月刊基礎知識
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こんな時代もありましたの用語集
 

時代の中の男と女

才女時代

1959年版本誌収録。以下、

曽根綾子、有吉佐和子、原田康子、山崎豊子など、若い女性が文壇の中で大きな比重を占めるようになった現象をいう。若い女性が名をなすといっても、芸能界では当たり前のことだが、苦節10年が常識とされていた文壇だけに“文学の芸能化”と嘆く声もある。名付親は文芸評論家の臼井吉見氏。

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同棲時代

1974年版本誌収録。以下、

「子連れ狼」「影狩り」「ゴルゴ13」といった殺伐な劇画のブームのなかで、一風変わったムードの漫画が徐々に人気を呼んでいる。とくに上村一夫の「同棲時代」は、若い男女の同棲生活を通して世の中の機微をいろいろに切りひらいてみせ、「もっともフィーリングのあるマンガ」として評判が高い。一種の倦怠感、虚脱感とそのなかでもがく青春の血のたぎりが若者の共感を呼ぶのだろう。由美かおるの出演で、映画化も行われている。

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母性喪失時代

1974年版本誌収録。以下、

母親が自分の子供をいじめ殺したり、捨て子をしたりする事件がこの数年激増している。物質的にも繁栄している現代の世相だが、精神的には、捨て子が横行した終戦直後の荒廃によく似ているという。母性愛の美しさ、尊さがうたわれたのは過去の時代で、いまは母親になる精神的用意もできぬうちに子供を生むようなぐあいだから、しまつに困って殺したり捨てたりすることになる。価値観が変わったといっても子供がかわいくない母親はないはず。母子家庭に対する国の福祉が行き届いていないのが、大きな原因のひとつだろう。

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非婚時代

1988年版本誌収録。以下、

未婚・離婚・脱結婚など、結婚の外で生きる人たちの増加をさして、一言で「非婚時代」と言い表す表現があらわれた。吉廣紀代子の同盟の著書と、海老坂武の『シングル・ライフ』がベストセラーになった。シングルはたんに「結婚まで」の未婚シングルや「結婚のあと」の死別・離別シングルのような人生の過渡期をさすのではなく、積極的なライフスタイルの一つとなった。

この背景には、女性の晩婚化と独身率の上昇(1985年では、25ー29歳で30.4%)および適齢期人口の男女比のアンバランスからくる男性結婚難時代(20歳代では全国で20万人男性が女性より多い)ときがある。女性はすすんで非婚、男性はよぎなく非婚、と対照的。男性の独身率は30代で20%に達し、とりわけ農村部、長男、低学歴層に集中。妻を国外に求める「輸入花嫁」という現象も起きている。

他方、結婚の内容も多様化。籍を入れない結婚、同居したまま籍だけ抜くペーパー離婚、家庭内離婚、はじめから別居覚悟のキャリアカップルの長距離婚、単身赴任組の増加、海外駐在や子供の進学などで所帯分離する分散家族など、カップルでもシングル、シングルでもカップルというように、結婚・非婚の区別がつけにくくなった。再婚家庭で夫婦がそれぞれ連れ子を持ち寄る再建ファミリー、従来の家族の概念を超えたポスト・ファミリー、単親家族など、いわゆる「標準家庭」におさまらない家族もふえた。家族を血縁や居住の共同だけで定義するのはむずかしくなったし、一家に2つ以上の姓のある家族も珍しくなくなってきている。

シングルズの方では「シングル・ライフ」や『一人家族』(増田みず子)のように「1人でも家族」という『シングル・カルチャー』(青木やよひ)が成立。ファミリーの方では『個人化する家族』(目黒依子)のように「家族でも個人」という個室文化が普及している。シングル現象は、もはや非婚組だけでなく、既婚・非婚を問わなくなっている。

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男性結婚難時代

1990年版本誌収録。以下、

25〜34歳までの未婚者人口は、男性が女性の2.2倍。女高男低といわれる空前の男性結婚難時代が到来した。農村部ではこの解決策をアジア各地からの輸入花嫁に頼るところもあるが、都市部での男性の結婚難も深刻で、東京都に住む男性の30〜34歳の独身率は41.5%(女性19.5%)となっている。日本青年館結婚相談所では、樋口恵子、斉藤茂男たが発起人となり花婿学校をすたーとさせた。「よりよい人間関係を築くだめに男性の意識改革を促すのが目的」であり、既婚者の受講も認める方針。大阪には民間の花婿講座が出現。18回で16万円の受講料で男女交際のハウツーを教える。

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結婚難時代

1992年版本誌収録。以下、

男性の結婚難がとりざたされて久しい。しかし、男性の結婚難は単に男性の数余り現象だけではなく、対等のパートナーシップを求める女性と、旧来どおりの母親代わりを求める男性との意識や、感覚のズレにもよる。

最近の元気な女性たちの変化についていけない男性の女性不適応症がふえている。女性との性交渉がうまく持てないサワラナ族や、女性から求愛されると逃げ出そうとしてしまう『逃げ腰症候群』(新水社)の男性も現れた。

一方、女性は、漠然と一生シングルかも知れないと考える『結婚しないかも知れない症候群』(主婦の友社)に共感する声も多く聞かれるうえ、共働きで家事・育児が全部自分の役目ならば、子どもは欲しいけれど夫はいらないという男(夫)いらない症候群など、女性の側からの結婚拒否とも受け取れるメッセージが送られている。

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一児豪華時代

1992年版本誌収録。以下、

ひとりの子を大事に育てるのはよいが、ゴルフクラブ、サングラス、ダイヤの指輪など、かつては考えられない商品が子ども用に作られ、売り上げを伸ばしている。

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女性センター新時代

1993年版本誌収録。以下、

婦人会館は婦人団体の活動の拠点として、民間施設でスタート。その後、公設民営・公設公営などの形で増加、1989(平成1)年で117館(全国婦人会館協議会調べ)。新設の施設は女性センターと名称の変化もみられ、福祉・消費・教育部門、ホール等との複合施設も多い。最近では情報の拠点としての機能を重視、国立婦人教育会館(埼玉県嵐山町)は全国各地から検索できるデータベース「WINET(ウイネット)」を91年7月から始動。当初は文献データベースが中心。順次ニーズに応じた情報データベースの開発を予定。東京都は「東京ウィメンズプラザ」(仮称)を計画、区立センターも次々と建設予定。大阪府の女性総合センター「DAWN(ドーン)」も94年完成をめざしている。大阪市は市内5カ所に仮称「女性いきいきセンター」を計画。第1号を東淀川区に建設中。新設の女性センターの運営は、公設民営、財団法人、民活等と行政の手を離れる動きがある。

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セックスレス時代

1993年版本誌収録。以下、

「いまどきの若者はセックスをしない」「セックスに弱くなった」といったテーマの特集が雑誌をにぎわすようになった。一方で、黒人にぶらさがる尻軽な若い女性たちの話題も紹介されていたりで、マスコミのもちあげるものには常に一貫性はないわけであるが、世の流れとしては老若男女問わず、セックスレスの方向に進んでいるようである。要因はいろいろあるが、まずは「子は鎹(かすがい)」という考え方が薄れつつある。大家族制が崩壊し、女性は外(社会)に出るようになった。と、当然、子は鎹というより、むしろ足手まといと思えるようなことも多くなるであろう。男性が子育てに参加するようになったとは言え、子をめぐる状況は昔とは違う。一方また、年を追って強まってくる世紀末感、世界末感といった不安も関係しているであろう。そこに、エイズというような病気も絡んでくる。別のところで、「男が弱くなった」いや「そういう行為自体、めんどくさい、無駄なことだ」と考えるような人間が増えている、といった説もある。女を口説いたり、性行為のあとに会話のやりとりをするくらいならば、AV(アダルトビデオ)を観ながら勝手にオナニーをしたほうが楽だ、合理的だ、という考え方だ。無論、生身の女性(というか女体)に対する欲求はあるのだろうが、そこに近づいていくまでの段取り、時間に不合理性を抱いてしまう。また性行為自体も、本来の生殖という目的から離れた、SMプレイ、フェチプレイ、といった遊戯性の高いものに人気が集まっている。やはり、「子孫を残す」という動物的本能が弱まっているのだろう。

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女性センター新・新時代

1995年版本誌収録。以下、

婦人会館は、戦後婦人団体の活動の拠点として、民間施設としてスタートした。その後、多様な形で増え、現在、全国で約170館、働く婦人の家は、229館を数える(『女性情報年鑑1993年版』パド・ウィメンズ・オフィス)。情報の拠点としての機能も充実し、国立婦人教育会館(埼玉県嵐山町)の「WINET」等の利用も定着。大阪府の女性総合センター「ドーン」も1994(平成6)年秋完成。東京都、大阪市等は地域ごとにセンターを数カ所設置。新設の女性センターは再開発ビル、生涯学習センター、福祉施設等との複合も多く、運営は公設公営、公設民営、民活の導入等と多様化、行政の手を離れる動きがある。佐賀県が女性センター館長を全国公募したのは、話題を呼んだ。

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女余り時代

1995年版本誌収録。以下、

つい先頃は“男余り”時代といわれていた。“アッシー君”“メッシー君”“三高”等々“男余り”時代の名残りを捨てられない女性は、あぶれてしまうことになりそう。

1992(平成4)年の推計人口をもとに適齢期の男女数を計算すると、男性567万9200人に対し、女性は588万2700人。女性のほうが20万人以上多くなる。これは夫婦の年齢差を3歳とし、男性の適齢期23〜35歳、女性20〜32歳として計算したもの。

実際の人口では男性のほうが多いが、男性より早く適齢期を迎える女性層に団塊ジュニアが参加するため。したがって団塊ジュニアの男性が適齢期を迎える3年後は、再び逆転して“男余り”時代になるという。

すでに“女余り”時代に向けた女性のサバイバルが始まっていると指摘する声もある。オフィスでめぼしい男性にお弁当を持ってきてあげたり、積極的にデートに誘う、デートのあとは自分の車で送る等々である。

年下の男性に目を向ける女性も、国際結婚をねらう女性もいる。究極は「男より仕事」を選ぶ女性と、ここでも女性のさまざまな対応が見られて面白い。

もっとも適齢期の考え方、結婚の考え方にも多様性がある時代、数字がすべてではないのだが。

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パラサイト・シングルの時代

2001年版本誌収録。以下、

「パラサイト・シングル」という新語を造語し一般に広めた東京学芸大学・山田昌弘助教授の本(ちくま新書)。住居、食費など生活の基本的条件を親に依存しながら、一方で勤労収入はしっかりとあるので、リッチな消費生活を送るパラサイト・シングル。ぜいたくな生活になじんでしまったために、生活レベルを引き下げることになる結婚にもふみきれない。新しい世帯が増えないのも現在の不況の一因などと新鮮な事実を指摘。

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