月刊基礎知識
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戦没者はどう慰められているかの用語集
 

おまけ〜個人の葬送新事情

宇宙葬  spacefuneral

1986年版本誌収録。以下、

火葬した遺骨の灰をカプセルに詰め、ロケットで人工衛生軌道に乗せる葬法。アメリカの葬儀業者が元宇宙技術者らとともに作ったフロリダ州の共同企業セレスティ・グループが考え出したもので、ヒューストンの民間ロケット会社との間で使用ロケットの契約も結んでいる。計画では1人分の灰を直径1cm、長さ5cmのステンレス・カプセルに圧縮して詰め、1回に数千人分を衛生に積んで高さ約3500kmの高高度軌道に乗せる。これだと6000万年以上も軌道にとどまり落ちてこない。遺族が「お参り」できるよう衛生の表面はピカピカに磨いて頭上の軌道通過の際、見やすいようにするという。

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ハイテク葬儀

1992年版本誌収録。以下、

葬儀の様式がさま変わりしつつある。いわゆるハイテク葬儀。こんな具合だ。

――会葬者が最後のお別れをすますと、会場内は暗くなり、シンセサイザーの荘重な音楽が流れ出す。いつのまにか焚かれたスモークにレーザー光線が照射され、光のトンネルがつくられる。棺を乗せた電動カートがゆっくりと進み、その後を遺族がつき従う。やがてドライアイス煙が天井から降りそそぎ棺と遺族が消えて行く(大阪府寝屋川の玉泉院)。レーザー光線で作ったトンネルを現世から来世へのタイムトンネルに見立て、故人があの世に消えて行くさまをイメージしたものだという。ポイントは「その人らしく」で、玉泉院では故人が生前録音したカラオケを流したこともある。

社葬の衛星中継も行われている。1991(平成3)年1月に亡くなったオムロンの立石一真相談役の社葬は京都の妙学寺から全国一四カ所に衛星中継された。社葬の衛星中継はほかに松下幸之助(松下電器相談役)、水上達三(三井物産相談役)、美空ひばりの告別式などがある。

ハイテク化の原因は何か?第一は主人公が故人より会葬者へ移ってきたことや、大都市周辺では隣り近所のつき合いをふくめて人間関係が希薄になったことである。その結果、会葬者に対する気兼ねが起きる。そこで音と光による葬儀の演出ということになったわけだが、今のところ評判がいいようだ。

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自然葬

1993年版本誌収録。以下、

遺体を燃やして残った遺骨、遺灰を骨壺に入れて墓や納骨堂に収めるのではなく、海や大地など自然の中にまく散骨、散灰の葬送法をいう。「大自然に返る」という意識によっている。一九九一(平成三)年一〇月、「葬送の自由をすすめる会」が海上から散灰を行い話題になった。外国では珍しくないが、日本では法律に触れるという考え方もあった。しかし、今回の試みを契機に法務省もこれを認める公式見解を出した。従来の葬送法では先祖代々の墓地に収められることが当然と見なされていたが、「先祖」や「家」の観念が薄れてきて、死後も本人の意志によって決める(自己決定)という考え方が強くなってきたことの現れである。

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葬装ビジネス

1996年版本誌収録。以下、

人生の最後の場としての葬儀の役割もかつてとやや変わりつつある。いわば、この世に生きていた証しを確認し、個人の人生の完成式として葬儀を、個人の意思を反映させるような形で営もうという無意識の欲求が出てきている。その中でビジネスとして登場してきたのが、葬儀の生前予約サービス。「死は人生の一部」として葬儀のやり方を指定したり、訃報の連絡代行のシステムを事前に取り決めておこうというもの。葬儀社をネットワークし、適切で敏速な対応ができるようにする。また葬儀について生活者から寄せられる様々な質問に対し、的確なアドバイスができる専門家を育てるための資格として葬儀サービス士の制定も検討されている。

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地味葬

1997年版本誌収録。以下、

葬儀をプライベートなものとして、密葬の後「お別れ会」をするといった葬儀形式。九六年、「骨になったら公表しろ」と言い残して、妻と子供だけに看取られて逝った渥美清さんをはじめ政治学者の丸山真男氏、女優の沢村貞子さん、京大教授・高坂正堯氏、それに岡本太郎氏や結城昌治氏など。葬儀を社会儀礼と分離しようという考えが静かに浸透しつつある。

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変わる結婚式と葬儀

1998年版本誌収録。以下、

近年、日本人の宗教性に深く関わってきた儀礼に明確な変化が見られるようになった。

大田区の冠婚葬祭互助会が首都圏の20代以上のサラリーマンとOLを対象に行った意識調査(1997年8月)によると、死後「婚家の墓に」埋葬されることを希望する女性は3割に満たなかった。「自分たちで買った墓」に将来入ることを希望するものが4割と最も多かった。また死後、散骨を望む人が2割を超えた。

総合ブライダルサービスのビッグブライダルが行った結婚に関する実態調査(97年5月)によれば、神前式は全国平均で35・2%と前年より4ポイントほど低下した。他方で教会式は40・9%に増加し、神前式を初めて上回った。

97年4月21日、大西洋カナリア諸島沖の上空1万1000mの上空から発射されたペガサスロケットは、24人の遺骨を乗せて宇宙に飛び立った。この宇宙葬には4歳で亡くなった日本人の男の子も含まれている。費用は1人60万円ほど。

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葬送本

2001年版本誌収録。以下、

葬送のあり方を具体的に考えさせる本。安田睦彦ほか『葬送の自由と自然葬』(凱風社)、藤井正雄『死と骨の習俗』(ふたばらいふ新書)、新葬制研究会『自然葬』(宝島社新書)など。

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葬送の自由

2002年版本誌収録。以下、

あまりにも形式化した葬送のあり方を問い直す動きがある。亡くなった人の遺灰を生前好きだった海や山にまく(散骨)という自然葬もそのひとつ。刑法には遺骨遺棄罪があり、「墓地、埋葬等に関する法律」は墓地以外の埋葬を禁止している。最近、法規制の検討がされているが、「葬送の自由を進める会」(安田睦彦会長)では、「墓園開発のほうが自然破壊だ」といっている。

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樹木葬

2004年版本誌収録。以下、

山里の墓地に遺骨を埋め、好きな花木を植えて墓標にするといった新しい葬法。核家族化や個人の生き方を尊重する時代の反映。都会の夫婦や女性が生前契約を結ぶケースが多い。家中心の葬送儀礼の意味が失われつつあり、また代々受け継ぐ墓でなく、生死を超えた憩い、安息の場にしたいとの願いもある。

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