年以降の、開花から満開までの最短記録は、1931年と1964年の3日。最長記録は、1937年の20日。最近では、2001年以降昨年までの3年とも5日とかなり短期間で満開になっています。なお、戦争のどさくさのせいでしょうか、1944年から1949年までは記録が残っていないようです。

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春一番

日本人が最初に春を感じるのは、昨日までの寒さがうそのように、突然、暖かい南風が吹いたときではないでしょうか。上空3万mを東西に流れるジェット気流が少し北上し、低気圧が発達しながら日本海を北東に進むとき、低気圧に向かって強い南風が吹き込みます。

 この風が一定の基準を満たすと「春一番」と記録されます。関東地方の「春一番」の条件は、立春から春分までの間で、日本海に発達中の低気圧があり、東京の最大風速は8m/s以上、風向は西南西から東北東の間で、前日より気温が高いこと、となっています。

 今年の「春一番」は、2月14日でした。気象庁の資料によると、東京の、いちばん早い記録は1988年の2月5日、最も遅い記録は1972年の3月20日となっています。

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柳につばめ

「柳につばめ」。なかなか絵になる風景ですね。戦前は、この題材が「胸の振り子」という甘い歌謡曲としても愛唱されました。ところで、柳が芽を出す時期とつばめがやって来る時期って一致しているのでしょうか。そんな疑問を持って、ちょっと調べてみました。

つばめの初見日の平年値は、理科年表によると、鹿児島で3月6日、東京で4月3日、青森で4月24日となっています。いっぽう柳は、というと、なかなか開花の平年値がわからないのですが、東京でおおむね3月の半ば頃と思われますので、4月の初めには、青々とした葉っぱをいっぱいつけて春風にそよいでいることでしょう。

そういうわけで、「柳につばめ」は、やはり春を感じる絶好の取り合わせと見ました。

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水ぬるむ

水を掬う手がなんとなく暖かく感じるのは、春が近づいている証拠です。わが家の水道水も、つい先日までは、出すほどにに外気の温度に近づき、手がかじかむくらい冷たかったのですが、3月半ばをすぎると、ぴりっとした冷たさはなくなりました。

春が近づくと、太陽の南中高度が高くなっていき、日射量が増えるので、太陽からの赤外線(熱)も多くなります。大気にも土にも水にも少しづつ熱が蓄えられて暖かくなっていくのです。

気象庁の日本周辺の海面水温の観測データ(http://www.data.kishou.go.jp/marine/ocean/index.html)を見てみますと、今年は、3月1日に、房総半島沖で14℃くらいだったのが、10日には16℃、26日には18℃まで上がっています。

「水ぬるむ」という感覚は、まさに肌で感じる季節のうつろいと言えるでしょう。

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山笑う

「水ぬるむ」とともに、俳句の春の季語になっている「山笑う」は、山の木々の固いつぼみがふくらみ、山肌の色が暗い色から明るい色に変わりつつある状況をいいます。山全体が春が近づいた楽しさで、笑っているかのように見えることからそういうのでしょう。

しかし、春の山は、危険がいっぱいです。急に暖かくなると、雪崩がおこる可能性があります。雪崩には、短時間に大量の積雪があったときにおこる表層雪崩と気温が上がったときにおこる全層雪崩があります。全層雪崩は、秒速10-25m、時速にすると36-90kmといった速さで流れますから、巻き込まれたら逃げることができません。

笑う山は、遠くから見てるのがいちばんかもしれませんね。

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蜃気楼

蜃気楼は、ある気象条件がそろわないと見ることができないので見える場所や見える時はかなり限られています。その気象条件とは、冷たい海面上に暖かな空気が流れてきたときです。海面のすぐ上にある寒気の層の厚さと、その上の暖気との温度差とかの微妙な具合で見えたり見えなかったりします。条件が整えば、海面上数mの冷たい空気の層を光が屈折して進み、遠くの風景が見えてきます。

蜃気楼が見えるところといえば、富山の魚津市が有名です。毎年、3月から5月にかけて蜃気楼が発生し、魚津市の海岸から西の方向の海上に、対岸の町の建物などが浮かんで見えます。魚津埋没林博物館の「蜃気楼発生日&回数一覧表」(http://www.city.uozu.toyama.jp/nekkolnd/m_record.html)によると、毎年、3、4、5月を中心に数回から20数回見ることができるそうです。

毎年3月は、4、5月に比べて発生回数が少ないのですが、今年3月は16日に、第1回目が観測されています。

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春宵一刻値千金

「春宵一刻値千金」。これは、宋代の詩人蘇軾の「春夜」という詩のフレーズです。春の宵の一時は、何事にも代えがたいほど価値のあるものだということです。春の宵の千金の価値に値するものってなんでしょうか。

ぼくが思うに、それは、日が沈んだ後の西空に、かすかな黄金色の光が見えることかもしれません。その名は、黄道光です。惑星間にあるわずかな塵(宇宙塵)が、太陽の光を浴びて輝く現象です。黄道(太陽の通る道筋)に沿って地平線から舌状に伸びて見える淡い黄色い光で、明るさは、天の川の数倍程度。2、3月が最もよく見える季節です。黄道光は、日没後わずかな時間しか見えないので、なかなか見るチャンスがありませんが、それだけに、見えたときはまさに、「一刻値千金」です。

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