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中心と周縁、絶対と相対などなどについてあらためて考える用語集
 

周辺とはどこか

周辺海・空域

本誌1982年版収録

日米共同声明(昭和56=1981年5月)第8項に日本は「日本の領域、周辺海・空域における防衛力になお一層の努力をする」と表明されている。日本政府の統一見解は、周辺空域とは「航空自衛隊が迎撃能力を整備している防空域別圏とおおむね同じ空域」としており、日本列島距岸200カイリ前後の範囲と考えられている。また、周辺海域については「日本列島距岸数百カイリ」と考え、周辺空域よりさらに拡大された範囲としている。しかしながら鈴木総理は訪米時「日本周辺数百カイリ、航路帯1000カイリを日本の自衛範囲」と公式に言明しており、米側は西太平洋の米戦力をインド洋を含む南西アジアに転用する日本周辺数百カイリとグアム北西フィリッピン以北の西太平洋の海・空域の防衛を日本が担当できるよう日本側の見解よりも大きな期待をもっているようであり今後ともこれらについての調整が必要となりそうである。

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周辺事態

本誌1998年版収録

日米の防衛協力のための指針の見直し作業において、具体的に日本周辺で紛争事案等が発生し、わが国の安全に影響を与える事態にはどのようなものがあるかを予め想定しておくことは防衛を考える上で当然のことであるが、現在、朝鮮半島や台湾にはそれぞれ微妙な問題があり、特定の場所を指定して、白黒を明確にしてしまうことはできないとしている。すなわち必要に応じ、具体的な状況に即して個別的に判断すべき問題と考えられている。

周辺事態(周辺有事)における日米間の協力内容として考えられていることは、<1>対応の準備および事態の拡大を抑制するための措置、<2>日米協力の機能と分野がある。具体的には人道的活動、捜索・救難、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動、非戦闘員を退避させるための活動、アメリカ軍の活動に対する日本の支援、運用面における日米協力などが検討されている。これら周辺事態を含むガイドラインの見直しにつき、中国、韓国等に無用の刺激を与えないよう、政府においても事前説明等を行っている。

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周辺事態

本誌2001年版収録

日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に基づく周辺事態の対象範囲についての件は政府、与党内にさまざまな議論をよんだが、政府は「地理的範囲ではなく、あくまで日本の平和と安全に重要な影響をあたえるかどうかという事態の性質に着目した概念である」との統一見解をまとめた。ところが、1998(平成10)年5月22日の衆院外交委員会で外務省の高野紀元北米局長は「アメリカ軍の活動への支援は(日米安保条約六条が定める)極東とその周辺を概念的に超えることはない」と答弁した。これに対して中国政府は「台湾海峡が周辺事態に含まれることを初めて表明したものだ」と反発した。99年5月に成立した周辺事態安全確保法では「このまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等、わが国周辺の地域におけるわが国の平和および安全に重要な影響をあたえる事態」と定めている。

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中心と周縁

21世紀の西欧を知る用語集『世界事典』収録

欧州の文化の中心は歴史とともに移り、現在はそれらの中心が複数の文化圏の円を描いて重なりあっている。古代ギリシャ・ローマからビザンチン、神聖ローマ帝国、ルネサンス、産業革命とその時代毎に異なった地域に文化の花を咲かせた欧州の文化は、相互に影響を与えながら現在の状況を形成している。従って欧州の文化には同心円のような1つの中心を探すことは出来ないし、複数の中心があるということも出来る。後進国のように見られる東欧・中欧も中世には西欧を凌ぐ文化の中心であった。プラハが神聖ローマ帝国の首都であった時代、パリはまだ一介の宗教都市でシテ島にノートルダム寺院が建設中であったし、ベルリンにいたってはシュプレー川の川岸に発達した北辺の漁村であった。フランスにブルボンの宮廷文化が生まれるとパリは文化の中心になり、各国の王家は競ってベルサイユ宮殿を模倣する。現在各地に残る宮殿の多くがベルサイユにそっくりなのはその為である。産業革命による大量生産体制に乗り遅れた中東欧は経済競争力を失い、英独仏3国が急成長した経済力を背景にこれらの地域を支配することになる。被支配地には支配地の文化が浸透し支配地が文化の中心となる。第2次大戦後、ドイツは廃墟の中から奇跡の復興を遂げる。社会主義経済のもとに疲弊した東欧が89年の改革後モデルとしているのはそのドイツ復興の足取りである。

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