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「宣言」に効き目はあるのでしょうかの現代用語集
 

人権宣言が有効であり続けるためには努力が必要だ

世界人権宣言  Universal Declaration of Human Rights

本誌1974年版収録。以下、

1948年12月10日国際連合の第3回総会で全会一致(48カ国、ソ連圏の6カ国および他の2カ国が棄権)で成立した宣言。国際連合は、第2次大戦における人権蹂躙、人権の尊重と平和の深い関係にかんがみ基本的人権の尊重をその重要な原則とし、またとくに人権委員会を設けたが、その大きな成果として本宣言が生まれた。前文以下30条にわたって、個人の諸種の基本的自由、さらに労働権その他経済的社会的文化的な面における生存的権利を、今日の各国の進歩的な憲法における人権保障の規定のように、細かく規定している。条約のような拘束力はないが、人権保障の標準を示したものとして大きな意義がある。毎年12月10日を人権デー、その前後を人権週間として記念行事が行われる。

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世界人権宣言40年

本誌1989年版収録。以下、

宇宙と地球が人間社会の前提であるときに、科学と技術が人間の知性を逸脱して自然の調和と順応の関係に突如として異分子を打上げれば、これまでに生物が相互に依存し合っていた連鎖関係と既存の秩序は破れる。それが核に依存する文明といわれるものの予想を超えた破壊現象となる。フランス植民地であったアルジェリアに解放戦争が続いたとき、そこにはマルクス主義のイデオロギーで救済しようとしても、それは解決の契機を含まず荒廃したカオスの状況をもたらすにすぎない場合があった。これまで続いていたアフリカの自然と社会がおのずから構造的な連関性をもって眠っていた歴史がつづいていたことに気づいた。その時、自然と人間社会との構造主義(structuralisme 仏)的観察を目覚めさせたのであった。レヴィ・ストロースが比較民族学のなかに、たんなる実証的調査より深い次元の分析を提起したのは、サルトルやレーモン・アロンの論争が闘わされ、中近東の紛争がつづいてはじまった時代のことで、それはもう一昔前のことになった。

アフリカの諸国が発展途上国といわれている時代も21世紀に向かって急速に変貌しつつある。国連総会においては多数決制度の民主主義に政治上の発言を多くの国々が強めていく時代になりつつある。国道の世界人権宣言40年はこうしたなかで鐘が鳴らされていることを改めて知るのである。

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人種差別撤廃宣言

本誌1965年版収録。以下、

1963年11月20日、国連第18回総会本会議で満場一致で採択された宣言。人種差別を人間の尊厳を侵し、平和と安全を乱すものとし、人種差別宣伝、組織およびこの目的のための暴力使用の扇動と行使を非難するとともに、各国に対して、人種差別や暴力の行使、扇動などを行う組織を訴追し、法律上の恩典と保護を与えるため早急に積極的な措置をとるように勧めている。

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児童の権利宣言

本誌1960年版収録。以下、

1959年11月20日に国際連合総会で満場一致で採択され、わが国でも同年12月16日参議院本会議で全会一致「この宣言を支持し、宣言の趣旨徹底を期する」と決議された。前文と10条の「原則」からなり、国連憲章および世界人権宜言の精神を児童に適用するものであって、前文に「児童は、身体的精神的に未熟であるため、出生前ばかりでなく出生後も、適当な法的保護をふくめた特別の保護、配慮を必要とする」とのべている。「原則」の第1条は「すべての児童は、自分自身あるいは両親の人種、はだの色、性別、言語、宗教、政治その他の意見、国家的または社会的素性、財産、出生その他の地位についての差別なしに」この宜言がのべるすべての利益を享受する権利があるとしている。

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児童の権利宣言  Declaration of the Rights of the child

本誌1982年版収録。以下、

1959年11月20日、第14回国連総会で全会一政で採択された宣言。児童は法律その他を通じて健全に育てられる権利を有しており、その他特別の保護を受け、遊戯とレクリエーションに関する権利をもつなど、児童に関する特別の権利を定めている。これは各国を法的に拘束しないが、この精神にそって各国が努力する方向を示したものといえる。

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国際労働憲章

本誌1965年版収録。以下、

ベルサイユ平和条約427条が定める労働に関する指導原則。国際労働機関(lLO)を設置するとともに、労働は商品にあらざること、採用者、労働者の団結権の承認、賃金・労働時間に関する国際的基準の設定、婦人年少労働者の保護、労働者の平等待遇、社会保障制度の整備、労働供給の調節、失業防止などを重要緊急な原則であると宣言している。それ以来、国内的・国際的労働立法の重要な指針となった。1944年フィラデルフィアで開催された第26回総会においては「フィラデルフィア宣言」が採択され、これによって、従来社会労働方面に限られていた活動範囲を、経済財政上の政策にまで及ぼすことになった。

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拷問禁止宣言  Declaration against Torture

本誌1977年版収録。以下、

1975年12月9日、国連総会がコンセンサスで採択した宣言。9月に開かれた第5回国連犯罪防止会議の報告を基礎としたもので、12カ条より成る。いかなる国家も、その他の権力主体も、平時はもちろん戦時や非常事態のときでも、情報や自白の入手、処罰・脅迫のような目的で、直接または間接に肉体的、精神的な害悪を故意に加えることは許されないとし、これらの行為を刑事上の犯罪とするなど、その防止のために実効的措置をとるべきものと定めている。もっとも、宣言は一種のガイドラインで、それ自体法的拘束力はない。

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婦人に対する差別撤廃宣言  Declaration on the Elimination of Discrimination against Women

本誌1979年版収録。以下、

1967年(昭42)第22回国連総会で採択された宣言。国連婦人の地位委員会が起草、経済社会理事会で若干の修正をうけて総会に提出された。宣言は前文のほか11力条から成り、婦人に対する差別が基本的に不正であり人間の尊厳に対する侵犯であることを述べるとともに、具体的に法律、習慣、規則及び慣行のさまざまな分野で差別を廃止すべきことを規定しており、いわば婦人の人権宣言である。しかし宣言では拘束力がないので条約とすべく76年(昭51)の婦人の地位委員会で作業を始め、経済社会理事会を経て77年第32回総会へ「婦人の差別撤廃条約案」(Draft Convention on the Elimination of Discrimination against Women)として提出、23カ条中9カ条審議しただけで、継続審議となった。

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住宅人権宣言

本誌1982年版収録。以下、

1981年ロンドンで開かれた日欧学者等による「国際住宅・都市問題シンポジウム」で採択された住宅人権の初めての宣言。住宅に関する基本的人権の確立を求めるため「我々は良好に自然環境のもとで人間にふさわしい住宅に住むことはすべての市民の基本的人権であることを確信し、すべての政府に対して土地住宅地に対する不公平、不合理で反社会的活動を規制し、国家の責任において、人間の尊厳を配慮した良好な住宅の供給を保証することを心から望む」。これは最近各国の政府が持ち家政策へ移行させることによって公共住宅建設の責任を縮小しようとしているのに反発してこれに警告する必要から生じたものである。

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情報公開権利宣言

本誌1982年版収録。以下、

国民の知る権利を保障するため情報公開法の制定運動を進めている市民組織「情報公開法を求める市民運動」は、1981(昭和56)年1月31日東京・霞が関の第二東京弁護士会館で臨時総会を開き「情報公開権利宣言」と「情報公開8原則」を満場一致で採択した。「宣言」は人権と民主主義の確立に不可欠のものとして「すべての公的情報を自由に請求し利用する権利」をうたっているが、とりわけ国民の生命、健康、安全に関する情報の公開を強く求めている。また、情報公開法や地方自治体の情報公開条例に盛りこむべき「原則」には、公的情報はすべて公開を原則とすること、例外として非公開とするものは最小限とし、法律や条例で明確に定めその理由を明らかにすることなどをうたっている。この「宣言」は、とりわけ参加民主主義の視点から、現在条例制定の作業を進めている神奈川県その他の地方自治体に与える影響は大きい。

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発展の権利に関する宣言  Declaration of the right to development

本誌1988年版収録。以下、

1986年の第41回国連総会は、「発展」を人権の一部と認める宣言を採択した。同宣言は、発展とは、それによって各人およびすべての人がすべての人権と基本的自由を完全に実現することを可能にする経済的、社会的、文化的ならびに政治的な過程であるとしたうえで、発展の権利を不可譲の人権であると規定する。なお発展の権利(right to development)は、開発の権利と訳されることもあり、環境に対する権利、平和への権利などとともに「第三世代の人権」を形成する。

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