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暑さと熱さをめぐる単位と数値
著者 白鳥 敬

暑さと熱さをめぐる単位と数値

熱帯夜と真夏日

原子力発電所の不具合で、今年の夏は、電力不足になるのでは、と言われていましたが、直前になって、一部の原発が稼働開始。なんとか、最悪の事態は避けることができたようです。しかし、梅雨明けが遅れて真夏らしい日は少ないまま終わりそうです。

とは、言っても、夏は暑い。とくにビルが密集した大都市では、めちゃくちゃ暑い。そこで、問題です。東京ではどこがいちばん暑いと思いますか。その日の最高気温が30℃を超えた日を真夏日といいますが、東京都の資料によると、2002年の夏で、東京23区で最も真夏日の日数が多かったのは、千代田区・港区の境界付近、墨田区・葛飾区の境界付近、渋谷区西部の3か所をピークとした都心部です。一方、その日の最低気温が25℃以上の熱帯夜は、というと、目黒区を中心として東京南部にかたよっているのです。なぜこうなっているのかは謎ですが、面白い現象ですね。目黒区から都心に通っているサラリーマンが、いちばん暑い夏をおくっているということでしょうか。

(出典:http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/heat2/index.htm

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東京の夏は昼と夏、どっちが暑く感じる?

マンションの上階に住んでいると、日中は窓を開けておくと気持ちいい風が入ってくるのでけっこう涼しいのですが、夜は、窓を締め切ってしまうので、エアコンが欠かせません。やはり夜の方が暑いのでは。

上記と同じ東京都の資料によると、東京の平均気温は、100年前に比べて3℃も高くなっているそうです。地球温暖化による温度上昇は、100年間で1℃くらいと考えられていますから、あきらかに都市化が原因でしょう。とくに面白いのは、一日の最高気温の年平均が100年前に比べて1.7℃しか上がっていないのに、一日の最低気温の年平均が3.8℃も上がっていることです。最低気温は、夜間(日の出直前)に出るのが普通ですから、つまり、東京の夜がめちゃくちゃ暑くなっているということです。

寝苦しいなあ、とエアコンをつけると、室外機からでる温風でさらに気温は上がるわけで、なんとも住みにくい街になってきているのです。

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打ち水で気温がどれくらい下がるのか

昔は、夏になると、家の前の路地に水を撒いたものでした。そして、窓を開け、すだれを垂らしておくと、涼しい風が入ってきて、暑い夏でもけっこう快適にすごせたものでした。水を撒くと確かに少し涼しくなったような感じがします。いったい、打ち水によってどれくらい気温が下がるのでしょうか。

路面の状態(舗装であるのか土であるのか)、日射量の違い、水の温度・量などによって気温の下がりかたは違うでしょうが、撒かれた水が蒸発するときに気化熱を奪って、温度を下げるのは確実ですから、涼しくする効果は十分期待できます。

日射が強いとせっかく水を撒いてもすぐに蒸発してしまいますから、頻繁に水を撒かないと涼しくない。というわけで、30分に1回も水を撒いていると、その労働によって汗をかいてしまいます。そこで、注目されるのが植物です。植物は保水性がいいので、長い時間、温度の上昇をおさえてくれます。

東京都では、道路に散水して、どれくらい気温が下がるのかのデータをとるための実験を開始しています。

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公園の木陰は涼しいのだが…

東京の夏は暑いという話をしています。暑さの原因は都市化。都心はビルばかり、道路はアスファルト舗装、車やエアコンからは高温の排気。都心にいてちょっと潤いを、と思ったとき、どこへいきますか。喫茶店かな。公園という人もいるでしょう。東京には、代々木公園、日比谷公園、神宮外苑、そして皇居・北の丸公園など、公園がけっこう多いです。噴水のそばのベンチに腰掛けていると、いちゃつくカップルにはあてられるかもしれませんが、おおむね爽快になります。

数えてみれば意外にも公園がたくさんあるような印象の東京ですが、それでも世界の大都市と比べると、ぜんぜん少ないのです。というか、少なすぎる。

「国土交通白書」によると、一人当たりの公園面積は、ニューヨーク29.3m2、ベルリン27.4m2ロンドン26.9m2パリ11.8m2そして東京は、なんと、たったの3m2。都民一人当たりの公園面積は、縦横2mにも満たない小さな空間。これでは、暑さをしのぐどころか、災害など緊急時の非難場所にも困りますね。

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逃げ水は何m先にできる

夏の暑い日中、車でまっすぐな舗装道路を走っていると、前方の路面に水たまりのようなものが見えることがあります。あ、水たまり、と思って近づいていくと、いつのまにか水たまりはなくなっています。道路を見ると、水たまりどころか、真上から照りつける太陽の光を受けて、ぎらぎらと輝いています。きっと、目玉焼きをつくれそうなくらい熱くなっていることでしょう。

この幻の水たまりは「逃げ水」と呼ばれる現象です。なんこんなものが見えるかというと、光が路面近くで屈折するからです。日射で目玉焼きをつくれるくらい熱くなった路面は接している空気を暖めます。そのため、路面にそって、熱い空気の薄い層ができます。この層は温度が高いので、その上のノーマルな空気より空気の密度が小さくなります。この密度の違いで、この二つの層が接している面で光を反射するのです。蜃気楼と同じ現象ですね。反射の向きが反対ですけど。逃げ水の正体は、遠方の空なのです。

逃げ水が何メートル先にできるのかというと、それは、密度の違う空気の隔てる層の高さ、屈折率などの一概には言えませんが、歩いていけないことはない距離ですね。

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暑い戸外での活動時、熱中症から体を守ろう(WBGTとは)

以前は、日射病などといいましたが、最近は、暑い戸外で活動しているときに熱によってやられる症状を総合して熱中症とよんでいます。軽度の熱中症なら、風通しのよい屋内で横になり、水分を補給して安静にしておれば、しだいに回復するのですが、子どもやお年寄りの場合は、症状が重くなる場合がありますから、要注意です。

暑いときは戸外での運動や仕事を控えればいい…のですが、そうもいかないという場合も多いでしょう。そこで、ひとつの予防法として、熱中症になりやすい気象状況かどうかがわかる基準があります。WBGT(wet bulb glove temperature 湿球黒球温度)です。

これは、温度計の赤いガラス玉の部分を湿ったガーゼでくるんだ温度計(湿球)と、輻射熱を計る黒球、それと普通の乾球で計った温度から、下の式で求めます。もっとも黒球はどこにでもあるというものではないので、実際は、WBGT計という温度計を使用します。

日本体育協会では、WBGTが、31℃を超えるときは、運動中止、28℃超〜31℃では、激しい運動は中止、25℃〜28℃では、積極的に休養すること、といった基準を定めています。 

屋外WBGT=(0.7×湿球温度)+(0.2×黒球温度)+(0.1×乾球温度)

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辛いと熱いが近いのはなんでだろう

夏は辛いカレーがおいしいですね。でもあまり辛くしすぎると、もうなにがなんだかわからなくて…。一度、辛さの指定ができるカレー屋さんで、辛さ16倍カレーというのを食べたところ、そのあと2、3時間は、足が地面についていないような感覚が続いたことがありました。

おいしいカレーもあまり辛くしすぎると、もはや味はわかりませんね。それどころか、唇の周りや口内に痛みを感じるほどです。これは、人間の感覚神経は、許容できる強度以上の刺激があった場合、それを痛みとして感じることが原因です。

辛さだけではありません。冷たいかき氷を食べているときも、頭がツーンとすることがあります。これも、冷たさが度を超して、神経が冷たいという感覚を通り越して痛みとして感じているからです。この症状には、ちゃんと「アイスクリーム頭痛」という病名(!)がついています。

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気温30℃だと暑いが、お風呂が30℃だとぬるいのは?

気温が30℃を超えると真夏日。真夏の暑さです。暑くて暑くてたまらないですね。しかし、お風呂のお湯が30℃だとぬるく感じますよね。なぜこうなるのでしょうか。

人間が暑さ寒さを感じるのは、皮膚温度によります。水は空気に比べると、密度が大きく、熱を伝えやすいので、30℃のお風呂にはいっていると、体温がどんどんお湯の中に逃げていってしまいます。そのため、冷たく(ぬるく)感じます。いっぽう空気のほうは、水よりずっと密度が小さいので、熱を伝える力が弱く、風がなければ、体温を奪う力はあまり大きくありません。

そのため、同じ30℃でも、お風呂のほうはぬるく感じてしまうのです。

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入道雲の高さはどれくらい

もくもくと空高くそびえたつ入道雲。まさに夏ならではの光景です。入道雲はいったいどれくらいの高さだと思いますか。

入道雲というのは、俗称で、気象用語としては、雄大積雲とか積乱雲といいます。積雲というのは、地上付近で強い日射によって暖められた空気が軽くなって上昇していくときにできます。普通は、適当な高度で上昇が止まるのですが、上空の気温が相対的に低かったり、地上付近で猛烈に暖めれた場合は、どんどん上昇し続けます。途中で水蒸気が雲をつくり、その雲はもくもくとさらに上昇し続けます。で、成層圏の入り口までいくと、そこで対流が止まります。対流は成層圏まではいけないのです。対流がおこる場所を対流圏といい対流圏と成層圏の境を圏界面といいます。積乱雲は、ここで、上昇をやめ、横にひろがってかなとこ雲をつくります。この高度は、夏ですと、だいたい1万2000mくらいです。でも、ときどき、勢い余って、圏界面を破って成層圏に頭を出すものもあります。

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暑さと雷の関係は?

入道雲と言えば雷ですね。もうワンセットです。ところで、真夏の晴れの日の午後によく雷が発生しますね。これは、午前中の日射によって暖められた空気が上昇して雄大積雲や積乱雲をつくるからです。

でも、同じように暑い日でも、雷がおこならい日もあります。なぜでしょう。いろいろな理由がありますが、もっとも大きな理由は上空に冷たい空気があるかどうかです。冷たい空気があると、雲はどんどん上昇していきます。つまり発達するということです。大きな積乱雲になるほど、雷が発生する確率は高くなります。

で、簡単に、雷がおこるかどうかを知る方法を教えましょう。富士山山頂の気温は、最近はインターネットを使って簡単に入手できるようになりました。この富士山山頂の温度と日中の地上の温度との差が30度を超えると、雷が発生する確率が高くなります。これは筆者の経験的なものですから、当たらなくても抗議をしないでくださいね。

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