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「働くのも楽じゃない」の用語集
 

求職者受難の時代を読むことば

失業率悪化

本誌2004年版収録。以下、

総務省統計局の発表によれば、2003(平成15)年8月の完全失業率は5.1%、完全失業者数は333万人で、3カ月連続で減少した。しかし、減少の中心は自分から辞める「自己都合」理由の自発的失業で、7月は16万人、8月は19万人(合計35万人)減っている。しかも、男性の完全失業率は依然5.3%と高止まりしている。また、03年は冷夏の影響もあって、アルバイトなどの求職が少なく、求職活動をあきらめたディスカレッジド・ワーカー(discouraged worker)を含めると失業者はもっと多くなると推測される。一方、正規雇用(正社員)を削り、非正規雇用を増やす傾向も強まっている。日本労働力研究機構によれば、00年度には15〜34歳のフリーター(無業者)は約193万人に達し、その後もフリーターは増え続け、現在は200万人を超えている。さらに、パート・アルバイトの総数でみると1096万人(02年)に達している。これらは、失業者には含まれない不安定就業者である。

失業率が高止まりし、非正規雇用が増加している背景には、不良債権処理の失敗とアメリカのITバブルの崩壊が重なってデフレ不況が深刻化していることがある。03年度9月に、減収減益傾向が続いていた企業決算もようやく黒字化したが、輸出の増加以外は雇用リストラや賃金切下げに依存する傾向が続いている。

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失業率  Unemployment rate

本誌2004年版収録。以下、

労働力人口に占める失業者の割合をいう。労働力人口は就業意思のある人たちの人口であるから、失業率は働く意思があるにもかかわらず仕事がない人たちの比率ということになる。これは労働力指標として重要であるだけでなく、マクロの経済指標としても、国内総生産や物価上昇率などと並んで、重要な景気指標ともなっている。失業率は景気のよいときには低く、景気の悪化とともに高くなるが、通常は景気の動きに対して半年から1年程度の遅れをもって動く。2002(平成14)年の日本の失業者数と失業率はそれぞれ359万人、5.4%と、1952(昭和27)年に現在のかたちで統計をとりはじめてから最悪の水準となっている。なお失業率や失業者数を、統計用語では歴史的経緯などから「完全失業率」とか「完全失業者数」といっているが、これに対して「不完全失業率」とか「不完全失業者数」という統計はなく、一般に使う場合に「完全」という言葉をつける必要はない。

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有効求人倍率  Active opening rate

本誌2004年版収録。以下、

失業率と並んでしばしば引用されるのが有効求人倍率である。失業率が全国の世帯のサンプル調査であるのに対して、これは各地の公共職業安定所(ハローワーク)による業務統計調査である。すなわち有効求人倍率は、公共職業安定所への有効求職者数の有効求人数に対する割合であり、厚生労働省の「職業安定業務統計」に公表されている。ここで、有効求職者とは求職申込みの有効期限があってまだ就職していない者、有効求人とは求人申込みの有効期限があってまだ求人が充足されていないものである。失業率は景気指標としては景気変動に遅れて動く指標であるが、有効求人倍率のほうは景気の動きとほぼ一致して変動するものである。2002(平成14)年の有効求人倍率は0.54と、求職者2人に対して求人1人程度という厳しい状況であった。

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新5月病

本誌2000年版収録。以下、

1997(平成9)年に就職協定が廃止されて大学生の就職活動開始が早まった。99年、企業の内定ピークがゴールデンウィーク前後。暗い5月。

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6月病

本誌1998年版収録。以下、

受験戦争を勝ち抜き、念願の大学入学を果たした新入生が、目標を失って無気力に陥る「5月病」はよく知られているが、近頃の学生はネアカになってほとんど見られなくなった。これに対して、新卒者が入社後配属先で仕事を始めた6月、抑うつ状態になる「6月病」が増えている。いわば社会人の新5月病。気持ちの上では頑張ろうとするのだが、どうしても仕事にやり甲斐が持てない。つまらないミスをして上司から小言を言われて落ち込み、早期退職、転職志向が芽生える。

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仮面就職

本誌2002年版収録。以下、

就職難が長引く現状から、いったん就職して収入を得る方便を選択、そのうえで行きたかった会社・職種への転職をねらうこと。いわば仮住いに身を寄せての結論先延ばし。

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出戻り社会人

本誌2000年版収録。以下、

就職して2、3年経ってから転職を考え、母校の大学の就職課の窓口に舞い戻る卒業生。

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雨宿り族

本誌1995年版収録。以下、

バブル後のこの2、3年、大卒就職戦線には、きわめて厳しいものがある。とくに女子には気の毒なほど一流企業の門戸は狭かった。「他に適当なところがなかったから」「1、2年で転職するつもり」で、とりあえず就職した人が男女とも2割近くある。日経連などの1994(平成6)年新入社員意識調査の結果である。どしゃぶりともいえる景気低迷、とりあえず「雨宿り」をしながら景気の回復を待とうというのが“雨宿り族”別名“新・腰掛け族”。つまり不本意ながら入社した人たちだ。もう一方の道は、就職浪人。さらに留学、大学院進学で、不景気の時代を避けようという“先送り組”。しかし1、2年後に、どしゃぶり景気に晴れ間が出るかどうかは分らない。危険な賭けといえなくもない。女子の場合は年齢制限ということもあるし、就職先送りは得策ではないかもしれない。が、それもまた時の運ということもある。

“雨宿り”というだけあって明確な目的をもった人が多く、したたかな計算をしている。会社で学べるものは貪欲に学び、人脈づくりに励み、できれば語学なりパソンコンを勉強して転職に備えたいと。

さて企業側はこうした事実をどう見ているか。「会社への忠誠心が薄い」と嘆きつつも、「住めば都になるさ」とうそぶく幹部もいるのだが。

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超氷河期・氷づけ

本誌1996年版収録。以下、

95年の就職の昨年(氷河期)を上回るきびしさを言ったことば。6月にすでに登場。

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デモシカ進路

本誌1995年版収録。以下、

「留学でもするか」「大学院に行くしかない」などの進路を選ぶこと。「就職氷河期」関連語。

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お就職

本誌1995年版収録。以下、

有名私立小学校に子供を入れたいと八方手を尽くす「お受験」「お入学」の就職版。親も東奔西走する就職氷河期である。

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赤い糸信仰

本誌1995年版収録。以下、

もっと私にふさわしい仕事があるはずと適職を探し求める若い女性。渡辺三枝子明治学院大教授の造語。転職をくり返したり、現在の仕事に不満を抱いたりして危険な落とし穴に落ちたりする。

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ダブル・スクール族

本誌1991年版収録。以下、

大学と専門学校と並行して通う人たちのこと。パターンとして(1)専門強化型=大学での専門を深める、(2)就職一直線型=就職に有利な武器を身につける、(3)新天地開発型=「自分の道はちがう」と他の道をさがす、の3つがある。

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「雇用なき成長」

本誌1994年版収録。以下、

経済成長によって雇用が創出される。しかし、成長しても雇用の増加が期待できず、景気が回復しても失業率が下がらないことを示す。「ニューズウィーク日本版」のスペシャル・リポート「大失業時代がやってくる」(93.6.17号)によると、その背景にあるのは、産業構造の大変動。地球規模の熾烈な国際競争とテクノロジーの進歩により、企業は生産性向上のため人員削減を行う。テクノロジーの進歩によって、仕事や製品がいらなくなり、仕事が機械にとって代わられる。東京サミットの経済宣言でも「持続的成長と雇用の確保」が謳われたが、高い失業率に悩む欧米先進国では、雇用は90年代における最大の経済的、政治的、社会的課題になっている。

約200万人といわれる企業内失業者をかかえる日本もその例外ではなく、中高年ホワイトカラー問題や新卒者の大幅な採用抑制はその前兆との見方もある。

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ジョブレス・リカバリ  jobless recovery

本誌年2003年版収録。以下、

雇用増加をともなわない景気回復。アメリカでは、1990年代初頭のジョブレス・リカバリの時期に中高年ホワイトカラーが仕事を失い、その後のアウトソーシンクの流れのなかで派遣労働者が増加したことがある。日本のホワイトカラーの過剰感は、97年以降悪化した後、引き続き高い水準にある。IT革命によって情報伝達のコストが低下したため、ホワイトカラー、特に中高年層の労働需要が減少したと考えられる。ただ、情報サービス産業の拡大が雇用を吸収することも考えられるが、職種のミスマッチ(求人企業と求職者の能力・条件の不一致)の存在を考えると失業者が簡単には減らないかもしれない。政府は、求人の増えている情報技術など成長分野に人材を誘導、産業構造の変化にともなう失業率の悪化に歯止めをかけるねらいで、職種のミスマッチの解消をめざす「緊急雇用対策」を発表した。

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棄国子女

本誌1997年版収録。以下、

留学したまま外国に住みつく若者。日本の大都会の生活費が高すぎる、日本は就職難で住みにくいなどの理由がいわれる。

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