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損失に関する数値のお話
著者 白鳥 敬

損失に関する数値のお話

空気の透明度の単位「シーイング」

冬の夜空は澄み切っていてとれもきれいです。これは強い季節風が空気中のちりを吹き飛ばしてくれるからです。でも、星をよく見ると、激しくまたたいているのがわかると思います。1万mほど上空には、時速300kmにもなる強いジェット気流が吹いていて、このふきんでは温度や密度が複雑に変化しているため、空気の屈折率が変わって、星が瞬いて見えるのです。この空気の揺らぎをシンチレーションと言います。

また、星がどれくらいきれいに見えるかを、シーイング(seeing)という言葉で表します。きれいに見えるときを「シーイングがよい」、星がまたたいていて形が不規則に膨らんで見えるときを「シーイングが悪い」といいます。

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望遠鏡で見える最小の大きさは?

どんなに気象条件が良いときでも、地上から星を見ている限り、空気の影響を取り除くことはできません。もっとも空気の状態のよい場所でも、空気の層を通して見る限り最大で0.5秒角くらいまでしか識別できません。0.5秒角というと、満月のみかけの大きさがおよそ31分角ですから、その3720分の1の大きさです。

ハワイ島のマウナケア山頂にある、鏡の直径が8.2mのすばる望遠鏡の理論上の分解能力は、0.02秒ほどですが、大気の層を通して可視光で見たときは0.5秒くらいが限界ということになります。ただ、すばる望遠鏡の設置場所は、高度が4139mと高いので、空気の影響が地上より小さく、すばる望遠鏡のスペック表では、最大分解性能が0.2秒と記されています。

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光ファイバーの損失はどれくらい?

インターネットへ、ADSLや光ファイバーで、接続する人が増えてきました。ADSLは、普通の固定電話のメタル線の中に電話では使ってない周波数の電波を通すので、電話局からの距離が遠くなるほど、電波が弱くなって、データ転送量も少なくなってしまいます。

でも、光ファイバーなら、そんな心配はいりません。いくら距離が長くなっても、途中にいくつか中継器をいれるだけで、どこまでも低損失でデータを送ることができます。

この光ファイバーはどれくらいの透明度を持っているかというと、1km先の損失がおよそ0.2dB(デシベル)。わかりやすくいうと、1km先でも、損失はたったの4.5%。つまり、1km先でも、95.5%の光が届くような透明さということです。

もっとも、これは、1.55μmという、赤色よりももう少し波長の長い赤外線の光の場合ですが・・・。

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ADSL回線で速度がでないのは路線損失のせい

今年1月には、加入者数が1千万超え、ブロードバンドの代表的な接続方法になっているADSLですが、問題は電話局からの距離です。距離が長くなれば、メタル線の中を伝わる信号の減衰が大きくなって、良好な転送速度が得られません。

ADSLで、なんとかある程度の速度が期待できるのは、損失が20dB程度までで、それ以上になると、24Mbpsや40Mbpsといった高速ADSLサービスに変更したところで、速度の向上はほとんど期待できません。

筆者の家は、路線超が3.4kmあって、損失がなんと36dBもあり、24Mbpsのサービスで3.8Mbpsしか出ません。

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対数で表した損失って?

「光ファイバーの損失は0.2dB」などと、損失を対数で表すことが多いです。慣れれば、このほうが計算が簡単だからですが、普通、なかなかイメージがわかないと思います。

そこで、簡単にするために、dBで表した損失はどれくらいのものかを書いておきましょう。

 損失0.2dB → 約4.5%の損失

 損失1dB → 約21%の損失

 損失10dB → 約90%の損失

 損失20dB → 約99%の損失

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電波時計の誤差はどれくらい?

最近、腕時計タイプの電波時計がずいぶん増えてきました。電波時計とは、福島県と福岡・佐賀県境にあるふたつのアンテナから、長波(40Hz、60Hz)の電波に乗せて送られている日本標準時の信号を受信して、常に正確な時刻を表示できる時計です。

普通の水晶時計に、標準電波を受信するアンテナと受信回路を組み込み、そこで取り出した正確な時刻の信号に時計の時刻を合わせるしくみになっています。

仮に標準電波を受信できなくても、水晶時計ですから、月に20秒程度しか狂わないのですが、一日1回、時計によっては数回、標準電波を受信することで、まさに「ぴったり」の時刻を刻みます。メーカの宣伝用資料では、10万年に1秒の誤差などと書かれてありますが、確かに一日1回、標準電波を受信し続ければ、実質的な誤差は0と言っていいでしょう。

なにしろ、標準電波の元になっている時間は、セシウム原子時計が刻む時間ですから・・・。

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太陽電池の発電効率はどれくらい?

太陽電池は、環境汚染物質を出さない理想的なエネルギーの一つです。街灯や標識などの補助電源としてかなり普及してきましたが、まだまだメインの電力源としたは力不足です。その理由は、太陽エネルギーを電力に換えるときの変換効率があまりよくないからです。

太陽電池には、シリコン結晶やヒ化ガリウムや、アモルファスシリコンが使われていますが、最大で17%から19%程度の変換効率しか得られません。太陽電池パネルに太陽光があたってもその80%以上は、電気に変換されないまま消えているのです。

最近注目されている風の力で風車を回して発電する風力発電は、風のエネルギーを電気に換える変換効率は最大で40%くらいですから、太陽光発電が普及するには、まだまだ研究が必要のようです。

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燃料電池の発電効率はどれくらい?

日本の自動車メーカーから、相次いで燃料電池自動車が発売になりました。もっとも、まだまだ非常に高価で、水素ステーションなどの燃料供給用のインフラが整備されていませんから、普及し始めるのは、まだ10年以上も先のことだと思われます。

燃料電池というのは、簡単に言えば、中学校で勉強した「水の電気分解」の反対の化学反応によって電気をおこす電池のことです。水素と空気中の酸素を反応させて電子の流れを取り出すます。これが電流の流れとなります。

この燃料電池は理論的には80%以上の発電効率を持っています。実際は、ここまでは無理ですが、35%から60%くらいの高い発電効率が実現されています。

やはり、現実的には燃料電池がもっとも新エネルギーとして有望かもしれません。問題は、コストですが・・・。

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もっともエネルギー変換効率のよいものは何?

エネルギー変換効率は、生体がいちばんいいのです。たとえば、ホタルの光。これは、、発光細胞にあるルシフェリンという発光物質がルシフェラーゼという発光酵素の働きで酸化するときに光を発するのですが、このときのエネルギーが光に変換される効率は90%以上と言われています。

ホタルの光は熱を伴わない冷光ですから、なるほどとうなずけるものがあります。人間が作った人工的な灯のほとんどのものは、熱という無駄なエネルギーを大量に出してしまいます。ホタルはえらいですね。

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飛行機のプロペラの損失はどれくらい?

最後に、飛行機のプロペラの変換効率の話をしましょう。飛行機のプロペラは、エンジンの回転軸に直接つけられています。ヘリコプターの回転翼は、エンジンの回転軸とプロペラの間にギアが入っていますが、固定翼機の場合は、すべて直結です。

エンジンの回転=プロペラの回転なのですが、当然、回転のエネルギーがそのまま推力として取り出せるわけではありません。エネルギーのいくらかは熱や音として失われてしまいます。

プロペラのエネルギー変換効率をプロペラ効率といいますが、最大で0.8くらいです。

つまり、フルパワーにしても、エンジンの出力の80%くらいの力しか出せないのです。

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